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“ガクチカがない”は半分正解?平凡な経験から受かるガクチカを見つける方法

「ガクチカがない」と悩む就活生必見!元日系大手人事監修のもと、企業が本当に見ているポイントから、今からでも間に合うガクチカの見つけ方、受かるガクチカの書き方・構成などを具体的に紹介します。

「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)がない」と焦っていませんか?これはen-courageにも毎年多く寄せられる相談です。しかし、元日系大手人事の成田さんは「多くの学生が企業は成果の大小を気にしているが、企業は「課題にどう向き合ったか」というプロセスを重視している」と言います。

この記事では、成田さんのもと人事としての視点とen-courage利用者へのインタビューに基づき、平凡な経験から「受かるガクチカ」を見つける方法や書き方、例文、注意点などをお伝えします。

ガクチカとは?

「ガクチカ」とは、「学生時代に力を入れたこと」の略称です。エントリーシート(ES)や面接でよく聞かれる質問の一つとして知られています。企業がガクチカを質問するのは、学生が何かに打ち込んだ経験を通じて、その人の「物事への取り組み方や価値観」を知りたいと考えているためです。そして、その経験から「自社とどれだけマッチするか」を見極めようとしています。

企業が知りたいのは、成果の大きさそのものよりも、成果に至るまでの「プロセス」です。学生がどのような目的意識を持って行動したのか、困難にぶつかった時にどう考え、乗り越えたのか。こうした具体的なプロセスから、入社後も同じように活躍できるか(ポテンシャル)を判断しています。

「ガクチカがない」と感じる原因

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元人事の成田さんは「『ガクチカがない』と悩む学生の多くが、実はアピールできる経験を持っているのに、それに気づいていないだけ」だと指摘します。ここでは、多くの学生が陥りがちな「ガクチカがない」と感じてしまう根本的な原因を、成田さんの視点から詳しく解説します。

企業が何を求めているかを理解していないから

「ガクチカがない」と感じる大きな原因の一つは、企業がガクチカを通じて何を知りたいのか、その評価ポイントを正確に理解していない点にあります。「この程度の経験では評価されないだろう」と思い込んでいるケースが少なくありません。しかし、企業は必ずしも華々しい成果や特別な経験を求めているわけではないのです。

企業が知りたいのは、その経験を通じた学生の「人柄や価値観」「モチベーションの源泉」、そして「物事への取り組み方」です。これらの情報から、自社の社風にマッチするか、入社後に活躍してくれる人材かを見極めようとしています。どのような経験を書けばよいかわからないと悩む前に、まずは企業がどこを評価しているのかを知ることが重要です。

「成果」に目を向けているから

「ガクチカがない」と感じる学生の多くは、「全国大会で優勝した」「売上を2倍にした」といった、誰の目にも明らかな「成果」や「実績」がなければならないと思い込んでいます。しかし、そうした華々しい成果を持つ学生はごく一部でしょう。

企業が本当に知りたいのは、成果の大小そのものではなく、その成果に至るまでの「プロセス」です。どのような課題に対し、どう考え、どう行動したのか。その過程にこそ、学生の価値観や物事への取り組み姿勢が表れます。大きな実績がないからと諦めるのではなく、自分が苦労した経験や成長できたと感じる「過程」にこそ目を向けるべきです。

「熱中できたか」に目を向けているから

「学生時代に力を入れたこと」という言葉から、「寝食を忘れるほど熱中した経験」や「ポジティブな気持ちで全力で頑張った経験」でなければならない、と思い込んでしまうことも「ガクチカがない」と感じる原因です。

しかし、頑張ったかどうか、熱中できたかどうかの基準は人によって異なります。また、企業が知りたいのは、必ずしも情熱的なエピソードではなく、「困難や課題にどう向き合ったか」という姿勢です。たとえ最初は気が進まなかったことでも、責任感を持って最後までやり遂げた経験や、コツコツと継続した経験があるなら、それは立派なガクチカになります。熱中できたかどうかよりも、「時間をかけて取り組んだこと」や「困難を乗り越えた経験」といった基準で探してみましょう。

自分の経験をしっかり思い出せていないから

「ガクチカになるような特別な経験はない」と思い込んでいても、実際には「自分の経験をしっかりと思い出せていない」だけかもしれません。自己分析が不足していると、日常の中にあるヒントや、自分では「当たり前」だと思っている習慣が、実はアピールポイントになることに気づけないのです。

ガクチカは、サークルやアルバイトといった活動だけとは限りません。例えば、「毎日通学時間を使って資格の勉強を続けた」「ダイエットのために食事管理を徹底した」といった日常的な習慣や、授業で「誰よりも早く課題に着手することを心がけた」といった些細な工夫も、深掘りすれば立派なガクチカになります。まずは大学生活でやってきたことを大小問わず全て書き出し、客観的な視点で振り返ってみることが重要です。

「ガクチカがない」は半分正解

「『ガクチカ力がない』 は半分正解?」と題されたスライド。左側には「エピソードで差別化は難しい」とあり、多くの経験はありきたりで埋もれてしまう感覚は正しいと説明。右側には「書き方で差別化が正しい」とあり、課題意識、工夫した行動、結果を具体的に記述できれば、他の学生と差別化できると説明している。

「ただバイトやサークルのことを書いても埋もれる」は正解

「ガクチカがない」と悩んだ結果、多くの学生が「学生時代に長い時間をかけたこと」として、アルバイトやサークルのエピソードを選びがちです。大学生活のメインがバイトやサークルであることは多いため、これは自然な流れかもしれません。

しかし、採用担当者は同様のエピソードを何百、何千と読んでいます。そのため、よほどインパクトのある内容でない限り、「またバイトの話か」「サークルの話はよく聞くな」と、他の就活生の中に埋もれてしまう可能性が非常に高いのです。この意味で、「(ありきたりな)ガクチカがない」という感覚は、ある意味で正しいと言えます。

en-courageの利用者インタビューでも「バイトリーダーやサークル長のような特別な肩書きがなく、平凡な経験しかないので不安だ」という声が寄せられており、元人事の成田さんも「その不安はもっともです。事実、テーマだけで差別化するのは難しい」とコメントしています。

エピソードではなく、書き方で差別化することが重要

しかし、成田さんは続けて「だからこそ、書き方で差がつく」とも言います。多くの学生が似たようなテーマ(バイト、サークル、ゼミなど)を選ぶ以上、エピソードの「珍しさ」だけで差別化を図るのは困難です。重要なのは、テーマそのものではなく、「何を学び、どう行動したか」を伝える「書き方」で差別化することです。

例えば、以下の「アルバイト先のカフェで『品切れ』を減らす工夫をした」という平凡な経験であっても、明確な課題意識を持ち、自分なりに工夫して行動し、結果(学び)を得たプロセスを具体的に記述できれば、他の学生とは一線を画すガクチカになります。

(受かる例文)

学生時代に最も力を入れたことは、カフェでのアルバイトで補充・発注業務の非効率を改善し、仕組み化したことです。当時、バックヤード業務と接客が重なり、作業手順が統一されていなかったため、人によって作業時間に10分以上の差が生じ、品切れや負担の偏りが課題でした。私は「誰でも同じ時間で同じ品質の作業ができる状態」を目指し、動線や在庫配置、発注タイミングを分析・見直しました。ヒアリングを基に複数の改善案を作成し、全員でテスト運用を行いながら、フィードバック会で意見を反映して最適化を重ねました。結果、改善後の手順が正式に業務手順書として採用され、平均作業時間を約15%短縮、品切れ件数を半減させることができました。この経験から、「現状を鵜呑みにせず課題を数値で捉え、周囲を巻き込みながら改善を形にする力」を身につけました。今後もこの姿勢を活かし、貴社でも業務効率化や仕組みづくりに主体的に貢献したいと考えています。

企業がガクチカで評価するポイント

「ガクチカで企業が見ているポイント」と題されたスライド。5つのポイントが図示されている。それは「モチベーションの源泉」「問題解決のプロセス」「やり切る力」「経験から学ぶ力」「論理的思考力」。スライド下部には、企業は成果よりも「なぜそう考え、どう行動したか」というプロセスを重視しており、そこに再現性と価値観が現れるからだと結論づけている。

en-courageの利用者インタビューで「成果が小さいと評価されないのでは」という不安が聞かれました。これに対し元人事の成田さんは「私たちは成果より『なぜそう考え、どう行動したか』というプロセスを重視しています」とコメントしています。ここでは、企業がガクチカから何を読み取ろうとしているのか、その具体的な評価ポイントを5つに分けて解説します。

モチベーションの源泉

企業は、学生が「どのようなことにやりがいを感じるのか」「何が原動力となって行動するのか」を知りたいと考えています。なぜなら、仕事で高いパフォーマンスを発揮するには、モチベーションが不可欠だからです。

「周りから評価されること」で頑張れるのか、「困難な課題に挑戦すること」に意欲が湧くのか、その源泉はその人によって異なります。ガクチカのエピソードから学生のモチベーションの源泉を知ることで、自社の仕事や環境で意欲的に働いてくれそうか、ミスマッチが起きないかを見極めています。

問題解決のプロセス

企業は、ガクチカのエピソードを通じて「物事への取り組み方」や「課題解決のプロセス」を評価しています。仕事では、予期せぬ困難や課題に直面することが日常茶飯事です。

そのため、学生が過去の経験において「どのような課題に直面し」「その原因をどう分析し」「解決のためにどのような工夫や行動をしたのか」という具体的なプロセスを重視しています。このプロセスから、その学生の思考の仕方や、入社後も主体的に課題を乗り越えてくれるかを判断しようとしています。

粘り強さ・やり切る力

企業は、学生が「困難な状況でも諦めずに最後までやり切る力」を持っているかどうかも見ています。目標達成までの道のりには困難がつきものです。すぐに諦めてしまう人ではなく、粘り強く取り組める人材が求められます。

ガクチカのエピソードの中で、困難に直面しながらも、目標達成のために地道な努力を続けたり、責任感を持って役割を果たしたりした経験は、「粘り強さ」や「やり切る力」のアピールに繋がります。与えられた仕事や困難な課題に対して、誠実に取り組めるかを評価しています。

経験から学ぶ力

新卒採用はポテンシャル採用とも言われる通り、企業は学生の「現時点での能力」だけでなく、「入社後の成長可能性(伸びしろ)」を重視しています。そのため、ガクチカの経験を通じて「何を学んだのか」を評価しています。

たとえ失敗した経験であっても、「なぜ失敗したのか」を真摯に振り返り、反省点を次に活かそうとする姿勢が見えれば、それは「経験から学ぶ力」があることの証明になります。経験した事実だけでなく、そこからどのような教訓や強みを得て、それが今の自分にどう繋がっているのかを具体的に示すことが求められます。

論理的思考力・分かりやすく伝える力

企業はガクチカの「内容」と同時に、それを「分かりやすく伝える力」も評価しています。どんなに素晴らしい経験をしていても、その背景やプロセス、学びが相手に伝わらなければ評価されません。

「簡潔に分かりやすく物事を伝える力」や「論理的に話を組み立てる力」は、社内外のコミュニケーションが必須となるビジネスシーンにおいて不可欠なスキルです。エピソードを時系列で整理し、背景・課題・行動・結果・学びといった要素を論理的に構成して伝えることで、コミュニケーション能力の高さも同時にアピールできます。

ガクチカがないときの見つけ方

「ガクチカがないときの見つけ方」と題されたスライド。6つのヒントがリストアップされている。「就活のプロに相談」が「おすすめ」として強調されており、その他に「やり遂げられた経験を探る」「企業の求める人物像を理解」「共通の動詞の例文を参考に」「良い過程の経験を探る」「徹底的な経験の掘り起こし」が挙げられている。

「ガクチカがない」と焦っている学生の多くは、経験の「掘り起こし方」を知らないだけかもしれません。元人事の成田さんは「視点を変えれば、誰にでもアピールできる経験はある」と断言します。ここでは、成田さんが推奨する、ガクチカの種を見つけるための具体的な方法を6つご紹介します。

就活のプロに相談する

自分一人で考えても「これがガクチカになるか不安」「どうアピールすればいいか分からない」と悩む場合は、就活のプロに相談するのが有効です。大学のキャリアセンターや民間の就職エージェントサービスには、就活支援の専門家が在籍しています。

多くの学生の悩みを聞いてきたプロの視点で経験をヒアリングし、どれがアピール材料になるかを一緒に見つけ出してくれます。自分では気づかなかった強みや、経験を魅力的に伝えるための言語化もサポートしてもらえるため、客観的なアドバイスが欲しい場合に適しているでしょう。

企業が求める人物像を理解する

自分の経験を闇雲に探すのではなく、まず「企業がどのような人材を求めているか」を理解することから始めるのも有効です。企業の採用ページやパンフレットを読み込み、掲げられている「求める人物像」や「大切にしている価値観」を把握しましょう。

例えば「挑戦心」を求める企業であれば、自分の経験の中から「新しいことに挑戦したエピソード」を探します。「協調性」を重視する企業であれば、「チームで何かに取り組んだエピソード」が適しているでしょう。このように、企業のニーズを先に理解し、それに合致する自分の経験はどれかを逆算して考えることで、効果的なガクチカを見つけやすくなるはずです。

「良い成果」より「良い過程」の経験を探る

「全国大会で優勝した」や「売上を2倍にした」のような「派手な成果」がなければ、評価されないと思い込む必要はありません。企業が注目しているのは成果の大小ではなく、「その過程であなたが何を考え、どう工夫し、行動したか」です。たとえ結果が振わなかったり、失敗したりした経験でも、そこから何を学び、どう次へ活かそうとしたかを具体的に語れれば、立派なガクチカになります。

「なぜその目標に取り組もうと思ったのか」「どのような課題があり、どう工夫して乗り越えようとしたのか」というプロセス自体に、あなたの価値観や強みが表れるのです。「良い成果」にこだわるのではなく、「良い過程」を経た経験がないかを探すことが大切です。

▼経験の掘り起こし方については、以下の記事で詳しく紹介しています。
学生時代頑張ったことは普通で良い。選考突破のコツ

「熱中できた」より「やり遂げられた」経験を探る

ガクチカの題材は、必ずしも自分が「熱中できた」ことでなくても構いません。「学生時代に力を入れたこと」という言葉の響きから、情熱的に取り組んだ経験を探しがちですが、見つからないこともあるでしょう。

最初は義務的に取り組んでいたことや、気が進まなかった活動でも、そこに自分なりの工夫を加えたり、責任感を持って「最後までやり遂げた」経験があれば、立派なガクチカになります。社会に出れば、すべての仕事が「やりたいこと」とは限りません。そのような環境でも前向きに努力し、自分で意義を見出せる誠実な姿勢は、企業にとって魅力的に映るはずです。

「共通の動詞」がある例文を参考にする

「ガクチカがない」と悩む人は、例文を探す際、「アルバイト」「サークル」「留学」といった「共通の名詞(テーマ)」で探しがちですが、重要なのは「何を(名詞)」ではなく「どうしたか(動詞)」です。なぜなら、企業はあなたの「行動特性(=動詞)」にこそ再現性がある(=入社後も活躍できる)と考えるためです。

例えば、自分は「アルバイト」経験しかないと悩んでいても、他の人の「サークル」の例文の中に、「目標達成のために計画を立て、実行した」「対立する意見を調整し、周囲を巻き込んだ」「課題を分析し、新たな施策を試した」といった「共通の動詞(行動)」が見つかることもあります。自分がアピールしたい「動詞(行動特性)」に焦点を当てて例文を探してみましょう。そうすることで、一見すると自分とは異なるテーマの経験からでも、自分の経験に応用できるヒントが見つかるはずです。

▼ガクチカの例文を探す際は、こちらの記事も参考にしてみてください。
【エピソード・文字数別】受かるガクチカ例文24選!落ちるガクチカとの違いを元日系大手人事が解説

徹底的に経験を掘り起こす

ガクチカが見つからない最大の理由は、経験の「掘り起こし」が不足していることにあります。自己分析を徹底的に行い、過去の経験を棚卸しすることが必要です。有効な方法の一つが「自分史」の作成です。小学校から現在まで、印象的だった出来事を時系列で書き出してみましょう。

さらに、「モチベーショングラフ」を使って、その時々のモチベーションの浮き沈みを可視化してみましょう。モチベーションが高かった(または低かった)時期の出来事に注目し、「なぜ頑張れたのか」「なぜ落ち込んだのか」を「なぜ?」と繰り返して深掘りすることで、自分の価値観や行動原理が見えてくるでしょう。「一番時間を使った経験」「困難を乗り越えた経験」「毎日続けている習慣」など、どのような些細なことでも片っ端から書き出すことが、ガクチカ発見の第一歩となります。

▼自己分析の詳しいやり方は、こちらの記事で解説しています。
ガクチカとは?「受かる書き方」を元日系大手人事が例文付きで徹底解説

ガクチカの構成・書き方・例文

元人事の成田さんは、「ガクチカは経験の大きさより書き方で決まる」と断言します。企業が見ているのは、経験の派手さではなく、行動と思考を論理的に伝える構成力です。ここでは、成田さんが「受かる」と判断したガクチカに共通する、書き方と構成のステップを例文とともに紹介します。

受かるガクチカの構成

「ガクチカの構成とコツ」と題されたスライド。左側には400文字を想定した6段階の構成が示されている。「1. 結論(40文字)」「2. 目標(60文字)」「3. 課題(70文字)」「4. 行動(90文字)」「5. 成果と教訓(80文字)」「6. 仕事への活用(60文字)」。右側には「コツ」として「主体性の強調」「志望につながる原体験の提示」「企業固有の強みの理解」の3点が挙げられている。

受かるガクチカは、多くの場合、以下の6つの要素で構成されています。この流れを意識することで、伝えたい内容が論理的に整理され、採用担当者に伝わりやすくなるでしょう。

  1. 結論:まず「学生時代に最も力を入れたことは何か」を端的に述べます。
  2. 動機・目標:「なぜそれに取り組もうと思ったのか」という動機や、「どのような目標を掲げたのか」を具体的に示します。
  3. 課題・困難:目標達成の障害となった「どのような課題や困難があったか」を描写します。
  4. 行動・工夫:ガクチカの核となる部分です。課題を乗り越えるために「自分がどう考え、どう行動したのか」を具体的に伝えます。
  5. 結果・成果:行動の結果、「状況がどう変わり、どのような成果が出たのか」を客観的に示します(可能であれば数字などで示します)。
  6. 学び・仕事への活用:その経験全体を通じて「何を学び、身につけたのか」、そしてそれを「入社後にどう活かせるか」を述べ、締めくくります。

受かるガクチカの書き方

「ガクチカの書き方」と題されたスライド。「基礎(BASIC)」として4点(結論ファースト、定量的に書く、専門用語を避ける、求める人物像にマッチさせる)が挙げられている。「応用(ADVANCE)」として3点(背景にある熱意を伝える、高い目標に挑んだことを示す、Before/Afterを明確にする)が、それぞれ詳細な説明文と共に記載されている。

受かるガクチカを書くためには、基本となるポイントと、さらに印象を深めるための応用ポイントがあります。

【基本のポイント】

  • 求める人物像にマッチさせる:ただ経験を語るのではなく、企業が求める人物像に合わせてアピールする要素を選びます。企業の価値観と自身の経験の親和性を示しましょう。
  • 結論ファーストで書く:冒頭で「学生時代に最も力を入れたことは◯◯です」と端的に示し、その後に具体的なエピソードを続けます。
  • 定量的に書く:成果やプロセスを具体的に伝えるため、「売上〇%増」「参加者〇人」など、可能な限り数字や固有名詞を用います。
  • 専門用語を避ける:研究内容などを書く場合でも、その分野に詳しくない採用担当者にも理解できるよう、平易な言葉で説明します。

【応用のポイント】

  • 活動の背景・動機に熱意を込める:「なぜそれをやったのか」という動機を具体的に描くことで、行動の背景にある価値観やその人らしさが伝わります。
  • 自分にとって高い目標への挑戦を示す:成果の大小よりも、「自分にとってどれだけ高い理想を掲げ、真剣に挑んだか」が重要です。
  • 取り組み前後の変化を明確にする:成果そのものよりも、「取り組みによって何が変わったか(Before/After)」を具体的に描くことで、再現性のある実行力として評価されます。

▼ガクチカの構成や書き方の詳細は、以下の記事で紹介しています。
ガクチカとは?「受かる書き方」を元日系大手人事が例文付きで徹底解説

受かるガクチカの例文

(落ちる例文:水泳指導)
学生時代は水泳指導のアルバイトに力を入れました。担当した子供たちの中には水が怖い子もおり、なかなか上達しないことが課題でした。私は、子供たちが水泳を嫌いにならないよう、まずは水に慣れることを重視しました。個別に声をかけ、水遊びなどを取り入れながら指導することで、徐々に子供たちも水への恐怖心がなくなり、最終的には全員が泳げるようになりました。この経験から、相手の立場に立って考えることの重要性を学びました。

(受かる例文:水泳指導)
学生時代、水泳指導のアルバイトで子供たちの「水への恐怖心」の克服に力を入れました。当初、私のクラスの生徒5名は水に顔をつけることすらできず、指導マニュアル通りの進め方では上達が見込めませんでした。課題は「水=怖い」という先入観だと特定し、個々の性格に合わせた指導法に変更。例えば、慎重な子には水遊びを通じて徐々に慣れさせ、負けず嫌いな子には小さな目標(顔つけ3秒など)を設定し、達成感を重視しました。結果、3ヶ月後には全員が5メートル泳げるようになり、保護者からも感謝の言葉をいただきました。この経験から、相手の特性を見抜き、個別に最適なアプローチを考える課題解決力を学びました。

<ポイント>

  • 行動の“具体性”を高める:落ちる例文は「頑張った」など抽象的です。受かる例文は、「誰に」「何を」「どうした」を具体的に描き、行動を明確にしています。
  • 構成の流れを意識する:落ちる例文は「やったこと」の報告に留まっています。受かる例文は、「課題特定→原因分析→具体策実行→成果」という論理的なストーリーで展開しています。
  • 成果よりも“成長と学び”で締める:「全員泳げた」という結果だけでなく、受かる例文はそこから「課題解決力」という強みを言語化し、企業での再現性を示唆しています。

▼他のテーマのガクチカ例文も参考にしたい方は、こちらの記事をご覧ください。
【エピソード・文字数別】受かるガクチカ例文24選!落ちるガクチカとの違いを元日系大手人事が解説

ガクチカを作成する際の注意点

「ガクチカがない」と感じていても、多くの学生には語れる経験があります。ただし、どんな経験でも使えるわけではありません。元人事の成田さんは、「内容が地味でも構わないが、テーマを誤ると評価が下がる」と指摘します。また、良い題材を見つけても、基本的なESのルールを守れていなければ評価されません。

ここでは、避けるべきエピソードなど、ガクチカを作成する際の注意点をお伝えします。

ESとして抑えるべき注意点

「ESとして押さえるべき注意点」と題されたスライド。4つのポイントが挙げられている。1つ目は「求める人物像を理解する」で、企業理念を把握し的外れな内容を避けるべきと説明。2つ目は「話し言葉を使わない」で、流行語や口語は厳禁でありフォーマルな表現を徹底すべきと説明。3つ目は「誤字・脱字に注意する」で、一文字でも大減点になるため複数回見直すべきと説明。4つ目は「期限ギリギリに提出しない」で、早めの提出が評価につながることもあるため余裕を持つべきと説明している。

ガクチカの内容以前に、エントリーシート(ES)全体で守るべき基本的なルールがあります。これらを守らないと、内容を読んでもらう前にマイナスイメージを持たれる可能性があるため注意が必要です。

  • 企業の求める人物像を理解する:企業理念や採用サイトを確認し、企業が求める人物像と自身の経験の共通点を見つけてアピールすることが重要です。
  • 話し言葉(口語)を使わない:ESはビジネス文書です。「ら抜き言葉」(例:食べれる→食べられる)や、「すごい」「めっちゃ」などのカジュアルな口語表現は避け、丁寧な書き言葉を使います。
  • 誤字・脱字を徹底的にチェックする:誤字・脱字は「確認を怠る人」「仕事が雑な人」という印象を与えかねません。提出前には必ず複数回のチェックを徹底しましょう。
  • 期限を守り、早めに提出する:提出期限を守るのは社会人として当然のマナーです。期限ギリギリではなく余裕を持って提出しましょう。

▼エントリーシートの注意点は、以下の記事にて詳しく解説しています。
落ちないエントリーシートの書き方企業が見ているポイントと対策まとめ

ガクチカとして抑えるべき注意点

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ガクチカの「テーマ」を選ぶ際にも、避けるべき内容や注意点があります。

  • 守秘義務に抵触しない:インターンシップやアルバイト先で知り得た社外秘のデータ(例:具体的な売上額、顧客情報)をそのまま書くと、情報管理の意識が疑われます。数字は「約〇%」のようにぼかすか、社名を伏せるなどの配慮が必要です。
  • 高校生以前のエピソードは使わない:企業が知りたいのは、基本的に「大学(直近)での成長」です。高校時代のエピソードが中心だと、「大学では何もしてこなかった」と受け取られる可能性があります。
  • 他者との関わりがない個人的な活動は避ける:企業は「チームの中でどう動けるか」も見ています。「一人でゲームをクリアした」といった他者との関わりが全くない趣味は、アピールしにくい場合があります。
  • 具体的な行動を伴うものにする:「自分探しをした」「将来について深く考えた」といった内面的な思索だけでは不十分です。考えた結果として「何を実行したのか」という具体的な行動を伝えましょう。

▼ガクチカとして押さえるべき注意点は、以下の記事にて詳しく解説しています。
ガクチカとは?「受かる書き方」を元日系大手人事が例文付きで徹底解説

それでもガクチカが本当にない!今からガクチカを作る方法

本当にガクチカがないかエージェントに相談しませんか?

元人事の成田さんは「『本当にガクチカがない』と焦る前に、まずはプロに相談してほしい」と語ります。

人事として多くの学生を見てきた成田さんによれば、学生自身が気づいていないだけで、アピール材料は必ずあるからです。自分では「ガクチカにならない」と思い込んでいる経験が、プロの視点から見れば立派なアピール材料になることは少なくありません。就活エージェントは、専属のアドバイザーが自己分析や経験の棚卸しを手伝ってくれます。豊富な知見を持つプロと一緒にこれまでの経験を振り返ることで、自分では気づかなかった強みやエピソードを発見できる可能性もあるでしょう。

今からガクチカを作る方法

それでもなお「今から何か始めたい」と考える学生もいるかもしれません。もし本当にアピールできる経験がなく、今からガクチカを作るのであれば、闇雲に行動するのは非効率です。元人事の成田さんも、評価に繋がりやすい「ガクチカの作り方」の視点が重要だと解説しています。

まずは、志望する企業がどのような人材を求めているかを分析し、「どのような能力・資質をアピールしたいか」を決めましょう。例えば、「リーダーシップ」をアピールしたいのか、「課題解決力」なのか、あるいは「粘り強さ」なのか。まずアピールしたい「ゴール(能力)」を明確にすることで、その能力を身につけるために「何をすべきか」が具体的になります。社会人に求められるスキル(例:計画性、実行力、協調性など)から逆算して、取り組むテーマを決めましょう。

よくある質問

就活のサポーターとしてよく聞かれる質問や、en-courage利用者へのインタビューで出てきた疑問への回答をご紹介します。

ガクチカは大学時代の経験でないとダメ?

必ずしも大学時代の経験である必要はありません。企業が知りたいのは「物事への取り組み方」や「価値観」なので、それが伝わるなら中学・高校時代のエピソードでも構いません。ただし、企業は「直近の成長」も知りたがっています。高校時代のエピソードしかないと「大学時代は何もしていない」と受け取られる可能性もあるため、大学時代のエピソードを優先するのが無難です。もし高校時代のエピソードを使うなら、「その学びが現在の大学生活にどう繋がっているか」を説明できると良いでしょう。

成果が出ていない・失敗した経験でもいい?

全く問題ありません。失敗した経験の方が、学びの深さを伝えられる場合もあります。企業が知りたいのは「成果の大小」ではなく、「困難にどう向き合ったか」というプロセスです。重要なのは、「なぜ失敗したのか」を分析し、何を学び、次にどう活かそうとしたかです。失敗の原因を振り返り、反省や改善行動を具体的に語れれば、立派なアピールになります。

ガクチカは自己PRと同じテーマでもいい?

同じエピソードを使っても問題ありませんが、アピールする「視点」を変える必要があります。企業は「ガクチカ(=経験のプロセス、取り組み方)」と「自己PR(=強み・スキル)」を異なる目的で質問しているためです。例えば、同じアルバイト経験でも、ガクチカでは「課題解決のプロセス」に、自己PRでは「身についた課題解決力」に焦点を当てて語る、といった工夫が求められます。全く同じ内容をコピー&ペーストするのは避けましょう。

自分では、何が「頑張ったこと」として見られるかがわからない

多くの学生が「何が評価されるか分からない」と悩んでいます。これは、企業の評価ポイントを理解していなかったり、自己分析が不足していたりするためです。企業は特別な経験ではなく、あなたの「人柄や価値観」「物事への取り組み方」を知りたいと考えています。経験に優劣はありません。この記事で紹介した「企業が評価するポイント」を参考に自己分析を試してみてください。それでも見つからない場合は、「就活のプロに相談する」のも有効です。


監修:成田 駿

元日系大手人事/就活サポーター

日系大手事業会社で最年少部長に就任し、新卒採用に5年以上従事。戦略設計からイベント企画、選考フロー、研修まで新卒採用の入口から出口までを幅広く担当し、延べ3,000名以上の学生と接点を持つ。人事業務以外でも累計2,000名以上の就活生を個別に支援し、大手・外資・メガベンチャーなど多様な企業への内定実績を誇る。

協力:NPO法人en-courage

en-courage(エンカレッジ)は、就活生のキャリア形成を支援する日本最大級のNPO法人です。全国約120大学に支部を展開し、約2,000名のメンターが在籍しています。メンターは就活を終えたばかりの一つ上の先輩で、週次の面談を通じて担当する就活生のキャリア支援を行っています。 常に最新かつリアルな就活情報を収集できるため、学生の視点に立った信頼性の高いキャリア情報や実践的な就職活動ノウハウを発信できます。