~就活に潜む落とし穴・成長編~
みなさん、こんにちは!
さて、今回で連載三回目、"就活に潜む落とし穴"
エンカレッジ京大編集部ライター"I"です。
皆さんは、就職活動を始めてどれくらいになりますでしょうか? 一か月、二か月、半年、一年以上、人によって様々でしょう。 そんな皆さん誰もが、耳にタコができるほど聞いたであろうこのワード、"成長"。
様々な企業の説明会や内定者の話の随所で、"成長"の重要さを聞き、就職活動以前では、"自己成長"なんて考えたこともなかった学生たちが"成長"を求めて企業選びをするようになります。
そんな"成長"という言葉にも様々な罠が潜んでいます。
今回は、コンサル業界、商社業界、ベンチャー界隈、と"成長"を求める学生が溢れかえる戦場を潜り抜けてきた(笑)、元"圧倒的成長系就活生"たる、私"I"が、成長に潜む罠を、実例を交えて紹介したいと思います。
ケース1:とりあえず“成長環境”系就活生
今回取り上げるのは、国立大学のI大学から中規模のベンチャーに進んだ、社会人3年目のAさん。
Aさんが就職活動を始めたのは、4月。
そして、夏インターン直後の10月には内定を勝ち取り、就職先をきめるという、所謂"優秀就活生"でした。
就職活動を始めたAさんは、様々な企業の説明会や、セミナーに参加する中で、"日本の終身雇用が終わる"、"これからは裁量権をもって成長することが重要"という話を聞き、"若いうちから裁量権をもって働くことができる"、"潰しの効くスキルを身に着けることができる"、の二つを重視して就職活動を進めていました。
そんなAさんが志望したのは、"コンサルティング業界"、"投資銀行業界"、"ベンチャー業界"。
この3業界ならば、若い内から成長することができ、そこで修業したのちには素晴らしいキャリアが待っていると疑いませんでした。
そして、就職活動を進めるうちに、インターンに行ったベンチャー企業の方から、"コンサルの仕事は、実行をするわけではないから、事業推進力や事業創出能力は身につかない"、"コンサルは大量採用しているから市場価値が身につかない"といった話を聞き、徐々に事業会社に傾いていきました。
そして、就職活動を始めて約半年。内定をもらったこともあり、当時急成長中であった売上200億円ほどのベンチャー企業に入社を決めました。
決め手は、"成長環境であること"。その会社であれば、ビジネスマンとして成長し、ネクストキャリアでは高年収を得る転職ができるという思いがAさんを入社へと突き動かしました。
それでは、現在Aさんは何をしているのでしょうか?
彼は今、カタログ工場の派遣社員として働いています。 新卒で入社した会社は二年でやめ、現在は派遣で生活をつなぐ毎日です。退社理由は躁鬱。
自信が成果を上げることができないことから、精神的に追いつめられ、また、残業地獄に陥ってしまったのです。
結局彼は成長するどころか、今まで積み上げてきた高学歴のキャリアを棒に振ることになりました。
では、彼の選択のどこに落とし穴はあったのでしょうか?
それは"彼が自身の能力を見誤ったこと"と"成長環境への過信"にあります。
彼は、企業選びの際に、"成長"を求めるあまり、"自身に適性のある職場であるか"ということを軽視してしまっていました。 彼はいわゆる、優等生的エリート。人に言われたことを的確にこなす能力は極めて優れていたものの、自分自身でやるべきことを見出して動くという働き方は得意ではありませんでした。
そんな彼にとって、ベンチャー企業の"裁量権がある環境"は苦痛でしかなかったのです。
また、彼は"ベンチャー企業=成長環境"であるととらえていました。しかし、もちろんそんなことはありません。
"ベンチャー企業=そこで生き残った人が結果的に成長できる環境"です。これは、ベンチャー企業のみならず、どんな業種・規模でも変わらない真実でしょう。
自身の努力・能力ではなく、会社に成長の源を求めていた彼が生き残れないのは当然でした。
こうして、彼は"成長"の落とし穴にはまってしまったのです。
彼の失敗から学ぶべきことは一つ。
"成長"なんて曖昧な言葉に踊らされている時点で、"成長"なんてありえないということくらいでしょう、、
ケース2:“成長とワークライフバランスの両立”系就活生
今回取り上げるのは、某国立T大学出身のBさん。
超高偏差値進学校出身で、部活動でも活躍してきた彼はいわゆる万能エリート。
競争意識と能力が非常に高い彼は、合同説明会で様々な企業の説明会を聞くうちに、戦略コンサルと外資系金融が、いわゆる"優秀"な人がいく業界であり、なおかつ入社すれば"成長"して一流のキャリアを歩めると聞き、志望するようになりました。
しかし、彼が戦略コンサルティング業界や外資系金融業界を志望するうえで一番の懸念は、その働き方の厳しさ。
ネットや友人の話では、戦略コンサルティング業界や外資系金融業界では、非常な長時間労働が常態であり、また、解雇も日常茶飯事とされており、その点を懸念としていました。
しかし、実際に説明会などで出会う社員の方々は皆穏やかでフランク。また、近年は働き方改革で業務時間が短縮されているとも聞きました。
社員の方々の様子や、話の内容からはその過酷な労働の様子はうかがえず、彼の激務への不安は次第に薄れていきました。
そうして、結局、戦略コンサルティング業界と外資系金融業界に絞って受験した彼は、その高い能力で複数社から内定を得ることができ、結局、戦略コンサルティングファームのA社へ進むことを決めました。
A社は、有給消化率も高く、メリハリの着いた働き方をしているとも聞いており、ある程度プライベートを大事にしたいと考えていた彼には魅力的に覚えたのです。
彼は、今現在2年目アソシエイト。M&Aディールに携わる彼の生活は、朝7時の起床から始まり、午前3時に帰宅で終わります。
そして業務時間中は、厳しい上司からのプレッシャーにさらされます。 先月の残業時間は250時間。これでも、"マシになった方"ということ。
同期の3割以上は退職し、体力的な限界を感じる彼自身も退職を検討していますが、プライドの高い彼が納得できる転職先は見つかっておらず、中々踏み切れません。
彼は、"激務"の本当の恐ろしさを入社してやっと理解したのでした。
これが、ケース2"成長とワークバランスの両立"の落とし穴です。
"成長"という言葉は非常に魅力的です。楽して成長することができればどんなに素晴らしいことでしょうか。
そして、就活市場では、そんな"楽して、成長"したい就活生へ甘い言葉をささやく企業であふれています。
しかし、努力なしに成長することなどありえません。
どんな場合においても、成長を規定するのは"才能"、"努力の質"、"努力の量"です。
"圧倒的に成長できる仕事"というのは、"才能"、"努力の質"、"努力の量"、のすべてが非常に高次元に求められるのです。
"成長"と"ワークライフバランス"は両立できるものではありません。
自分自身に問いかけ、"自分がどれだけ成長したいのか"、"自分はどの程度プライベートを大事にしたいのか"を見極めたうえで、自分の求める"成長"を得られる選択をすることが重要なのではないでしょうか。
最後に
さて、いかがだったでしょうか?
キャリア選択に様々な罠があります。
上でお見せしたのはほんの一例にすぎません。
こうした罠にかからぬよう、「自らのキャリア選択」を批判的に検討し続けることが大切です。就活というと「どうやって選考に受かるか」ばかりに目が向きがちですが、それと同じかそれ以上に、「どういった人生を目指すか」を考えることは重要です。
せっかくの就活という、「自身と社会を向き合う」機会。 足を動かし、ベストな選択を追求してみてください。
本日はお付き合いいただきありがとうございました。
次回をお楽しみに!
エンカレッジ京大編集部"I"