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地方公務員インタビュー 【東京都庁勤務】若手職員のリアル

本記事では、東京都庁ではたらく先輩にインタビューをおこないました。 インタビューイーは、学生時代に入院生活や留年を経験し、民間企業への就活に苦戦したそう。そこから、地方公務員を目指し、入庁するにいたった経緯を詳しくお聞きします。 若手公務員が本音で語る、仕事の実態・公務員試験の対策法も満載です!

■留年3回、入院生活。ハードモードな民間就活を経て、公務員志望に

――まず、村井さんが公務員を目指したきっかけについてお教えいただけますか?

きっかけは、民間企業への就活は難しそうだと思ったことでした。

私の経歴についてかんたんにお話ししますね。 私は、1浪で慶應義塾大学に入学したのですが、学生生活を謳歌した結果、3回留年したんです。 また、生まれつきの病気が在学中に悪化し、入院生活も経験しました。

――なんと。それは大変でしたね......。

先にこの話をしたのは、持病があって、浪人や留年をくり返しても、地方公務員として無事にはたらいていることを、お伝えしたいからです。

入院や留年をした就活生は、周りと比べるととんでもなく不安だと思います。 でも、同じような境遇の私が、公務員になり都庁に就職できたことは大きな励みになるのではと思うんです。

――では村井さんは、はじめは地方公務員ではなく民間志望だったのですか?

4年生2回目の春、それまで将来と向き合ってこなかった私も、このままではまずいと思いはじめ、民間企業への就活をやってみました。

しかし、もともとやる気があったわけでもなく、内定をもらうどころか、1次面接をたまに突破できる程度で、全滅状態でした。

それで民間はあきらめ、学歴に寛容だと聞く公務員を意識しはじめました。

ほんとうは、適正や待遇で就職先を決める人が多いのでしょうが、私の場合は、もはや公務員試験を受験するしかない状況だったんです。

――国家公務員と、地方公務員では迷いましたか?

東京に永住したかったので、地方公務員として都の自治体ではたらこうと思いました。 国家公務員は転勤がある職種が多いので、志望度は高くありませんでしたね。

――都の自治体のなかでも、都庁を選択したのはなぜですか?

東京都の公務員試験を受ける場合、日程の都合上、「都庁職員」か「特別区職員」の二択になります。 特別区というのは、品川区とか港区のような23区のことですね。

地方公務員のなかでも都庁職員を選んだ理由は、規模や知名度が圧倒的だったからです。都庁に入れば「都庁マン」「エリート」みたいな目で見てもらえるかなという期待もありました(笑)。

■デスクワークばかりでない! 都庁職員の仕事

――村井さんは6年ほど都庁ではたらかれていますね。現在は、どんなお仕事をしていますか?

東京都が課税する税金の、課税部門で働いています。

地方公務員としての主な業務は、税金に関する法律や条令とにらめっこしながら、解釈や事例への適用を議論することです。 都民が、状況に応じた適切な納税がおこなえるように、調整をくりかえします。

また、庁内のルールづくりを担うこともあります。調査や関係部署との調整をくりかえし、法令や裁判例にあてはめて、適切な通達が出せるようにチェックしています。

――とくに若手職員は、どんな業務を担うことが多いですか?

部署内のルーティンワーク......たとえば、同じ曜日に同じ場所に行って書類をもらうとか、決まった時間帯に報告書をあげる、というような仕事が多いと思います。

私がいた部署では、申請・申告に関する事務処理が頻繁にありました。 毎日提出される申請書や添付書類に、記入漏れや足りない書類がないかをチェックします。同時に、その申請書への対応について、上司に稟議書を提出して問題ないか承認を得ます。

承認が取れたら、申請内容を実施できます。最後に、申請者に対して決定事項を知らせる文書を作成し、送付するまでが主な流れです。

また、部署の職員みんなの残業時間をまとめたり、配布物を配ったりという庶務も多いですね。相談などで来庁した、都民や業者の方の対応をすることもよくありますよ。

――都庁でも、窓口業務が結構あるんですか?

私もはじめは、窓口業務は区役所がメインで、都庁では庁内調整や、国や市区町村との仕事が多いのだと思っていました。

しかし、都庁も若手のうちは窓口業務が多いです。1~4年目までは毎日、通常業務とあわせて窓口に出ていましたね。

また、地方公務員といえばデスクワークのイメージが強いかもしれませんが、現場に直接出向くこともよくあるんですよ。

――現場では、どんなことをするんですか?

たとえば、私が所属する部署では、課税対象の不動産を実際に見に行ったり、所有者の立ち合いのもとで物件の調査をおこなったりすることもあります。

また、税金を払ってくれない方の家に行って納税交渉や捜索をするなど、本当にいろいろな業務があります。

――地方公務員としてはたらくうえで、やりがいを感じるのはどんなときでしょうか?

月並みですが、地域の方たちの役に立てたとき、感謝の言葉をいただけたときは、とても嬉しいです。

また、法案や条文を照らし合わせる細かな作業も、昔から勉強は好きだったので、自分に合っていると感じます。 作業中はかなりしんどいですが、無事決済されたときには、毎度大きな達成感を覚えますね。

■「9時から5時まで」はほんとう? 公務員の待遇のリアル

――労働時間はどうですか? 残業も多いのでしょうか?

よく、公務員の労働時間は「9時から5時まで」といわれますが、必ずしも本当ではないですね。同じ公務員でも部署によってまちまちで、残業が多いところや、夜勤が必要なところもあります。

私の場合、1~4年目は都税事務所という出先機関ではたらいていました。 税金の課税や徴収をおこなう事務所ですが、月の残業時間が10時間を超えることはまれでした。労働時間も「9時から5時まで」に近く、ライフワークバランスが取れていたと思います。

5年目に本庁の課税課に異動して、業務内容が格段に複雑になって忙しくなりました。最近は、毎日2〜4時間の残業があたりまえです。 休日も資料を読んだり、アイデアを練ったりと、仕事が頭から離れない状態ですね。

――有給など、休みはきちんと取れますか?

職場の文化として、きちんと有給を消化することをすすめているので、休みは取りやすいと思います。

ただ、自分の業務が終わっていない状態ではなかなか休みづらくて。 いまの部署は、本庁のなかでも忙しいほうなので、最近はあまり休暇を取れていませんね。

――配属はどのように決まるのでしょうか?

上司との面談や書類上で、「異動を希望する部署」や「今後やりたい職種・分野」などを伝えますが、希望どおりになることはなかなかないと思います。 通常2〜3年で異動があり、想像もしていない部署に配属されることもしばしばです。

ちなみに優秀な職員ほど、多忙だったり、激務だったりする部署に放り込まれる傾向があるように思います。

――給与についてはどう思いますか?

地方公務員のなかでも、都庁職員の給与はトータルで見るなら、良くもなく悪くもなくといったところだと思います。

若手のうちは正直安いです。残業代などで稼がないかぎり、東京でひとり暮らしをするのも、こころもとない額だと感じます。

しかし、勤続年数や昇任によって、着実に給与が上がっていきます。中堅以降の職員の年収は、それなりの額になりますね。

――職場の雰囲気はどうですか?

明るく穏やかで、とてもはたらきやすい環境です。 真面目で仕事熱心な人が多く、変わった人や意地の悪い人は少ないと感じますね。

地方公務員のなかでもとくに、都庁の職員はきちんとした人が多く、頭がよくてコミュニケーション能力の高い人が多いので、たまに自信を無くすくらいです......(笑)。

■意外なギャップが多かった。 公務員になって知った、大きなメリット

――公務員に向いているのは、どんな人だと感じますか?

公務員とひとくちにいっても、いろいろな業務がありますし、異動も多いです。 定期的に環境が変わるので、実は飽きっぽい人にも向いていると思います。

また、配属先では、これまでの知識がまったく役に立たないことも多いです。それでも、新しいことを一から学び直せるような、知的好奇心が強い人は活躍しています。

――公務員というと、マニュアルに沿った業務が多いイメージなので、変化を好む人には合わないように思っていました。いろいろな仕事を経験できるのは意外ですね。

公務員はマニュアル重視で、融通が利かないのは事実です。 ただ、これにはきちんとした理由があって。状況や相手によって対応を変えると、適法性や公平性を欠くことになるからなんですね。

これを損なわないように、なんとか柔軟な対応ができないかと、職員たちは日々頭を悩ませています。 それでもやはり公務員は組織として杓子定規な面が多いので、臨機応変さや機転を好む人はストレスを感じるかもしれません。

――公務員になって、良かったと思うことはなんですか?

一番良かったことは、将来の不安がとても少なくなったことです。 大きな問題を起こしたり、罪を犯したりしないかぎり、職を失うことはありません。 危機感や向上心がないといわれるかもしれませんが、これは間違いなく公務員であることの大きなメリットです。

また、「社会的な信用」も非常に大きいと感じます。 たとえば家を買うときやカードを作るとき、職業がマイナスになることは絶対にありません。結婚相手のご両親に挨拶するときも、胸を張って仕事を説明できるでしょう。

民間企業は、利益の追求が第一ですが、公務員はすべての国民のために平等に尽くす仕事です。大義のある業務ができることは公務員になって良かったと感じるひとつですね。

■公務員試験半年前でも間に合う! 絶対に合格するための極意とは?

――試験準備をはじめたのはいつ頃でしたか?

公務員を視野に入れたのが11月頃だったんですが、この年度の試験はほぼ終了していて。 翌年の試験を受験しようと考えて、12月から本格的に情報収集をはじめました。情報源はほぼすべて、ネットと書籍でした。

地方公務員、そして都庁職員を第1志望にしたのは、翌年の1月でした。 私が受験した年度は、5月が1次試験だったので、試験の準備期間は半年弱ほどでしたね。

――公務員試験を受けるにあたり、インターンやOB訪問などはおこないましたか?

しませんでした。ちなみに、都庁ではインターンやOB訪問による優遇措置はとくにないと思います。

ほかの地方自治体の内情はわかりませんが、大きな自治体ほど地方公務員の採用は実力主義だと聞きますね。

――公務員試験の対策は、どのようにしましたか?

予備校には通わず、独学を選びました。 ペーパーテストは得意だったこと、法律などの試験科目は大学の専攻で学んでいたこと、そして親にこれ以上迷惑はかけられないと思ったことが理由です。

――具体的な勉強方法についてもお聞きしたいです。

市販の問題集を教養・専門科目を合わせて10冊程、内容が頭に入るまで繰り返しました。1日10時間前後、とにかくストイックに勉強したことを覚えています。

また、後述する地方公務員試験の「専門記述」対策として、各科目の主要論点を80テーマ程まとめたノートを自作し、毎日復習して頭に叩き込み、何も見ずとも文章で人に説明できるよう仕上げました。これが非常に効いたと思います。

わからないところは、YouTubeの解説動画なども参考にしましたね。「公務員試験対策」などと調べると、いろいろな試験対策動画があがっています。

――実際の公務員試験はどうでしたか? 難易度など、感想を教えてください。

公務員試験は併願できるので、私が受験したのは、「都庁職員」「裁判所事務官」「国家一般職職員」の3つでした。

試験の内訳は、都庁職員が筆記1回と面接2回でした。 過去問をかなり研究し、出題予想もしていたため、本試験の問題はほぼイメージどおりで、かなり手応えはありました。 裁判所事務官は筆記試験に合格しましたが、都庁が第一志望だったので面接は受けていません。

......ただ実は、国家一般職の筆記試験が不合格だったんです。国家一般職は都庁職員よりも難易度が低いと聞いていたので焦りましたね。

――それは不安になりますね。国家一般職と都庁職員の試験では、どのような違いがあるのでしょうか?

国家一般職の試験は「択一式」が中心ですが、都庁職員の専門試験には「専門記述」と呼ばれる独特な問題があります。

たとえば「財産権の保障について説明せよ」というようなシンプルな問題文が、憲法・民法・行政法などのジャンル別に全10題出題され、そのうち3題を選んで解答するんです。

解答は、1題につき750~800字程度の文章にまとめるのですが、事前にしっかり対策しないと太刀打ちできません。

私は、都庁の形式しか対策していなかったので、択一式を中心とした問題は解きづらかったのを覚えています。 試験内容の対策のみならず、出題形式に慣れておくことも重要だと感じました。

――面接試験は具体的にはどのようなものでしたか?

公務員試験の採用面接は、1次と2次の計2回でした。現在は、1回のみになっているようですね。

面接官は1次・2次ともに3名おり、20~30分程度だったと思います。ちなみに、面接官を務めるのは課長などの管理職クラスのようです。

1分間程度の自己PRや志望動機からはじまり、学生時代の経験や、やりたい仕事は何かなどの質問が主でした。 2次面接では、「ストレスを感じることはあるか」「仕事が非常に忙しくなるかもしれないが大丈夫か」なども聞かれましたね。

1次・2次ともに内容は大きく変わりませんでしたが、1次は人物像全体を見られ、2次は実際に業務を任せて問題ないかを見られていたように思います。

――面接の対策はどのようにするのが良いでしょうか?

基本的には、きちんとした受け答えができれば合格すると思います。

面接にあたっては、かんたんな自己分析くらいしかしていませんでした。 私が受験した年の都庁職員試験の倍率は1.5倍と高くはなく、運が良かったのもあると思いますが。

――合格後は、どのような流れで採用が確定するのですか?

たしか、郵便で合格通知が届き、その後事務連絡などのやり取りをし、各種書類を提出するという流れだったと思います。

なお、地方公務員試験は「最終合格=採用」ではありません。 自治体によって多少の差があると思いますが、都庁では試験の合格発表後にさらに面談があり、ここで内定が出れば、無事採用となります。

――面談では何を聞かれるのですか?

面談といっても、ふるいにかけるようなものではなく、試験の合格者に対して実際に入庁するかどうかの意思確認をするものです。

はっきりと受け答えをし、入庁の意思を伝えれば、まず間違いなく内定がもらえ、採用されることになります。

......余談ですが、「大学は卒業できそうですか?」と聞かれ、私は「はい! がんばって単位を取って卒業します!」と答えて、無事内定をもらえたんですが......。 就職が決まったとたん、大学に行くのが億劫になり、結局中退してしまいました(笑)。

――ええ!(笑)  大学を中退したことで、採用に問題はなかったのですか?

中退による内定取り消しもないですし、給与などの待遇に差も出ません。

私が受けた試験は「大卒程度枠」でしたが、大学卒業が必須条件ではないんです。

都庁には、大学を卒業していない職員もいますし、出身校もさまざまです。学歴は関係ないというのは事実だと思います。

――公務員試験に合格するために必要だと思うことを、教えてください。

試験の準備期間は、長くつらいものになります。 励まし合いや情報交換ができる、受験仲間を見つけることが大切だと思います。

正直、試験の難易度だけでいえば、独学でも合格できると思います。でも、ひとりで勉強していると、精神的にとんでもなく参ってしまうんですよ。 私は民間就職で苦戦したこともあり、合格通知をもらうまで、気が気じゃありませんでした。

そういうときに、同じ目標を持つ友人がいると、本当に気持ちが楽になります。 公務員試験の予備校に通うのはおすすめですし、いまはSNSなどでも受験仲間を見つけやすいと思います。

公務員試験は、自分のメンタルとの持久戦でもあります。本番試験を最善の状態で受けられるよう、時には息抜きや休息も必要です。

――最後に、就活生にメッセージをお願いします。

就活では、長所や短所、思考、得意なことなどを考えますよね。 でも、自己分析をするうちに、だんだん自分がわからなくなることもあると思います。 もし迷ったら、シンプルに「好きか・嫌いか」を軸にすることをおすすめします。

たとえば私の仕事では、法令や通達をはじめとした、堅い文章をたくさん読む機会が多いです。 はじめは不得手でも、慣れればできるようにはなります。しかし、文章を読むのが嫌いな人にとっては、ほんとうにつらい業務になると思います。

幸い私はこういう作業が好きなので、天職だと感じています。 「好き」と思える仕事かどうかは、はたらくうえでかなり重要なことだと思います。

また、はじめにもお伝えしたように、私は数度の留年や入院を経て、就職できないのでは? とかなり追い詰められていました。 でも、いまは都庁で楽しくはたらいています。だから、みなさんも、絶対に大丈夫ですよ。

もし、私と同じような境遇で民間の就活に苦戦していたり、公務員や都庁に興味を持ったり、あるいは好きな仕事かもと感じていただけたら、ぜひ公務員試験を受けてください。 応援しています!

――村井さん、ありがとうございました!