ESや面接の自己PRにて、「行動力」を自分の強みとしてアピールしたいけれど、具体的にどのような言葉やエピソードで伝えれば評価されるのか、悩んでいる就活生は少なくありません。
本記事では、元日系大手人事で、en-courageの就活サポーターとしても学生を支援している成田さん監修の基、そのまま参考になる例文やポイント、言い換え方をお伝えします。
さらに、企業が求める「行動力」とは何か、「ありきたり」と思われないために差別化すべきことなども解説します。
行動力とは
「行動力」は強力な武器になる一方、伝え方を間違えると「無鉄砲」「計画性がない」と判断されかねない諸刃の剣です。ここでは、延べ3,000名以上の学生と接点を持ってきた元大手人事・成田さんの視点をもとに、採用担当者が本当に評価する「行動力」の定義と戦略的なアピール方法を解説します。
企業が求める「行動力」とは
企業が求める「行動力」とは、単に活発に動き回ることではありません。「目標や目的の達成に向けて、自ら考え行動を起こし、実現していく力」を指します。与えられた業務をこなすだけでなく、状況に応じて計画を立て、リスクを恐れずに一歩を踏み出し、成果につなげる姿勢こそが、企業が求める「行動力」の本質です。
企業が行動力のある学生を重視する理由
企業が採用活動において行動力のある学生を重視する理由は、主に以下の3点に集約されます。
- 自律的な課題解決:激しい市場変化の中で、指示を待たずに自ら課題を発見し、解決まで完遂できる人材が必要なため
- 組織の推進力強化:周囲を巻き込んでチームの士気を高め、組織の改善や成長を加速させる起爆剤となるため
- 困難な局面の打開:不測の事態や高い壁に直面しても、試行錯誤を繰り返し、粘り強くゴールまでやり抜けるため
「ありきたり」になりやすいため、差別化が必要
「行動力」は多くの就活生が使用するアピールポイントであり、工夫しなければ埋もれてしまいます。「旅行に行きました」といった単なる好奇心や、「様々な活動に参加しました」という経験の羅列だけでは、実務能力として伝わりません。「どのような課題に対し、どう考え、どう動いたのか」という具体的なエピソードを提示し、独自の行動の質や仕事での再現性を伝えることで、差別化を図る必要があります。
「計画性がない」と思われないための適切な伝え方が大事
行動力をアピールする際、「後先考えずに動く」「無鉄砲」といったネガティブな印象を持たれないよう注意が必要です。ビジネスでは、闇雲な行動ではなく、目標達成に向けた「計画性のある行動」が評価されます。「なぜその行動をとったのか」という意図や、先を見越したビジョンを併せて伝えることで、「思考と行動」の両立をアピールしましょう。
行動力を自己PRでアピールする際のポイント
自己PRで行動力を効果的に伝えるには、言葉選びや構成の工夫が不可欠です。ここからは、成田さんが人事として多くの学生を見てきた経験に基づいた「評価されるポイント」を紹介します。採用担当者に「入社後に活躍できる」とイメージさせるための、具体的なテクニックを押さえましょう。
【最重要】「どのような行動力か」具体性のある言葉に言い換える
抽象的な言葉である行動力を、具体的にどのような力なのか分解して伝えることが重要です。自ら課題を見つけて動く主体性なのか、困難を乗り越えてやり抜く実行力なのかを明確にし、解像度の高い言葉に変換しましょう。
言い換え例一覧
「行動力」と一言で伝えても、採用担当者には具体的に伝わりにくいものです。あなたの強みがどこにあるのか、解像度を上げていきましょう。
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0から1を生み出す「主体・始動型の行動力」
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例
- 指示を待つのではなく、自らの意思で最初の一歩を踏み出し、物事を動かす力
- まだ誰も手をつけていない課題に対し、自ら率先して取り組む姿勢
- リスクを恐れず、新しいことや困難な目標に果敢に挑戦する力
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例
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確実に成果へ繋げる「実行・完遂型の行動力」
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例
- 目標に向けて計画を立て、困難な壁にぶつかっても粘り強くやり遂げる力
- 計画だけで終わらせず、具体的なタスクに落とし込んで着実に実行する力
- 予期せぬトラブルがあっても諦めず、最後まで責任を持ってやり抜く力
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例
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組織の力を最大化する「協働・牽引型の行動力」
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例
- 一人では達成できない目標に対し、周囲に働きかけてチーム全体を動かす力
- 自らの熱意で周囲に働きかけ、協力体制を築き上げる力
- チームの先頭に立って方針を示し、メンバーを目標達成へと導く力
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例
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現状をより良く変える「課題発見・解決型の行動力」
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例
- あるべき姿と現状のギャップに気づき、改善のために自ら手を動かす力
- 漫然と過ごすのではなく、「何が問題か」を分析して解決すべき点を見抜く力
- 不満を言うだけでなく、具体的な解決策を提示して現状を打破する姿勢
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例
自分に合った言葉を選ぶコツ
多くの言い換え表現の中から、自分に最適な一つを選ぶための視点は以下の3つです。これらは、どのような強みをアピールする場合でも共通する「言葉選び」の鉄則です。
- エピソードに合うものを選ぶ:自身のエピソードの内容と、選んだ言葉の持つニュアンスが合致しているか確認しましょう。同じ強みであっても、どのような状況で、どう発揮されたかによって適切な表現は異なります。
- 企業の求める人物像に合うものを選ぶ:志望企業の社風や「求める人物像」と照らし合わせましょう。企業によって、同じ強みの中でも「勢い」を重視するのか、「丁寧さ」を重視するのかといった評価ポイントは異なります。
- 第三者に合う言葉を聞く:自分の強みを客観視するのは難しいため、プロの視点を借りるのも有効です。就活エージェントなどの第三者に相談すれば、あなたの経験を人事の視点で分析し、独りよがりではない、市場価値の伝わる「最適な言葉」への変換をサポートしてくれます。
説得力のある構成で書く
以下の順序で構成することで、論理的で説得力のある自己PRが完成します。
- 結論:一言で、あなたの強みは何か?
- 背景:その強みをどのように培ったのか?
- 課題:強みを発揮したとき、どんな課題に直面していたのか?
- 行動:その課題に対して、強みを活かしてどう取り組んだのか?
- 実績:その成果はどんな数値や事実で裏付けられるのか?
- 仕事への活用:その強みを企業でどう活かし、貢献できるのか?
▼自己PRの構成について、詳細は以下の記事で解説しています。
エントリーシートの受かる自己PRの書き方強みの選び方と構成・書くポイントを元人事が解説
定量的な成果を示す
エピソードの具体性を高めるには、成果やプロセスを「数字」で示すことが効果的です。例えば、「売上が上がった」とするよりも「売上が前年比120%になった」と書く方が、客観的な実績として伝わります。
成果だけでなく、行動の規模感を示す際にも数字は有効です。「部員50名との個別面談」「月5時間の業務削減」「手順書を10種類作成」など、具体的な数値を盛り込むことで、行動量や工夫の解像度が一気に高まります。
「計画性がない」と思われないよう思考プロセスを補足する
単に行動した事実だけでなく、「行動の源泉(思考プロセス)」を伝えることが重要です。思考なき行動は「無鉄砲」とみなされます。「なぜやろうと思ったのか」「どういう勝算があったのか」を語ることで、計画性と熱意を同時にアピールできます。
「なぜその行動をとったのか」動機と判断基準を話す
行動の背景にある「動機」や「判断基準」を言語化しましょう。「現状に悔しさを感じたため」「チームの目標達成には不可欠だと考えたため」といった理由を添えることで、あなたの価値観や責任感が伝わります。採用担当者は、行動そのもの以上に、その裏にある「考え方(思考の独立性)」を見ています。
失敗経験がある場合は「改善プロセス」まで話す
失敗や挫折のエピソードは、大きな武器になります。重要な点は「失敗した事実」ではなく、「そこからどう立ち直ったか」です。「失敗の原因を分析し、周囲に助言を求めて改善した」「PDCAを回して再挑戦した」というプロセスを描くことで、困難に直面しても逃げずにやり抜くタフさと成長力をアピールできます。
避けるべき表現に気をつける
せっかく内容が優れていても、避けるべき表現をしてしまうと評価の対象から外れてしまうことがあります。以下の表現をしないように気をつけましょう。
- 専門用語を避ける:研究内容や独自の用語は、採用担当者が理解できるよう「誰にでもわかる言葉」に噛み砕いて表現しましょう。
- 抽象的な表現は避ける:曖昧な言葉で終わらせず、具体的なエピソードや5W1Hを交えて記述し、行動特性や価値を伝えましょう。
- 企業の求める人物像とずれたものは避ける:企業の方向性と自分のアピール内容が合致しているか確認し、求める人物像とのミスマッチを防ぎましょう。
- 誤字脱字がないかチェックする:誤字や敬語の誤りは志望度の低さとみなされるため、音読や第三者チェックを行い、丁寧さを示しましょう。
- 話し言葉を使わない:ビジネス文書としての形式を守り、流行語や口語表現は避け、丁寧で標準的な語句を選んで記述しましょう。
▼エントリーシートの書き方の基礎については、こちらの記事もご参照ください。
落ちないエントリーシートの書き方企業が見ているポイントと対策まとめ
行動力を自己PRでアピールする例文
ここでは、行動力を効果的にアピールするための例文を紹介します。成田さんの添削実例をもとに、ポイントを解説します。
サークル・部活動の場合
私の強みは、周囲の反対を乗り越えて改革を推進する「完遂力」です。所属するテニスサークルでは、例年練習参加率が低い状態が続いていました。私は「全員が楽しめる環境作り」を掲げ、練習メニューの刷新とイベントの定期開催を提案しました。しかし、当初は幹部メンバー10名全員から「運営負担が増える」と反対を受けました。そこで私は、負担を分散させるシフト制の導入や、各メンバーの得意分野を活かした役割分担を提示し、一人ひとりと対話を重ねて説得しました。熱意を持って粘り強く交渉した結果、全員の合意を得て改革を実行。半年後には参加率が40%から80%に向上しました。貴社においても、困難な課題に対して粘り強く周囲に働きかけ、プロジェクトを完遂へと導きます。
<ポイント>
- 困難の強調:「全員から反対される」という逆境を明示し、乗り越える力の強さを表現しています。
- 具体的な行動:精神論だけでなく、「シフト制導入」「役割分担」などの具体的施策を提示しています。
- 定量的な成果:参加率の変化を数値で示し、改革のインパクトを客観的に証明しています。
アルバイトの場合
私は「現状を分析し、自ら課題解決に動く課題解決型の行動力」があります。個人経営のカフェでアルバイトをしていましたが、近隣に競合店ができた影響を受けていました。競合店の出現により、売上が2割減少する危機に直面していました。私は「常連客を大切にする店」という原点に立ち返るべきだと考え、店長に「手書きメッセージカード」の配布を提案しました。単に配布するだけでなく、顧客の会話や好みをノートに記録し、一人ひとりに合わせた内容を書くことを徹底しました。スタッフ全員でこの取り組みを3ヶ月継続した結果、顧客から「温かい接客が嬉しい」との声を多数いただき、常連客の来店頻度が増加。売上をV字回復させることができました。貴社でも、顧客の潜在的なニーズを汲み取り、期待を超える価値を提供することで売上に貢献します。
<ポイント>
- 動機の明確化:競合店の出現という危機的状況と、店への貢献意欲(原点回帰)を提示しています。
- 独自性の工夫:マニュアル対応ではなく、「顧客ごとの記録」「手書き」という泥臭い工夫をアピールしています。
- 周囲の巻き込み:自分一人ではなく「スタッフ全員」で継続したことで、組織への影響力を示唆しています。
長期インターンの場合
私の強みは、目標達成のために泥臭く行動し続ける「執念」です。Webマーケティング企業の長期インターンで、自社メディアの集客リーダーを務めました。当初の目標は月間10万PVでしたが、開始2ヶ月は目標の半分にも届かず、チームの士気が低下していました。私は「絶対に目標を達成する」と決意し、ユーザーへのヒアリングを徹底的に行いました。1週間で50名に街頭インタビューを実施し、生の声から「記事の検索意図とのズレ」を発見。チームに共有してリライト方針を策定し、毎日3記事の修正を1ヶ月間やり抜きました。その結果、検索順位が大幅に上昇し、3ヶ月目には目標の120%である12万PVを達成しました。入社後も高い目標に対して諦めずに挑戦し、泥臭い行動量と分析力で成果を上げます。
<ポイント>
- 行動量での圧倒:「1週間で50名ヒアリング」「毎日3記事修正」など、数値で圧倒的な行動量を証明しています。
- チームへの貢献:自らの行動で課題を発見し、チームの方針修正(リライト)を主導しています。
- 成果の対比:低迷期からのV字回復(目標120%達成)を描くことで、打開力を強調しています。
ゼミ・研究活動の場合
私には「前例のない困難にも、試行錯誤を繰り返して挑む挑戦的な行動力」があります。大学ではAIを用いた画像解析の研究に取り組みました。先行研究が少ない分野で、当初は解析精度が60%にとどまり、手詰まりの状態でした。私は「多角的な視点が必要だ」と考え、学内の教授だけでなく、他大学の研究者や企業のエンジニアなど計20名に自らアポイントを取り、助言を求めました。得られた知見をもとに、仮説検証とパラメータ調整を200回以上繰り返し、プログラムの改善を行いました。地道な改良の結果、精度を95%まで高めることに成功し、学会で優秀賞を受賞しました。貴社の開発業務においても、未知の課題に対して外部の知見も積極的に取り入れ、解決策を導き出します。
<ポイント>
- 思考の転換:行き詰まった際に、外部(他大学・企業)へ視点を広げた判断力をアピールしています。
- プロセスの具体性:「20名へのヒアリング」「200回以上の検証」など、地道な努力を数値化しています。
- 客観的な評価:「精度95%」「学会での受賞」という客観的事実で、技術力と行動力を裏付けています。
ボランティア活動の場合
私の強みは、相手のニーズを汲み取り、期待を超える価値を提供する「対人支援型の行動力」です。学生団体の一員として、東南アジアの村で教育支援ボランティアを行いました。現地では「英語の授業」を行う予定でしたが、子供たちの反応が薄く、関心を持ってもらえないことが課題でした。私は「一方的な授業になっているのではないか」と考え、授業外の時間を使って子供たちや村人と生活を共にし、彼らが本当に興味を持っていることを調査しました。その結果、日本のアニメに関心が高いことが分かり、アニメのセリフを使った英語劇を企画・実施しました。準備には時間を要しましたが、当日は子供たちが目を輝かせて参加し、現地の先生からも「こんなに楽しそうな姿は初めてだ」と感謝の言葉をいただきました。貴社の営業職においても、顧客の真のニーズを深く理解し、最適な提案を行うことで信頼関係を構築します。
<ポイント>
- 課題発見のプロセス:反応の薄さに対し、「一方的ではないか」と自省し、現場に入り込んでリサーチした姿勢を示しています。
- 柔軟な対応力:当初の予定に固執せず、現地のニーズ(アニメ)に合わせて企画を変更した柔軟性があります。
- 定性的な成果:子供の反応や先生の感謝の言葉など、感情に訴える成果で貢献性を表現しています。
よくある質問
就活のサポーターとしてよく聞かれる質問や、en-courage利用者へのインタビューで出てきた疑問への回答をご紹介します。
行動力以外の強みと組み合わせてもいい?
自分一人で判断するのは難しいため、就活エージェントに相談することをおすすめします。
行動力は「計画性」や「誠実さ」など他の強みと掛け合わせることで、より実務的な能力としてアピールできます。しかし、志望企業の社風によって、どの要素を組み合わせるべきか、どの強みを優先すべきかは異なります。プロの視点を取り入れることで、企業に最も響くアピール方法を見つけることができます。
エピソードが平凡でも大丈夫?
エピソード自体は平凡でも問題ありませんが、そこからどのように強みをアピールするかはテクニックが必要です。自分の経験をどのように魅力的に伝えるべきか悩む場合は、就活エージェントに相談してみてください。些細なエピソードからでも、人事の心に響くストーリーを引き出してくれます。
文字数の目安は?
基本的な目安はありますが、企業や媒体によって最適な文字数や構成は異なります。限られた文字数で最大限のアピールをするためには、添削のプロである就活エージェントに見てもらうのが確実です。自分では気づかない冗長さや不足点を指摘してもらい、完成度を高めましょう。
監修:成田 駿
元日系大手人事/就活サポーター
日系大手事業会社で最年少部長に就任し、新卒採用に5年以上従事。戦略設計からイベント企画、選考フロー、研修まで新卒採用の入口から出口までを幅広く担当し、延べ3,000名以上の学生と接点を持つ。人事業務以外でも累計2,000名以上の就活生を個別に支援し、大手・外資・メガベンチャーなど多様な企業への内定実績を誇る。
協力:NPO法人en-courage
全国約120の大学に支部を展開し、就活生を対象としたキャリア教育支援を行うNPO法人。独自にイベントやメディアを多数運営し、年間2,500件以上のセミナーを開催。企業と学生の間に年間約80万回の接点を創出するなど、国内最大級の規模で活動している。すべての就活生が本質的なキャリアを通じて人生を最大化できるよう、個別支援やコミュニティづくりを通じたサポートを目指している。