理系学生は就職活動に有利なの?
今回のテーマは「理系学生の就活」。
「あまり就活に時間が割けないから」 「理系学生は理系の進路しかないから」 「理系学生は文系就職ではむしろ不利だから」 という理由で院へ進学することや、理系職種の就活をすることを決めつけていませんか?
実は近年、業界・業種を問わず理系を求める企業が増えてきており、理系学生は文系学生よりも選択肢が広いと言える状況になりつつあるのです。
そういう意味では理系学生の就活は確実に有利な状況。
今回は理系が有利と言われる所以を紐解きつつ、様々な進路の選択肢やそのメリットデメリットについて解説していきます。
■理系学生は就活の選択肢が多い!
前述の通り、理系学生は「進路の選択肢が多い」という意味で有利です。
具体的に文系よりも有利と言える要素は以下2つ。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 1、理系就職において推薦応募できる企業が多い 2、文系就職において積極的に理系学生を求める企業が増えている ________________________
ここからそれぞれについて解説していきます。
■1、理系就職において推薦応募できる企業が多い
こちらは理系学生であればすでにご存知の方も多いかもしれません。
理系学部には文系学生より豊富な「大学推薦制度」が存在します。 その点において文系学生より有利といえます。
例えば一例をあげると、慶応義塾大学では文系就職の学校推薦制度はないそうです。 一方で、理工学部やその他一部の学部における「技術系職種」には推薦制度があるとのこと。
理系学生は大学のキャリアセンターでどんな推薦求人が出ているのか確認してみましょう。
また、理系学生が大学院まで進学した場合、研究室限定の推薦求人が存在します。
こちらは教授推薦とも呼ばれます。 教授と企業が研究などで密に連携することが多いことから、企業が教授や研究室のことを信頼して出す限定の推薦求人です。
その教授の下で学んでいる子なら会社にマッチする可能性が高いだろう、という企業の考えのもと出されていることが多いようです。
院への進学を考えている人は、研究室訪問や研究室のHPをチェックして、どのような推薦求人があるのか、どんな就職先があるのかを見てみると良いかと思います。
■2、文系就職において積極的に理系学生を求める企業が増えている
実は文系就職においても積極的に理系学生を求める企業が増えており、その点において理系学生は有利といえます。
なぜ理系が求められてきているのか、順を追って説明します。
変化が激しく先が読めない今の世の中において企業が持続的に成長するためには、現状の事業の維持のみにとらわれず、常に新しい価値を世の中に届けていく必要があります。
つまり、企業は新しい事業、サービスを検討し続ける必要があるのです。
これが実現できる人を企業は求め始めるようになりました。 どんな人でしょうか?
それは「課題を設定し、解決できる人」です。
今までの日本企業はすでに顕在化された課題を解決できる人を求めてきました。 しかしこれからは先が見えない世の中で何が解くべき課題か? を設定し、それを解決できる人の存在が必須です。
そこで理系人材に白羽の矢が立つようになってきたのです。 理系学生は日々の研究で課題設定〜課題解決〜振り返りのサイクルが習慣化してるため、以下の能力や仕事に向き合う姿勢が突出していることが多いのです。
・日々の研究を通して解くべき課題を設定する力が養われている ・実験結果の数値やデータから考察を施し、次の改善活動につなげるPDCAサイクルが身についている ・論文提出や学会発表などの目標を設定し、それを達成するためやりきる姿勢が身についている
これってまさに企業の求める「課題を設定し、解決できる人」そのものですよね。 その能力に期待して企業は理系人材を積極的に採用するようになってきたのです。
筆者は文系就職をした理系学部出身者ですが、筆者が在籍している某Web企業(人材・不動産・進学などを展開)のマネジメント層は半分くらい理系出身です。
また少し前ですが、<特に欲しいのは「遊んでいる理系」>という電通の採用部長・育成部長による取材記事がNewspicksで話題になりました。
筆者の周りの知人にも理系出身で電通に入り、その後活躍している人はたくさんいます。
このように、理系学生は、理系就職も文系就職もできるお得なポジションにいるのです。
最初から可能性は狭めず、理系学生も文系就職を選択肢の1つに入れておくことを強くオススメします!
理系学生の進路・就職方法のメリット・デメリットは?
さて、ここまでで理系学生は就活の選択肢が多いということがわかったかと思います。 ここからは選択肢ごとのメリット・デメリットについて解説していきます。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ・院進学と学部卒業の比較 ・自由応募と推薦応募の比較 ________________________
■院進学と学部卒業の比較
<院進学のメリット>
・専門性が身につく 2年間大学院で研究に励むことにより、自分が学んでいる分野への知見が深まります。
そのため自分の培ったスキルと近しい領域への専門職(研究職・開発職)への就職可能性が格段にアップするのです。
前述の通り研究室推薦を利用し就活することも可能です。
これは、あまり専門性を問われずポテンシャルで選考が行われる文系の就活とは大きく異なるポイントでしょう。
・応募の間口が広い 特に理系の研究職の就活では、院卒見込み以上を応募条件としている会社もあります。
研究職など専門性の高い仕事を志す場合、院進学で研究に励むことで様々な就職先を検討することが可能です。
・初任給が高い 特に理系就職の場合、院時代の研究で培ったスキルが考慮され初任給が高いケースが存在します。
例)旭化成 大卒 月給224,210円 修士 月給248,890円 博士 月給291,510円 (2020.4実績 諸手当別途支給/リクナビ2022より引用)
<院進学のデメリット>
・社会人経験が2年分遅れる 院進学をすることにより、ビジネス経験を積むのが2年分遅れます。
自分が学んでいる分野で就活する場合は、2年間の研究でその分野のスキルがアップするためあまり問題ではありません。
ですが特に文系就職など自分の専門領域外の就活をする場合、社会人デビューが遅れている2年間分きちんと勉学やアルバイトの経験踏まえてポテンシャルがあるのかを厳しくみられます。
大学院に進学してだらだらと2年間大学生活を延長しているだけではむしろ内定から遠のいてしまうので、何のために自分は院に行きたいのかをしっかり考えるべきです。
<学部卒のメリット>
・早くビジネス経験を積める 院卒と比較して2年早く社会に出て実務経験を積めることはメリットと言えます。
例えばプログラミングを大学で学んでいたとしても、それを学んで自分の中で理解するだけで終わることと、実際に上司や同僚、委託先の人とコミュニケーションを取りながら活用することは天と地ほどの差があるのです。
・ポテンシャル重視で選考してもらえる 学部卒で就活する場合、専門性はあまり問われずポテンシャルを重視した選考となります。 自分が大学で学んできたことと別の仕事につきたいと思った時に諦めずに受検できる点はメリットでしょう。
<学部卒のデメリット>
・専門性を活かした職種には就職しづらい 大学4年間の勉強量や質ではやはり院生には勝てません。
また、専門性の高い職種や研究職では応募条件を院卒見込み以上としているケースもあり、学部卒でそのような職種への就職はしづらい点はデメリットと言えるでしょう。
■自由応募と推薦応募の比較
<自由応募のメリット>
・理系・文系就職にとらわれない就活ができる 自分の意思で興味がある会社を何社でも受けることが可能です。
自分はどんな人間で、どんな仕事に向いていそうで、どんなキャリアを歩みたいのかを考えた上で、様々な会社を見ていけることはメリットと言えるでしょう。
<自由応募のデメリット>
・推薦応募より時間がかかる 推薦応募に絞る就活とは異なり、たくさん受ける可能性が高いので、対策により時間がかかります。 また、ES・面接・グループディスカッションなど、選考に時間がかかる点もデメリットです。
<推薦応募のメリット>
・合格率が高い 推薦求人は企業側がその大学・研究室の学生がマッチするだろうという前提に立って求人を出しているため、合格率が高いことが特徴です。
また、自由応募のようなES・面接・グループディスカッションといった長い選考がない企業が多いことも特徴です。
<推薦応募のデメリット>
・受けられる企業は限られる 自由応募の就活と異なり、大学のキャリアセンターや研究室に出される求人数や種類は限定的です。
必ずしも自分の興味がある求人が出るわけではないことはデメリットと言えるでしょう。
・絶対に内定が出るわけではない 先ほど合格率が高いと記載はしましたが、100%内定が出るわけではありません。 応募時に大学の成績で判断されたり、当然面接で落とされるケースも存在します。
一部選考がスキップされることが多いとはいえ、就活対策が必要なのは自由応募と同じ。 しっかり準備していきましょう。
・辞退しづらい 推薦求人の場合、大学や企業と教授の信頼関係で成り立っているので内定後の辞退は原則NGです。
辞退すると翌年以降の推薦枠がなくなり後輩に迷惑をかけるケースも。 推薦を受ける場合は、本当に自分がその会社に行きたいのか? を考えた上で受検しましょう。
就活における学部卒・院進学、自由応募・推薦応募のメリット・デメリットを記載しましたが、どちらがいい悪いではありません。
大切なのはあなたがどういう仕事につきたいかをしっかり考えること。 きちんと自己分析し、進路を選択しましょう。
自己分析について深く学びたい方はこちら!>>
理系学生の就職先は?
それぞれの進路のメリット・デメリットは理解いただけたかと思いますが、やはり具体的に理系学生の就職先はどんなものがあるのかと疑問に思う方もいると思います。
ここでは理系学生が学科ごとにどのような就職先につくことが多いのか、 ・理系専攻別 理系就職先 ・理系学生 文系就職先 に分けて解説していきます。
■理系専攻別 理系就職先 <理学系>
理学系学部は、「理論を学び、実験を通して考察を得ていくこと」が主な勉学の内容となります。
この学びの繰り返しが高い論理的思考力につながることが多く、特に数学・物理専攻は統計のプロ、解析のプロとしての就職先が多いようです。
また化学・生命・地学系においては、それぞれの専門分野が活かせる企業への就職先が多いです。
✔︎就職先例 ・数学・物理系 ITエンジニア(データサエンティスト、アルゴリズム開発) 金融専門職(アナリスト、アクチュアリー)
・化学系 化学メーカーの研究開発、品質管理、技術営業 製薬会社の研究開発、MR(医薬情報担当者)
・生物・生命科学系 製薬・食品系メーカーの研究開発、製造技術
・地学系 地盤調査、環境分析技術者、測量士
<工学系>
工学系の学部は、理学と異なり「実験を通して実物の構造や設計を学ぶこと」が主な勉学の内容となります。
ついては、自分が学んでいた領域に近しい仕事への就職が多いようです。
✔︎就職先例 ・機械工学 諸機械の設計・開発、品質管理、生産技術
・電気電子工学 電子回路技術者、設備設計、電気工事施工管理、プラントエンジニア
<情報通信系>
情報通信系は大学時代に学んだプログラミングスキルを活かした仕事が多いです。
✔︎就職先例 プログラマ、システムエンジニア、インフラエンジニア、社内SE
<応用化学・農学系>
学んだ分野が活きる素材メーカー、製薬メーカー、食品メーカーなどが一般的です。
✔︎就職先例 各種メーカーの研究開発、技術営業、品質管理、製造技術、営業
<建築・土木系>
こちらも学んだ分野を活かす仕事を選ぶケースが多いです。
✔︎就職先例 設計士、プラントエンジニアリング、ゼネコン、工務店、アトリエ、組織設計事務所、デベロッパー 内装設計、建築施工管理 土木設計技術者、土木施工管理、測量士
■理系学生 文系就職先 結論からお伝えすると、文系の就職先と全く変わりません。 しっかりと就活対策を行えば、文系学生と変わらず内定をもらうことができます。
ただし、先ほどの企業側が「課題設定力を求めている」という話を踏まえると、外資コンサルティング企業や大企業・ベンチャー企業の経営企画室に入社する人が相対的に多いようです。
✔︎就職先例 商社、メーカー、金融、外資コンサル、外資金融、ITベンチャー、テレビ、広告、出版社、人材、他多数
・理系学生のアピールのしどころは? 理系学生が文系就活をするときにどんなことをアピールすればいいか悩む人もいるかもしれません。
理系学生は前述の通り「課題設定力」と「それをどのように解決したか」を期待されている可能性があります。
そのため就活の定番「学生時代に力を入れたこと」であれば、こんなことを話してみると良いかもしれません。
・理系の授業や研究で自分なりに課題と捉えたことと解決の仕方 ・アルバイト経験における課題と捉えたことと解決の仕方
理系の勉強関連で話せるとベストですが、自分が課題と捉えたことについてアピールできれば内容は問われません。
ぜひ話せるエピソードについて考えてみてください。 就活におけるガクチカについてより深く知りたい方はこちら!>>
理系学生の就職活動スケジュールは?
さて、理系学生の就活事例も理解した上で、どのようなスケジュール感覚で就活をすれば良いのでしょうか?
自由応募と推薦応募に分けてスケジュールを記載していきます。
■自由応募の場合のスケジュール 大学3年生(大学院1年生)をイメージした時の就活のスケジュールを説明します。
まず春先に夏インターンの募集・選考があり、6〜9月で夏インターンシップが開催され、
そして夏頃に秋インターンの募集・選考があり、9〜11月で秋インターンシップが開催されます。
秋頃に冬インターンの募集・選考があり、11〜2月で冬インターンシップが行われます。
インターンの開催時期、開催回数、開催日数は企業によって異なりますし、インターン参加経由の特別選考ルートがあるかどうかも企業によって異なります。
また、4月に就活が解禁され、6月から正式な本選考がスタートするスケジュールとなります。
が、ニュースでも取り上げられるように、6月から本選考をスタートさせる企業は少なく、実質6月より前に内定を出している企業が多いのが現実です。
就活解禁の4月から始めるのは遅いので、大学3年生(大学院1年生)から就活を始めることが内定の鍵と言えます。
・理系学生の就活はより計画的に 理系学生は必修科目が多く、大学4年生以上は研究室での実験があるため、就活に割ける時間が文系より少ないです。
そこで計画的に就活を行いましょう。
・文系就活を視野に入れるなら大学1、2年でインターンシップへ 文系就活も視野に入れるのであれば、比較的時間がある大学1、2年生のうちにインターンへ参加し、企業の理解や仕事体験をしておきましょう。
大学3年生になると学科によっては1回の授業で5時間程度拘束される実験が始まるため、早く動くことをオススメします。
・研究室選びは慎重に 研究室によっては厳しく出席を管理され、就活する時間が全く与えられないケースも存在します。
行きたい会社が明確な場合は別ですが、就活に時間が割けないことが原因で会社のことを知れなかったり受けられる会社が限られたりするはもったいないですよね。
分野で研究室を選ぶことは非常に大切ですが、その研究室がどんな出席条件なのかも合わせて確認しておきましょう。
■推薦応募のスケジュール 大学3年生(大学院1年生)の2〜3月にキャリアセンターや研究室に求人が上がることが一般的です。
ですが、近年の就活の早期化に応じて企業によってはもっと早く求人が上がるところもあるようなので、気になる方は大学や研究室に確認しましょう。
理系学生の就職活動における注意点
最後に、理系学生は特に注意していただきたい就活でのポイントをお伝えしていきます。 注意点は以下2点です。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 1、視野を狭めないこと 2、過信しないこと ________________________
■1、視野を狭めないこと 繰り返しになりますが、理系学生は情報量の少なさから、自分の学んでいる分野以外就職できないのではないか? と思いがちです。
けれど前述の通りむしろ選択肢の幅は幅は広い! と思って、自分の興味のある仕事を探していきましょう。
■2、過信しないこと 一方で、いくら理系学生が求められてきているからといって、
「自分は理系だから推薦で受かる!」 「理系は論理的思考が高いと思われているから就活は余裕!」 などと過信するのはやめましょう。
確かに選択肢は広いと記載しましたが、それは100%内定がでるという意味ではありません。
就活対策をしっかり行わないと内定は取れないので、気を抜かず就活の準備をしていきましょう。
おわりに
今回は理系の就活についてまとめました。
・理系学生は文系就職も理系就職も求められており、就活における選択肢が広いこと
・院進学と学部卒業、自由応募と推薦応募それぞれの特徴を踏まえて、自分のキャリア観に応じた就活をするべきであること
・理系学生の就活事例
・理系学生は就活に割ける時間が少ないことを見越して計画的に準備すべきであること
こんなことを理解いただけたかと思います。 けれどこれはごくごく一部。
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