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もはや自動車メーカーではない トヨタが目指す「モビリティ社会」

自動車をつくる会社から、モビリティカンパニーへと舵を切ったトヨタ。クルマによってもたらされる価値は、「CASE」と呼ばれる領域の技術革新によって誰も経験したことのないものに生まれ変わりつつある。時代の転換期に、トヨタが目指すモビリティ社会とは?世界を相手に、挑戦を厭わない精鋭たちが今、ここに集結し始めている。

もはや自動車メーカーではない トヨタが目指す「モビリティ社会」って?

Yuki Yamaguchi 山口 勇気

人事部 人材育成室 採用グループ長 2005 年入社 総務・人事本部 国内販売事業部門で販売店収益、車種販促、需給・販売計画に携わる。2020年に人事部へ異動し、2021年より現職。モビリティカンパニーになるための『人づくり』をけん引する。

――豊田社長が「モビリティカンパニーへのフルモデルチェンジ」を宣言されました。

社内では今、どのようなことが起きているのでしょうか?

トヨタ自動車は、今を100年に一度の大変革の時代と捉え、『クルマをつくる会社』から『モビリティ社会をつくる会社』へのフルモデルチェンジに挑戦しています。ビジョンは『可動性を、社会の可能性に変える』。これまで関わることのなかったさまざまな人や企業と手をつなぎ、仲間となり、今よりも地球や社会や人にやさしく、移動の自由と楽しさにあふれたモビリティ社会の創造を目指しています。

フルモデルチェンジを発表した2018年から、大手IT企業と業務提携して新サービスの提供をスタート。

その後も、通信会社をはじめ、異業種や同業の会社との業務提携を行い、実証実験や新しい取り組みに

チャレンジしています。

社内には多様な人材が集結。『新たな感動体験提供に向けたプラットフォームの構築』、『クルマと情報の融合、街と協調するモビリティの開発』、『コネクティッド技術によるクルマの省エネ化、省資源化』、『クルマの健康状態を電子カルテとして見える化する』といったテーマで数多くのプロジェクトが進行中です。

――大きな変革をトップダウンで宣言されて、戸惑いはありませんでしたか?

急激にデジタル化が進む現在では、クルマの概念そのものが変わろうとしています。

私たちのビジネスモデルも変えていかなければなりません。

トヨタ自動車は創業当初から「産業報国―産業を通じて世の中のお役に立つ」ことを目指してきました。

その精神を貫き通すために、世の中の変化やお客さまが求めるものに合わせて変化させていくということなので、納得感はありました。

――現在進行している新しい取り組みやプロジェクトを成功へと導き、ビジョンを実現するために、

どのような人材が必要でしょうか?

モビリティカンパニーにフルモデルチェンジするという宣言を受けて、私たち採用チームが最初に着手したのは、求める人物像の再設定です。

これまでトヨタ自動車は、長年自動車ビジネスを進める中で、自分たち自身がノウハウを持ってビジネスを進めることが多くなっていたのも事実です。しかしながら、これからは答えのない世界に踏み込んでいきます。さまざまな人材や会社と協力しあい、多様なプロフェッショナルたちから知識や情報を得ながら未知の社会づくりに挑戦しなければなりません。そこで、新しい仲間に求めるものは次の2つ。

周りの人たちと手を取りあい、他者のために力を発揮し、「この人となら一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるような『人間力』。そして、「この課題を解決したい」「なんとしてもこれを成し遂げる」という『情熱』です。

私たちのビジョンに共感し、持ち前の『人間力』と『情熱』をエネルギーに変えて、挑戦し続けられる仲間との出会いに期待しています。

――今、トヨタ自動車に入社して得られる価値は何だと思われますか?

100年に一度の大変革期に、仲間と一緒に新しい価値を生み出し、誰も見たことがない未来をつくっていく経験は、今のトヨタ自動車だからこそできること。またどんなにすばらしい技術であっても、普及しなければ

地球規模の改善はおろか、社会課題の解決さえ達成できません。先端研究や先行開発だけでなく、量産開発、生産技術開発、生産ライン設計、製造、品質保証、そして、営業部門や管理部門まで、「幸せの量産」をミッションに皆が協力しながらチャレンジしていけるところも、大きな魅力だと思います。

モビリティカンパニーへの変革 そのカギをにぎるのがソフトウェア

Satoshi Taki 滝 悟志

コネクティッド先行開発部 2021 年中途入社 コネクティッドコース

人々の生活に幸せを届けるクルマづくりを目指して

新卒で入社した大手IT企業でフロントエンドのソフトウェア開発に従事。GAFAが提供するプラットフォーム上での開発は制約に縛られることが多く、窮屈さを感じていました。そんなとき、トヨタ自動車がソフトウェアファーストのクルマづくりを始めると知り、「強いハードウェアを持った会社でソフトウェア開発をしてみたい」という想いがわいてきて、転職を決意しました。

入社後はコネクティッド先行開発部に配属となり、次世代車のコックピットのメーターやナビゲーションなどのUX/UI*開発に携わっています。

現在は、Flutterというフレームワークを用いて、メーター・ナビゲーションなどのフロントエンド開発を行っています。デザインを形にして、ユーザーに価値を感じていただく観点で非常に重要な役割だと理解しています。新しい技術に触れるおもしろさはあるのですが、毎日が試行錯誤の連続。実際につくったものが動いたときは本当に嬉しいです。

トヨタ自動車は今、移動を軸としたモビリティカンパニーへの変革を目指しています。そのカギとなるのが、ソフトウェアファーストのクルマづくり。ソフトウェアが商品価値を左右する重要な要素となるので、大きなやりがいを感じています。開発したソフトを載せたクルマが世の中に出たとき、人々の生活にどんな幸せを届けられるのか想像するだけで楽しいですね。

最高のアウトプットをチームで追求するおもしろさ

世界にインパクトを与える仕事ができること、それはトヨタ自動車のようなグローバル企業だからこそ味わえる醍醐味です。仕事のスタイルも、もちろんグローバル。海外のエンジニアたちとチームを組み、一緒に開発を進めています。

国内のエンジニアも、バックボーンは多種多様。開発スタイル・ハード/ソフト両面を開発する難しさ/おもしろさ・提供する国のルール/ニーズの違いなど、さまざまな気付きがあって、多くのことを学べます。

また、トヨタに入社する前は、歴史が長い会社だけに年功序列のような古い文化が残っているのでは? と思っていましたが、実際は立場を問わずフラットに意見を出し合える風土があり、いい意味でのギャップを感じました。皆が「お互いの意見を聞き、チームで協力して良いものを生み出していこう」という気持ちがあるからこそ、最高のアウトプットを追求できていると感じています。

*UX(ユーザーエクスペリエンス)、UI (ユーザーインターフェース)

従来の方法に固執せず 新しいつくり方を開発して 次世代型電池をスタンダードに

Kazuya Otsu 大津 和也

先行電池開発部 2014 年入社 電池開発コース

車載用の全固体電池の実用化に王手をかける

車載用の全固体電池の量産工法の開発と工程整備に携わっています。全固体電池とは、電流を発生させるために必要な液体である「電解質」を固体にした電池のこと。文字通り全部が固体なので、構造や形状が自由で、液漏れもなく丈夫で長持ち、小さな層を重ねることで小型化・大容量化も可能な、次世代の電池です。全固体電池の工法開発の仕事では、主に電極の塗工工程を担当。電池をつくるには、塗って乾かしてくっつけてという作業を何度も繰り返しますが、そのままの方法で時間がかかってしまい量産できません。新しい工法の開発で電極塗工を高速化して生産性を高めることが私の使命です。また工程整備の仕事では、ボトルネックになっている工程や要素、その他の課題を見つけて改善を行い、少人数・短期間で成果を出せるよう競争力を高めることに注力しています。

トヨタ自動車が車載用の全固体電池を実用化できるかどうかは、量産の工法開発と工程整備、つまり速く低価格で提供できるようになるかどうかにかかっています。実用化ができれば電気自動車の充電時間の短縮と航続距離の延長が可能に。「コンビニで電池を買って交換するだけ」といったことも夢ではありません。

また全固体電池は電気自動車だけでなく、船や飛行機、宇宙空間での活用も可能。いつか世界で全固体電池がスタンダードになったときの達成感は半端ないだろうなと想像して、ワクワクしています。

電池の理想を追求し「移動の未来」づくりに貢献

入社1年目、FC(燃料電池)スタックの一工程を担当していた頃、正月に箱根駅伝でトヨタの燃料電池車MIRAIが伴走しているのをたまたま見て「ちゃんと坂を登れるかな?」とハラハラしながらテレビ画面に釘づけになりました。MIRAIが坂を登りきったときの何とも言えない充実感。「自分もこのすばらしい1台の製品を生み出すことに関わっている」と思うと誇らしくなりました。

このときの思いは、今でも私のモチベーションの源泉です。

クルマのモビリティを追求していくと、「安全な自動運転→電車みたいにインフラの上を走る→道路じゃなくて空中にインフラ→空飛ぶクルマ?」と妄想が止まりません。いずれにしても、そこには究極の電池が必要になるはず。これからも、電池の理想を追求し、「移動の未来」づくりに貢献していきます。

多様化するお客さまニーズに いち早く応えるために 技術を進化させる

Yuri Okada 岡田 侑里

堤工場車体製造技術部 2014 年入社 生産技術・モノづくり開発コース

関わるすべての人が幸せになれる工程計画を

大学では、レーシングカーを製作するサークルに所属。予算を取るところから設計、部品調達、製作まで自分たちで計画運営する経験を通じて、モノづくりの難しさや楽しさを学びました。「社会人になっても、モノづくりを続けたい」と思ったことが当社を志望した理由です。

私の仕事は、ボデーと呼ばれるクルマの骨格部分を製造するための工程を立ち上げること。新しい車種のボデーをどのようにつくっていくか、さまざまな観点から検討し、必要な設備の計画とつくり込みを行い導入します。社内の関係部署だけでなく、多くの協力会社の人たちと相談しながら業務を進めていくため、それぞれの要望や条件を調整する大変さがあります。また、設備を使う人のことを一番に考えなければなりません。安全性はもちろんのこと、作業性やメンテナンスのしやすさにも配慮します。設備が完成したときの、工場の仲間たちからの「ありがとう」は嬉しいですね。完成したクルマがお客さまの手に届いたときに喜んでもらえることを想像して仕事を進めることに大きなやりがいを感じています。

自然と成長を促してくれるそんな環境がトヨタにはある

現在、私は海外の2つの工場の新しいラインをつくるプロジェクトに参加。ボデーのアンダー部分の工程計画を担当しています。責任が重い分、やりがいは大きいです。

入社間もないころ、一つの工程計画を任されました。それは設置するスペースの都合で設備を小型化しなければならず、新たな工法の開発が必要な案件。解決すべき課題がいくつもあって「新人の自分には難しい」と感じたのですが、社内外の多くの方々の力を借りて、無事、必要なタイミングで設備を導入することができました。「今の能力からすると少しチャレンジングかも」と思えるような仕事を任せられて、自然と成長を促してくれる。そんな環境がトヨタ自動車にはあります。

今後も自分ができる領域を広げていって、将来的には新車種の全生産工程を任されるようになりたいです。

トヨタ自動車がモビリティカンパニーへとチェンジするために必要なのは、多様化するお客さまのニーズにいち早く応えること。そのためには、製造技術も進化させていかなければなりません。新たな工法の開発、リードタイムの短縮など、高品質なクルマを速く適性価格でつくるために、これからも挑戦し続けます。

トヨタの競争力の秘密 それは、現地現物での 『KAIZEN』

Mao Isomura 磯村 真央

生産管理部 2007 年入社 生産管理・物流本部

トヨタのものづくりを支え競争力向上を目指す

生産管理部は、トヨタの生産活動の司令塔。その中で私は、要員管理の仕事を担当しています。1台1台の車をお客さまにお届けするためにはその車をつくる製造ラインの人員確保も大切なポイントです。

毎月更新される生産計画に合わせて、国内10工場の製造ラインで働く2万人超の人員計画を人事機能と共に検討して必要な対策につなげたり、翌月の生産計画立案に向けて関係部署にフィードバックしたりします。また、先々の変化を見据えながら、経営目線での競争力強化に向けた改善も行っています。

要員管理の仕事は、数字だけを合わせていく仕事のように思われがちですが、そうではありません。その数字の「1」は、1人1人お名前のあるトヨタ自動車の仲間です。自分の仕事の先にいる1人1人を忘れないようにしながら、会社方針や経営課題とも向き合い、日々チャレンジを続けています。

当社には『現地現物』という考え方があります。実際に現地に足を運び、現物を見て触れて、事実に即した物事の捉え方をしよう、というものです。

私は以前、車の材料の納入管理や製造ラインの生産性管理の仕事に携わっていました。そのときに学んだことは、「1台のクルマをつくるために、仕入先から製造部門までたくさんの人が関わっていること」そして「皆に喜ばれる改善をするために、現地現物で物事を確認し、現場の方から学ぶことの大切さ」です。これらの経験があったからこそ、要員管理の仕事も「人」を意識して進められているのだと思います。

生産管理のプロとして頼られる存在になりたい

生産管理部の役割は、さまざまな状況変化に対応しながらお客さまの大切な1台を確実にお届けすること、

工場と協力しながらトヨタの競争力を高めることだと考えています。常にその目的を意識しながら仕事に臨み、生産管理のプロとして、現場の人たちから頼られる存在になることが私の目標です。

また、私は産育休を2回取得して職場復帰しています。大好きなモノづくりの仕事を続けていられるのは、仕事と育児の両立を支援する制度や職場のサポートのおかげでもあります。これからは、育児しながら働く、介護しながら働くということが、ますます当たり前の時代になってくると思います。仕事に対する姿勢だけではなく、両立者としても後輩たちのお手本になるような人になりたいです。

未来のモビリティを モノづくりでリードする

Takumi Kojima 小島 拓未

モノづくりエンジニアリング部 2016 年入社 生産技術・モノづくり開発コース

アイデアや想いを自分たちの手でモノにするおもしろさ

子どものころからクルマや飛行機が好きで、大学時代は鳥人間コンテストにも参加。「エンジニアになってモノづくりをしたい」と思い、就活中にさまざまなメーカーを研究していく中で、環境や教育制度が充実しているトヨタ自動車を選びました。

私の部署では新型パワートレーンの工法開発から新モビリティの試作開発まで幅広くリアルなモノづくりを支えています。入社5年目からはHEV用新型モータの新設備を考案し、図面を描くところから調整まで担当して完成させました。今ではお客さまのもとに届くクルマを生産しており、街中でその車種を見かけるととても愛着を感じます。

現在の私の仕事はインホイールモータの試作開発で、この業務には新しい挑戦をしたいと自ら手を挙げて異動しました。インホイールモータとはタイヤの内側に動力を仕込むことで無駄なスペースを減らしてクルマの室内を広くしたり、小型モビリティに搭載したりして自在な移動を実現できる新世代の駆動装置で、世界的に量産の実績が少なく、つくり方も定まっていません。培ってきたモノづくりの技術が試されるチャレンジングな仕事で、お客さまの幸せを評価軸にチームで毎日議論し試行錯誤しながらアイデアや想いを形にしている最中です。

世界初の新技術を市場に出すことに貢献したい

トヨタでは先端技術を駆使してモノづくりのスピードを速めています。例えば小型モビリティ開発では3DCADで図面を描き、そのモデルを使ってCAE解析する。生産技術ではVRゴーグルを使って実物ができる前に作業者に操作性などを確認してもらい完成度を向上させる。デジタルだけで分からない部分は3Dプリンタを使って素早く試作してトライ。必要があればAIやマイコンでシステムを構築する。これらすべてを誰もが自分で身につけることができる風土と環境が整っています。

また、若手海外研修制度を利用してポーランドの工場に1年半赴任しました。言葉が通じない中での仕事はかなりタフな研修でしたが、そこでの経験がグローバル展開する設備を設計する上で生かされています。

私の目標は先行開発から量産化まで一気通貫して実現できる技術を身につけることです。スピーディなモノづくりを武器にトヨタが新技術を世界で一番早く市場に出すことに貢献したいです。

すべてのお客さまの笑顔のために 品質分野において新たな 顧客価値の創造に取り組む

Itsuki Sato 佐藤 樹

品質保証部 2018 年入社 カスタマーファーストコース

『トヨタ品質』というブランドを守る仕事

品質保証は、世界中のお客さまに愛され信頼される『トヨタ品質』を守る仕事です。私は、人とクルマと社会をITでつなげるためのコネクティッド製品の品質保証を担当。製品だけでなく提供するサービスも含めてトータルな品質向上を目指しています。

「製品がお客さまのニーズに合ったものになっているか」「開発が品質を担保できる仕組みになっているか」といった視点で課題を発見し、開発や製造の各プロセスを改善していく。より良い製品やサービスがお客さまのもとに届く仕組みをつくることが、私たち品質保証部の役割です。

お客さまの声を集めたり、他社製品をベンチマークしたりと、当社製品の市場品質課題を早期に発見。社内にフィードバックします。それが実際によりよい製品・サービスの提供につながったときには、大きな達成感を感じます。

既に市場に出ている製品だけでなく、新しい製品の立ち上がり品質を確保することも私たちの仕事です。入社2年目から、ある新製品を担当させていただきました。その車両が世の中に出る2年前から品質保証計画を立て、「お客さまにとって何がベストなのか」、設計の方々と議論を重ねて評価項目を設定。生産現場とも密にコミュニケーションをとりながらPDCAを回しました。そのクルマが世に出たときは本当に嬉しかったです。

品質分野で、新たな顧客価値の創造に取り組む

品質保証の仕事の魅力は、一つのクルマ、一つの部品、一つの工程ではなく、多彩な製品やサービスの全工程に関われること。トヨタのモノづくりを俯瞰して見られるおもしろさがあります。

当社が自動車メーカーから移動体験を提供する会社へと変革していく中では、まだ世の中に存在していない製品やサービスが登場することも。その立ち上がり品質を確保する仕事は、私たちにとっても新しい経験です。

これからも「どうすればお客さまに寄りそった安心・安全なモビリティライフを提供できるか」を追求し続け、品質分野で新たな顧客価値の創造に取り組んでいきます。

会社概要

設立   1937年8月 資本金  6,354億円(2022年3月末現在) 営業収益 31兆3,795億円 従業員数 70,710人(連結 372,817人)     (2022年3月末現在) 事業内容 自動車の生産・販売