公開日:
最終更新日:

就活生必須のフレームワーク 川上思考と川下思考とは【細谷 功】

細谷 功氏、連載記事第2回。今回は、就職活動において非常に重要である「企業選び」がテーマです。皆さんは、どんな軸、切り口で企業を選んでいるでしょうか?今回は、「川上」「川下」というフレームワークによる企業選びの新しい考え方を提案します。

個人の特性や志向に大きく関わる、「川上」「川下」という視点

今回は、皆さんが就職活動を進める上で、あるいは普段の学生生活において、様々なものを見る視点として重要なものの見方を紹介します。

これは本連載において根底に流れている視点でもありますので、その点も意識しながら読者の皆さんとこの考え方を共有しておきたいと思います。

就職先を考える上でまず始めに考えるのはどの業界にするか、どんな職種が良いか、勤務地はどこが良いか、あるいは特定の会社名などが挙げられます。こういったものが、皆さんが選択の際に想定する「切り口」の一部ということになるでしょう。

これらのうち「職種」以外については実はほとんど仕事の内容とは相関しないために、皆さんの個人的な特性(何に向いているか)や志向(どんなことをやりたいか)とはあまり関係がない視点です。

ここで今回解説する川上→川下という視点は、個人的な特性や志向に大きく関連するものの見方です。仕事や会社の特性を見る上でこの視点を持っていると大きく役に立つのではないかと思い、今回その解説をします。

上流→下流という言い方がされる時もありますが、上流下流と言うと、「上流階級」や「下流の貧困層」など、別の文脈で用いられることもあって誤解を招く可能性があるために「川上」「川下」という言葉を用います。

「川上」の環境と「川下」の環境

では、この言葉の意味する所からまず解説しましょう。これは文字どおり「川の流れ」からきたものです。

当たり前ですが、仕事というものには、始まりと終わりがあります。どんな仕事でも始めは何もなかった状態からおぼろげながら「大体こんなことをやろう」という曖昧なコンセプトのようなものが出来上がり、それを具体化し、目に見えるものにしていくというプロセスを経てなんらかにの成果につながっていきます。

例えば、学園祭の企画から準備、実行の流れを考えてもらうのがわかりやすいでしょう。この場合、去年と同じことをやるというパターンではなく、一から企画を自分たちで考えるようなことを想定します。

会社で言えば起業されたばかりのスタートアップ企業が川上に属し、伝統的大企業が川下ということになります。

仕事の流れで言えば、学園祭と同様に企画が上流で、その後設計や調達・製造・物流と行って、最後はお金という形で経理が結果をまとめるのが川上→川下の流れです。

建物の建築で言えば、更地にどのような建物を建てるかという「最上流」が建築家の構想であり、徐々に図面が起こされて、詳細の施工図につながっていき、最後は形になっていきます。

このような仕事の流れはまさに川の流れに似ていて、

川上:少量だが急流、尖った岩が多い

に対して、

川下:多量の水だが流れは穏やか、岩より砂が増えてくる

といった違いの構図になります。

あなたに向いているのは「川上」?「川下」?

ここで重要なのは、仕事の性質やそこに求められるスキルや志向も川上と川下ではお互いに180度違うとも言えるほどに異なり、これが仕事選びにも大きく影響すると考えられることです。まずそこでの仕事の性質の違いを下図に示します。

図1

また、そこに求められる価値観やスキルも以下のように対照的に異なるものとなるのです。

図2

ここには大きく個人のスキルや志向が反映されるはずです。どちらが優れている、優れていないということではありません。人によって合う環境、合わない環境があることでしょう。

まずは自分がどちらに向いているかを見極めた上で、冒頭にあげたような「勤務地」「企業名」などの紋切り型の切り口ではなく、全く別の切り口で様々な仕事を眺めてみてはいかがでしょうか。

図1,2は現時点では少し抽象的に見えるかも知れませんが、これからそれらの一つ一つを解説していくための全体像という位置づけで眺めておいて下さい。

次回は手始めに、この考え方を用いて「大企業」「ベンチャー企業」の性質を掘り下げていきます。

前回記事:「勉強ができる」から「仕事ができる」へ 次回記事:川上→川下への会社の変化