履歴書は単なる経歴の羅列ではなく、採用担当者に「この人に会って話を聞きたい」と思わせるための重要なツールです。特に、限られたスペースで評価ポイントを押さえた志望動機欄を書けるかどうかが、面接への合否を左右します。
本記事では、元日系大手人事で、en-courageの就活サポーターとして延べ3,000名以上の学生を支援してきた成田さん監修の基、採用担当者が「会ってみたい」と感じる志望動機の書き方を解説。履歴書のフォーマットを2つのパターンに分類し、それぞれに最適な構成・文字数・コツを例文付きで紹介します。
そもそも履歴書における志望動機欄の役割とは
元人事の成田さんは、志望動機欄を「企業と応募者の考え方や方向性が合っているかを見極めるうえで特に重要な項目」と位置づけています。履歴書は面接の入り口であり、採用担当者に「会ってみたい」と思わせるためのツールです。人事の視点から、その役割を解説します。
なぜ企業は履歴書の志望動機欄を見るのか
企業が履歴書の志望動機欄を見る主な理由は、応募者と企業の間に認識のズレがないかを確認するためです。新卒採用では、実際の業務内容と応募者のイメージにギャップが生じがちです。
なお、詳細な深掘りはESや面接で行うため、履歴書の段階では詳細な動機までは見ていません。履歴書では以下の点がチェックされています。
- 応募者がその職種の業務内容を正確に理解しているか
- 自身のキャリアをその環境でどう形成しようとしているか
- なぜこの企業なのかという動機の筋が通っているか
要点を端的に伝え、会って話を聞きたいと思わせることが重要です。
企業の評価ポイント
履歴書の志望動機欄において、企業が主に評価するポイントは以下の3点です。
- 志望理由が的外れでないか:なぜその企業に魅力を感じたのかが、企業の強みや事業内容と合致しているかを見ます。各社が重視する価値観や求める人物像に応募者がフィットしているかが問われます。
- なぜこの企業かの筋が通っているか:これまでの経験と志望動機に一貫性があるかも重要です。自身の原体験や価値観に基づいた動機であれば、採用担当者は入社後の意欲的な姿勢を期待できます。
- 読みやすく端的にまとまっているか:採用担当者は多くの履歴書を確認します。書き出しで結論を伝え、締めくくりで貢献意欲を示すなど、限られたスペースで情報を整理し、わかりやすく伝える構成力も評価対象です。
ESの志望動機との違い
ESと履歴書では、志望動機に求められる役割が異なります。
ESは「1つの設問に対して、1つの答えを書く」書類であり、志望理由も一つのテーマを深く掘り下げて伝えるものです。
一方、履歴書の志望動機欄では、志望動機だけを書くとは限りません。自己PRや特技など、複数の内容をまとめて記入するケースも多くあります。そのため、ESのように一つの答えを用意するのではなく、限られたスペースの中で情報を整理して伝える視点が必要になります。
この違いを踏まえたうえで、次に履歴書の志望動機欄を2つのパターンに分けて見ていきましょう。
履歴書の志望動機欄には2つのパターンがある
en-courageで多くの就活生を支援してきた経験から言えることは、履歴書のフォーマット確認が最初のステップだということです。大きく分けて2つのパターンがあり、それぞれ戦略が異なります。以下で特徴を解説します。
パターン①:「志望動機・特技・好きな学科・アピールポイントなど」が1つの欄にまとまっているタイプ
JIS規格の履歴書などで見られる形式です。「志望動機」に加え、「特技」「好きな学科」「アピールポイント」などを1つの大きな枠内にまとめて記入します。
複数の要素を並列して書く必要があるため、志望動機だけに文字数を割くと他の項目が希薄になります。全体のバランスを考慮し、各項目を簡潔にまとめる構成力が求められます。限られたスペースの中で、業務への関心、原体験、強みといった必須要素を効率よく盛り込む工夫が必要です。
パターン②:「志望動機」だけの独立した欄があるタイプ
志望動機のみを記入する独立した欄があるタイプです。パターン①に比べて記入スペースが広く、より詳細なアピールが可能です。
一般的には200字から300字程度、場合によってはそれ以上の記述が求められます。文字数に余裕があるため、単に理由を述べるだけでなく、冒頭で全体像を伝える結論から始め、具体的なエピソードや入社後の展望まで構成し、説得力を持たせることが重要です。
【パターン①】「志望動機・特技・好きな学科・アピールポイントなど」欄の書き方
多くの学生を支援してきた成田さんによると、このタイプは情報の取捨選択が合否を分けます。限られた枠内で要素を詰め込むためのテクニックを解説します。
パターン①の構成・文字数
全体で数行から10行程度の枠であることが多いため、以下の文字数配分を目安にバランスよく配置します。
- 志望動機:約150文字
- 自己PR:約150文字
- 特技・好きな学科:約20文字
文字数が多い場合は構造整理が重要です。伝えたいポイントを絞り、見出しをつけるなどして整理すると、読みやすさが向上します。
■志望動機(150字程度)
150字程度で説得力を持たせるには、以下の構成を意識し、端的にまとめます。
- 結論(この企業を志望する理由を一言で)
- この企業を選んだ理由(なぜこの企業か、他社比較含む)
- 結論の強調(改めて、なぜこの企業でなければならないのか)
志望動機は本来6つの要素から構成されますが、ここでは3つの要素をピックアップして書きます。
▼志望動機を構成する6つの構成要素について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
エントリーシートの志望動機の構成と書き方!周りと差をつけるポイントを元日系大手人事が解説
■自己PR(150字程度)
自己PRも同様に、以下の流れで簡潔かつインパクトのある内容にします。
- 結論(強みを一言で)
- 行動(強みを活かしてどう取り組んだか)
- 実績(成果を数値や事実で裏付け)
- 仕事への活用(強みを企業でどう活かすか)
どのような困難に直面し、どう乗り越えたかというプロセスを示すと、成長性や人柄が伝わります。「改善した」「周囲を巻き込んだ」といった具体的な行動の事実を入れることがポイントです。
■特技or好きな学科(1行)
スペースが限られるため、箇条書きや短い一文で記載します。単語だけで終わらせず、具体性を1つ加えて印象に残るものにしましょう。
-
例
- 読書(月5冊、推理小説中心)
- サッカー観戦(Jリーグを毎試合チェック)
単に「サークル活動」とするのではなく、具体的な役割や規模感を添えると、面接での会話のきっかけになります。
パターン①の書き方のコツ
限られたスペースに複数項目を詰め込むため、以下のテクニックを使って読みやすさを確保しましょう。
各項目のバランスを意識する(志望動機・自己PRは同程度の分量)
志望動機と自己PRは、評価の両輪です。どちらか一方が極端に長いと、アピール不足と捉えられかねません。目安として、志望動機と自己PRは同程度の分量(各150字前後)で記述し、残りのスペースに特技などを記載するとバランスが整います。文字数を有効活用し、無駄な修飾語を省いて密度の高い文章を目指しましょう。
項目ごとに改行し、見やすくレイアウトする
複数要素が詰まった欄であるため、改行なしで書き連ねると可読性が下がります。項目ごとに見出しをつけたり改行を入れたりして、物理的にスペースを分けることで、視認性が高まります。並列構造の内容であれば箇条書きを用いることで、整理された印象を与えられます。
特技・好きな学科は「一言+具体的な補足」で印象を残す
特技欄は単なるデータ記入欄ではなく、人柄(パーソナリティ)を伝える好機です。「特になし」や「空欄」は避けましょう。「読書」であればジャンル、「スポーツ」であれば実績や関わり方を記載します。「恩返しとして運営を担当した」といった思いや背景を一言添えるだけでも、価値観が伝わり、面接官の記憶に残りやすくなります。
【パターン②】「志望動機」だけの欄の書き方
成田さんが人事目線で重視するのは、広いスペースを活かした論理構成です。単なる理由の列挙に終わらせず、採用担当者を納得させるためのストーリー作りが重要です。
パターン②の構成・文字数
以下の5つの要素を組み込むことで、論理的で説得力のある志望動機になります。
- 結論(この企業を志望する理由を一言で)
- 将来像(どんなキャリアを目指しているか)
- この業界を選んだ理由(なぜこの業界か?他業界比較含む)
- この企業を選んだ理由(なぜこの企業か?他社比較含む)
- 結論の強調(改めて、なぜこの企業でなければならないのか)
文字数は300文字程度が目安となります。企業を選んだ理由だけでなく、将来像や業界を選んだ理由にも触れるようにしましょう。
パターン②の書き方のコツ
志望動機だけの欄では、具体性が評価の分かれ目となります。抽象的な言葉だけでは、他の応募者と差別化できません。
定量的に書く
エピソードや実績には、可能な限り数字を用います。数字は客観的な指標となり、誰が読んでも同じイメージを共有できるためです。「多くの」ではなく「150個以上の」、「効率化した」ではなく「月5時間削減した」と記述します。これにより、行動の量や成果のインパクトが具体的に伝わります。
他社にはない企業の強みに言及する
なぜ競合他社ではなく、うちなのかという問いに答えるには、その企業固有の強みに触れる必要があります。一般的な専門性だけでなく、具体的な取り組みや戦略を挙げることで、企業研究の深さをアピールできます。その会社の構造的な特徴に触れるのも有効です。鋭く企業の核心を突きましょう。
原体験を具体的に述べる
志望動機に説得力を持たせるのは、自身の原体験です。借り物の言葉ではなく、実体験に基づいた動機は強い共感を生みます。過去の具体的なエピソード(原体験)と現在の志望動機をリンクさせます。これにより、なぜこの業界・職種なのかという根拠が明確になります。
履歴書の志望動機欄の例文
成田さんが実際に学生を支援する中で見えてきた、評価される履歴書の具体例を紹介します。志望動機欄の形式に合わせて参考にしてください。
【パターン①】志望動機・自己PR・特技をまとめて書く例文
【志望動機】
ITの力で業務効率化を実現し、働く人の負担を減らしたいと考え貴社を志望します。飲食店アルバイトでタブレット注文導入により業務が劇的に改善した経験から、システム導入の効果に感動しました。顧客に寄り添い、現場目線でのシステム開発を行う貴社で、利用者に喜ばれるエンジニアになりたいです。
【自己PR】
私の強みは「現状をより良くする提案力」です。アルバイト先のカフェでは、新人教育の遅れが課題でした。そこで、写真付きのマニュアルを自主的に作成し、業務フローを統一しました。結果、習得期間が1ヶ月から2週間に短縮されました。この課題発見力と行動力を活かし、貴社の業務でも貢献したいです。
【特技】
カフェ巡り(週に3店舗巡り、内装や接客の違いを研究しています)
【パターン②】志望動機だけを書く例文
「IT技術で働く環境を改善し、人手不足の解消に貢献したい」と考え、貴社を志望します。きっかけは飲食店のアルバイト経験です。当初は注文聞きや配膳に追われ、接客がおろそかになっていました。しかし、タブレット注文システムが導入されたことで業務負担が減り、お客様との会話に時間を使えるようになりました。この経験から、ITは業務効率化だけでなく、サービスの質も向上させると実感しました。中でも貴社は、中小企業向けの業務支援システムに特化し、導入後のサポートも手厚い点に魅力を感じています。単にシステムを作るだけでなく、現場の使いやすさを第一に考える貴社の姿勢に共感しました。入社後は、アルバイトで培った「現場目線」を活かし、顧客の課題に寄り添ったシステム開発に携わりたいです。
履歴書の志望動機欄を書くときの注意点
多くの就活生を見てきた成田さんが警鐘を鳴らす、よくある失敗例と対策を解説します。独りよがりな文章にならないよう、客観的な視点を持ちましょう。
第三者に添削してもらう
自分では論理の抜けや説明不足に気づきにくいため、第三者に見てもらうことが大切です。特に就活のプロに添削してもらうことで、「課題→行動→結果」のつながりが適切か、読み手に伝わる表現になっているかを客観的に確認できます。
結論ファーストで書く
冒頭に結論を置くことで、読み手が短時間で内容を理解しやすくなります。まず「貴社を志望する理由」や「私の強みは〜です」と示し、続けて根拠やエピソードを述べることで、文章全体が整理され、説得力も増します。
待遇・条件面だけを志望理由にしない
給与や福利厚生だけを理由にすると、志望度が低い印象を与えやすいです。志望動機欄では、業務内容への興味や将来のキャリア観を中心に記載することが大切です。待遇面に触れる場合は、あくまで「成長できる環境だから」といった補足的な位置づけに留めます。
求める人物像に合致させる
企業ごとに求める人物像は異なるため、企業研究を行い、自身の経験の中からその価値観に合うエピソードを選んで書くことが重要です。企業が重視する姿勢(例:誠実さ・挑戦心・協働力など)と結びつけることで、「自社で活躍できる人材だ」と感じてもらいやすくなります。
最低8割以上は埋めつつ、枠からはみ出さない
志望動機欄の空白が多いと、意欲不足と捉えられる可能性があります。そのため、最低でも枠の8割は埋めるようにします。文字数が足りない場合は、行動の背景や具体的な取り組みを補足すると内容が濃くなります。ただし、無理に文字を詰めたり枠を超えたりすると読みづらくなるため、適切なバランスを意識します。
よくある質問・FAQ
就活のサポーターとしてよく聞かれる質問や、en-courage利用者へのインタビューで出てきた疑問への回答をご紹介します。
書き出しはどう書けばいい?
書き出しは文章全体の印象を決めるため悩みやすい部分です。まずは「結論(志望理由)」を一言で示し、その後に背景を補足する形にするとまとまりやすくなります。
また、自分では最適な書き出しが判断しにくいこともあるため、就活エージェントなど第三者の視点を取り入れると、自分の強みがより伝わる表現を見つけやすくなります。
締めくくりはどう書けばいい?
締めくくりは志望動機の「余韻」をつくる部分であり、読み手に前向きな印象を残すことが重要です。
「入社後にどう貢献したいか」を1文で述べると自然な締め方になります。企業によって好まれるトーンも異なるため、迷った場合は就活エージェントに意見を聞くと、企業研究と合わせて適した表現を見つけやすくなります。
▼志望動機の書き出し・締めくくりについて、詳細は以下の記事で解説しています。
【例文10選】志望動機は書き出しと締めくくりが重要!「受かる書き方」の鉄則を元人事が解説
面接で深掘りされたらどう答えればいい?
深掘り質問には、結論→理由→具体例の順で答えると整理された印象になります。
ひとりで練習するより、他者と会話しながら整理した方が論理の抜けに気づきやすいため、就活エージェントの模擬面接などを活用すると、回答の流れや表現をブラッシュアップしやすくなります。
▼面接での志望動機の答え方について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
【長さ別の例文付き】面接での志望動機の「評価される話し方」を元人事が解説
志望動機が思いつかないときは?
志望動機が浮かばないのは、自己分析や企業研究がまだ整理しきれていないサインです。
「なぜ働きたいのか」「どんな価値観を大切にしたいか」を誰かと話しながら深掘ると、意外な強みや興味が見えてきます。就活エージェントに相談すると、対話を通じて自分では気づけなかった視点をもらいやすく、方向性をつかむきっかけになります。
▼志望動機が思いつかないときは、以下の記事もご覧ください。
「志望動機が思いつかない」を解決!原因別の対処法を元日系大手人事が解説
監修:成田 駿
元日系大手人事/就活サポーター
日系大手事業会社で最年少部長に就任し、新卒採用に5年以上従事。戦略設計からイベント企画、選考フロー、研修まで新卒採用の入口から出口までを幅広く担当し、延べ3,000名以上の学生と接点を持つ。人事業務以外でも累計2,000名以上の就活生を個別に支援し、大手・外資・メガベンチャーなど多様な企業への内定実績を誇る。
協力:NPO法人en-courage
全国約120の大学に支部を展開し、就活生を対象としたキャリア教育支援を行うNPO法人。独自にイベントやメディアを多数運営し、年間2,500件以上のセミナーを開催。企業と学生の間に年間約80万回の接点を創出するなど、国内最大級の規模で活動している。すべての就活生が本質的なキャリアを通じて人生を最大化できるよう、個別支援やコミュニティづくりを通じたサポートを目指している。