「自己PRと長所、何が違うの?」成田さんが人事として面接を担当していた時、この2つを混同している学生を数えきれないほど見てきたそうです。実は、採用担当は自己PRと長所で見ているポイントがまったく違います。
結論:自己PRは「企業のために何ができるか」、長所は「どんな人柄か」
自己PRと長所の最大の違いは、「視点」にあります。自己PRは企業視点で「この人を採用したらどんなメリットがあるか」を伝えるもの。一方、長所は自分視点で「私はこういう人間です」という性格や人柄を伝えるものです。
例えば「協調性」という同じ特性でも、自己PRでは「チームで協力して売上目標を達成した経験があり、貴社の営業チームでも同様に貢献できます」と仕事への貢献を強調します。長所では「周囲の意見を大切にし、みんなが居心地よく活動できる環境を作ることを心がけています」と人柄や価値観を伝えます。
この違いを意識するだけで、面接官に与える印象は大きく変わります。
これだけ押さえればOK!元人事が語る、知っておくべき2つのポイント
自己PRと長所を効果的にアピールするために、以下の2つのポイントを必ず押さえておきましょう。
- 自己PRと長所の書き方の正解:それぞれに適した「構成」があり、それに沿って書くことが基本です。
- 自己PRと長所の両方を問われた時の注意点:両方聞かれた場合に、どのように内容を重複させつつ書き分けるか、そのテクニックを知る必要があります。
この2つを理解することで、迷わずにアピール内容を作成できます。
強み・エピソードは被っても大丈夫
「自己PRと長所で同じ強みをアピールしてもいいの?」という質問をよく受けますが、結論から言うと問題ありません。むしろ一貫性が生まれ、人物像が明確に伝わります。ただし「伝え方」は必ず変えてください。詳しくは後述します。
【ポイント①】自己PRと長所の書き方の正解
自己PRと長所には、それぞれ「正解の型」があります。成田さんが人事として選考に関わっていた時、この型に沿って話せる学生とそうでない学生では、評価に明確な差が出ていたそうです。ここでは、面接官に「伝わる」構成パターンを紹介します。
自己PRの構成
自己PRは、以下の6ステップで構成します。
- 結論:あなたの強みは何か?
- 背景:その強みをどのように培ったのか?
- 課題:強みを発揮したとき、どんな課題があったか?
- 行動:その課題に、具体的にどんな行動をとったか?
- 実績:その行動の結果、どんな成果が出たか(数字で)?
- 仕事への活用:その強みを、入社後どう活かすか?
▼自己PRの具体的な構成や書き方については以下の記事で詳しく解説しています。
エントリーシートの受かる自己PRの書き方強みの選び方と構成・書くポイントを元人事が解説
長所の構成
長所は「人柄や性格」を伝えるものなので、価値観や考え方を示すことが重要です。以下の5ステップで構成します。
- 結論:あなたの長所は何か?
- 価値観:その長所を大切にしている理由は?
- 具体例:長所が発揮された場面は?
- 周囲への影響:自分の行動が周りにどんな影響を与えたか?
- 仕事への活用:入社後、その長所をどう活かすか?
▼長所の具体的な構成や書き方については以下の記事で詳しく解説しています。
面接で長所・短所を聞かれたら?元人事が教える正しい答え方と例文
自己PRでは「成果」、長所では「動機や思い」を重視するのがポイントです。
【ポイント②】自己PRと長所の両方を問われた時の注意点
成田さんが人事だった頃、自己PRと長所を連続で質問することで学生の「引き出しの多さ」と「一貫性」を見ていたそうです。両方聞かれても慌てないための3つの注意点を解説します。
注意点1:自己PRと長所で一貫性を保とう
両者に矛盾があると、面接官を混乱させてしまいます。例えば自己PRで「スピード感を持って行動できる」と言いながら、長所で「慎重に物事を進められる」と答えると、どちらが本当の姿なのかわからなくなります。
コツは自己PRと長所を「同じ軸」で考えること。根底にある特性は同じにして、見せ方だけを変えましょう。
注意点2:言葉の使い方を変えよう
自己PRと長所では、書き出し・エピソード・締めくくりのすべてで言葉の使い方が変わります。
自己PR
- 書き出し:私の強みは〜できることです
- エピソード:「私は〜した」(行動が主語)
- 締めくくり:業務・成果に貢献します
長所
- 書き出し:私の長所は〜する〇〇性です
- エピソード:「〜という思いが湧いた」(心情が主語になる文が入る)
- 締めくくり:周囲・環境にとって〇〇な存在でありたいです
特にエピソード部分では、自己PRは「私は〜した」という行動文が続くのに対し、長所では「不安もあったが」「〜という思いを原動力に」など、心情を主語にした文が自然に入ります。
注意点3:エピソードは同じでOK、切り口だけを変えよう
同じエピソードを使っても問題ありません。ただし、切り口を変えることが必須です。
- 自己PR:「何をしたか」「結果どうなったか」を中心に語る
- 長所:「なぜそうしたか」「そのとき何を感じたか」を中心に語る
事実は同じまま、切り口を変えることで、一貫性と差別化を両立できます。
同じエピソード・強みで書き分けた例文
ここからは、実際の書き分け例を見ていきましょう。「協調性」「行動力」「責任感」という頻出テーマで、自己PRと長所それぞれどう書くかを具体的に紹介します。
ケース1:サークル活動のエピソードで協調性をアピールする場合
サークル活動で発揮した協調性を、自己PRと長所それぞれでどう表現するか見ていきましょう。
自己PRの回答例
<例文>
私の強みは、異なる意見を持つメンバーをまとめ、チーム全体で成果を出せることです。
所属するバドミントンサークルでは、練習方針をめぐって経験者と初心者の間で対立がありました。経験者は「もっとレベルの高い練習を」、初心者は「基礎練習を増やしてほしい」と主張し、練習の雰囲気が悪化していました。
私は両者の意見を個別にヒアリングし、「午前は基礎練習、午後は応用練習」という時間帯で分ける方式を提案しました。さらに経験者が初心者を指導する「ペア練習制度」を導入したところ、両者の交流が生まれ、サークル全体のレベルも向上しました。
結果、学内大会では過去最高の成績を収めることができました。この調整力と実行力を活かして、貴社のチームでも成果に貢献したいと考えています。
<ポイント>
- 対立構造(経験者vs初心者)を明確にし、課題の難易度を伝えた
- 具体的な解決策(時間分け、ペア練習)を提示し、調整力を示した
- 定量的な成果(過去最高の成績)で締め、説得力を高めた
長所の回答例
<例文>
私の長所は、相手の立場に立って考え、みんなが納得できる答えを探せる協調性です。
子どもの頃から「誰も嫌な思いをしない場を作りたい」という思いを持っており、意見が対立する場面では、まず双方の話をじっくり聞くことを心がけています。
所属するバドミントンサークルで経験者と初心者の間に溝ができた際も、一人ひとりと話し合い、「本当は何を望んでいるのか」を理解することから始めました。すると、経験者も初心者も「サークルを楽しみたい」という根本の思いは同じだと気づき、お互いを尊重し合える関係を築くことができました。
この協調性を活かし、貴社でもメンバー全員が気持ちよく働ける環境づくりに貢献したいです。
<ポイント>
- 「誰も嫌な思いをしない場を作りたい」という価値観・動機を提示した
- 行動のプロセス(話し合い、理解)を重視して描写した
- 結果よりも「関係構築」や「相互理解」に焦点を当て、人柄を伝えた
ケース2:アルバイト経験のエピソードで行動力をアピールする場合
アルバイトでの経験を通じて発揮した行動力を、自己PRと長所でどう書き分けるか紹介します。
自己PRの回答例
<例文>
私の強みは、課題を見つけたら即座に行動に移せる実行力です。
居酒屋でのアルバイトで、週末の客席回転率が平日の半分以下という課題がありました。原因を分析したところ、注文から料理提供までの時間がかかりすぎていることが判明しました。
私は店長に許可を取り、キッチンとホールの連携を改善する取り組みを始めました。具体的には、混雑時の注文を優先度で分類するシートを作成し、調理順序を効率化しました。また、ホールスタッフにも調理時間の目安を共有し、お客様への声かけタイミングを統一しました。
結果、料理提供時間は平均15分から8分に短縮し、週末の回転率も平日並みに改善。売上は前年比120%を達成しました。この行動力で、貴社でも課題解決に取り組みたいと考えています。
<ポイント>
- 課題(回転率の低さ)を数字で示し、ビジネス視点があることをアピールした
- 指示待ちではなく、自発的に行動(マニュアル作成、連携強化)したことを強調
- 「売上120%」という客観的な数字で成果を証明した
長所の回答例
<例文>
私の長所は、気になったことはすぐに行動に移す積極性です。
「もっと良くなるはず」と感じたことは放っておけない性格で、アルバイト先でもこの長所を発揮しました。
居酒屋での勤務中、お客様が料理を待っている間に不満そうな表情をしているのを見て、「何とかしたい」という思いが湧きました。原因を考え、自分なりの改善案を店長に相談したところ、「ぜひやってみて」と背中を押してもらえました。
最初は不安もありましたが、「お客様に喜んでほしい」という思いを原動力に取り組んだ結果、店の雰囲気も明るくなりました。この「まずやってみる」という姿勢を大切に、貴社でも前向きに仕事に取り組みたいと思います。
<ポイント>
- 「放っておけない」という性格的特徴を冒頭で強調した
- 行動の原動力(お客様への思い)を語り、ホスピタリティを示した
- 「まずやってみる」という姿勢をアピールし、フットワークの軽さを伝えた
ケース3:ゼミ活動のエピソードで責任感をアピールする場合
ゼミ活動で発揮した責任感を、自己PRと長所でどう表現するか見ていきましょう。
自己PRの回答例
<例文>
私の強みは、任されたことを最後までやり抜く責任感です。
ゼミのグループ研究で発表リーダーを務めた際、メンバーの一人が体調を崩し、担当パートが未完成のまま発表前日を迎えてしまいました。
私は「チームとして最善の発表をする」という責任から、その夜に担当パートの資料を自ら完成させました。同時に、他のメンバーにも協力を仰ぎ、全員で内容を確認し合いました。翌日の発表では、教授から「チームワークの良さが伝わる発表だった」と評価をいただき、優秀賞を受賞しました。
困難な状況でも投げ出さず、チームの成果に責任を持つ姿勢を、貴社の業務でも発揮したいと考えています。
<ポイント>
- 予期せぬトラブル(メンバー離脱)にも動じない対応力を示した
- 自分一人で抱え込まず、周囲を巻き込んで解決したチームワークもアピール
- 第三者評価(教授の言葉)を盛り込み、客観的な信頼性を担保した
長所の回答例
<例文>
私の長所は、一度引き受けたことは最後まで責任を持つ誠実さです。
「途中で投げ出すのは相手への裏切りだ」という考えを持っており、どんな状況でも任されたことは完遂することを心がけています。
ゼミの発表リーダーを務めた際、メンバーの体調不良で急遽フォローが必要になりました。正直、自分の準備も完璧ではない中で不安はありましたが、「メンバーも私を信頼してくれている」と思うと、なんとしてでもやり遂げたいという気持ちになりました。
この経験から、責任感は信頼関係の上に成り立つものだと実感しました。貴社でも、周囲からの信頼に応えられる存在でありたいと思っています。
<ポイント>
- 「誠実さ」という内面的な強みを定義した
- プレッシャーの中での心情(不安だがやり遂げたい)を率直に書き、共感を呼ぶ内容にした
- 信頼関係への言及で、組織人としての適性(誠実な人柄)を伝えた
自己PRと長所における定義の違い
ここからは、さらに深く理解したい方向けの解説です。成田さんは学生への指導で「自己PRはDoing、長所はBeing」と繰り返し伝えているそうです。
自己PR=成果(Doing):仕事で発揮できる能力・強み・貢献
自己PRは「Doing」、つまり何をしたか・何ができるかを軸に語るものです。企業が自己PRを聞く目的は「この人を採用したら、どんな成果を出してくれるか」を見極めること。そのため、「売上を20%向上させた」「参加率を3割から8割に改善した」といった行動と成果を語ることになります。
長所=在り方(Being):人柄・性格・社風マッチ
長所は「Being」、つまりどんな人間か・どう在りたいかを軸に語るものです。企業が長所を聞く目的は「この人は自社の社風に合うか」「一緒に働きたいと思える人か」を確認すること。就職みらい研究所の調査によると、93.9%の企業が「学生の人柄を重視する」と回答しています。そのため、「なぜそう行動したのか」「何を大切にしているか」といった価値観や動機を語ることになります。
企業が「あえて」両方聞く3つの理由
なぜ企業は自己PRと長所を別々に聞くのでしょうか。採用側の意図を理解すると、それぞれの質問で何を伝えるべきかが見えてきます。
理由1:能力(スキル)と人柄(カルチャー)を分けて見たい
企業が採用で重視するのは「能力」と「人柄」の両方です。能力(スキル)は「仕事ができるか」、人柄(カルチャー)は「一緒に働きたいか」を見る軸。自己PRでスキル面を、長所で人柄面を聞くことで、学生を多角的に評価しています。
理由2:自己分析の深さと一貫性をチェックしたい
自分のことをきちんと理解している学生は、自己PRと長所で一貫性のある回答ができます。逆に自己分析が浅い学生は、両者が矛盾したり、同じような内容を繰り返したりしてしまいます。また、別々のエピソードを語れる学生は「引き出しが多い」と評価されます。
理由3:入社後の配属適性を見極めたい
自己PRで語られるスキルは「どの部署で力を発揮できるか」、長所で語られる人柄は「どんなチームに馴染めるか」の判断材料になります。企業は「採用して終わり」ではなく、入社後に活躍してもらうことを目指しているのです。
強み・エピソードが同じでもOKな理由
冒頭で「強み・エピソードは被っても大丈夫」と述べました。ここでは、その理由と効果的な活用法を詳しく解説します。
被っても問題ない理由:一貫性が評価される
自己PRと長所で同じ強みをアピールしても問題ない最大の理由は、「一貫性が評価されるから」です。面接官は、自己PRと長所で語る内容が根底でつながっていると、「この人の軸はこれなんだな」と人物像が明確になります。
例えば、協調性という強みを自己PRではゼミの経験から、長所ではアルバイトの経験から語れば、「この人はどんな環境でも協調性を発揮できるんだ」と伝わります。一つの強みを深掘りする方が、複数の強みを浅く語るよりも印象に残りやすいのです。
ただし、答え方は必ず変える必要がある
同じ強みでも「答え方」は必ず変える必要があります。企業には聞き分けている意図があるため、その意図通りに答えなければ、コミュニケーションがうまくいかないと判定されかねません。
- NG:自己PRでも長所でも「協調性があります。サークルで成果を出しました」と同じ表現
- OK:自己PRは「成果を出す協調性」、長所は「相手を思いやる協調性」と切り口を変える
自己PRでは「Doing(何をしたか)」、長所では「Being(どんな人か)」を中心に書き分けましょう。可能であればエピソードも変えると、より説得力が増します。
強みがそもそも見つからない人はどうすればいい?
「自己PRで語れるような強みがない」と感じている人は、以下の方法を試してみてください。強みは「すごい経験」ではなく、日常の行動パターンの中に隠れています。
- 自己分析をする:過去の経験を振り返り、「頑張ったこと」「楽しかったこと」を書き出す。「なぜ頑張れたのか」を深掘りすると特性が見えてくる
- 他己分析を活用する:家族や友人に「私の良いところは?」と聞く。就活エージェントに相談するのも一つの手。自分では気づかない強みが見つかることも
- 日常の行動から抽出する:「友達の相談によく乗る」「グループワークでまとめ役になる」など、当たり前にやっていることが強みのヒント
▼自己分析のやり方について、以下の記事で詳しく解説しています。
自己分析を深める11のやり方目的・注意点・活用方法まで完全ガイド
よくある質問
就活のサポーターとしてよく聞かれる質問や、en-courage利用者へのインタビューで出てきた疑問への回答をご紹介します。
Q. 長所と短所はセットで答えるべき?
セットで聞かれることが多いので、両方準備しておきましょう。おすすめは、長所の裏返しを短所として挙げる方法です。例えば「慎重」の裏返しは「決断に時間がかかる」。短所を伝える際は、改善への取り組みも添えると好印象です。一貫性があるかどうか不安なら、就活エージェントに添削してもらうと安心です。
Q. 面接で「自己PR」と言われたらどっちを話す?
「強み・成果」を中心に話しましょう。自己PRは企業への貢献をアピールする場です。その後「長所は?」と重ねて聞かれたら、切り口を変えて人柄・価値観を中心に話せばOKです。企業ごとの傾向が不安なら、就活エージェントに模擬面接をお願いすると実践的なアドバイスがもらえます。
▼面接での自己PRの話し方や短くまとめるコツについては、以下の記事で詳しく解説しています。
【長さ別の例文付き】面接での自己PRの話し方コツ・練習方法・深掘り質問の対策を解説
Q. エピソードは別のものにした方がいい?
可能であれば別のエピソードを使うと、経験の幅と強みの再現性をアピールできます。ただし、無理に分ける必要はありません。同じエピソードでも、自己PRでは「行動と成果」、長所では「動機と価値観」にフォーカスすれば、異なる魅力を伝えられます。エピソードの選び方に迷ったら、就活エージェントに相談して客観的な意見をもらうのがおすすめです。
Q. 自己PRと長所で同じ強みをアピールしても大丈夫?
問題ありません。むしろ一貫性があって人物像が伝わりやすくなります。ただし、表現と構成は変えましょう。自己PRでは「成果・貢献」、長所では「性格・価値観」を軸にするのがコツです。書き分けに自信がない場合は、就活エージェントにES添削を依頼すると、プロの視点でフィードバックがもらえます。
監修:成田 駿
元日系大手人事/就活サポーター
日系大手事業会社で最年少部長に就任し、新卒採用に5年以上従事。戦略設計からイベント企画、選考フロー、研修まで新卒採用の入口から出口までを幅広く担当し、延べ3,000名以上の学生と接点を持つ。人事業務以外でも累計2,000名以上の就活生を個別に支援し、大手・外資・メガベンチャーなど多様な企業への内定実績を誇る。
協力:NPO法人en-courage
全国約120の大学に支部を展開し、就活生を対象としたキャリア教育支援を行うNPO法人。独自にイベントやメディアを多数運営し、年間2,500件以上のセミナーを開催。企業と学生の間に年間約80万回の接点を創出するなど、国内最大級の規模で活動している。すべての就活生が本質的なキャリアを通じて人生を最大化できるよう、個別支援やコミュニティづくりを通じたサポートを目指している。