はじめに
とくにメーカー、サービス、通信業界においては外資系企業がかなりの割合を占めています。 これらの業界を志望している人にとって、そのちがいはマストで押さえておきたいところ。
業界や企業ごとにちがいはあるものの、それぞれメリットとデメリット、また内定を得るために知っておきたい対策方法など、先輩たちの実体験エピソードから探っていきます!
1.そもそも、外資系企業・日系企業とは?
外資系企業とは、「外国法人または外国人が一定以上の出資をする」日本の会社のこと。 外資系でない日本の会社は、日系企業のほかに、国内系、民族系、内資系などと呼ばれることもあります。
外資系企業には、3つのタイプがあります。
①もともと外国にあった企業が、日本で会社を設立したもの
もっともスタンダードな外資系企業。おおもとの本社は海外で、日本支社のような形で進出。海外に進出できるほ
どの力を持った企業なので、知名度もバツグンです。 例:Google、P&Gジャパン、日本ロレアル、マッキンゼー・アンド・カンパニーなど。
②外国の企業と日本の企業が、ともに出資して会社を設立したもの
出資率が、外国企業>日本企業の場合のみ、外資系と呼ばれます。 例:日本マクドナルド、味の素ゼネラルフーズ、富士ゼロックスなど。
③日本の企業を、外国の企業が買収したもの
もともと日本にあった会社を、外国の会社が買い取った場合も外資系になります。 例:シャープ(買収元:鴻海精密工業)、ラオックス(買収元:蘇寧雲商)など。
次に、外資系の多い業界と、その有名企業の一例を見てみましょう。
●コンサルティング業界 アクセンチュア、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン・コンサルティング・グループ、ベイン・アンド・カンパニー、アーサー・D・リトル・ジャパン、ローランド・ベルガーなど。
●金融業界 ゴールドマン・サックス、J.P.モルガン、メリルリンチ、モルガン・スタンレー、UBSグループ、クレディ・スイス、バークレイズなど。
●IT業界 Google、Apple、アマゾンジャパン、Netflix、日本マイクロソフト、日本IBM、ヤフージャパン、LINEなど。
●メーカー業界 P&Gジャパン、日本ロレアル、ユニリーバ・ジャパン、ネスレ日本、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ、フィリップ・モリス・ジャパン、スリーエムジャパンなど。
●製薬業界 中外製薬、ファイザー、グラクソ・スミスクライン、MSD、ノバルティスファーマなど。
2.外資系企業の良いところ
■外資系企業ではたらくメリット
・社員のバックグラウンドが多様で、異文化に触れられる。 ・スピード感があり、世界的に知られているビジネスに携われる。 ・給与が高め、有給が多め。 ・実力・成果主義。 ・職種ごとの採用がメインで、入社後の配属ギャップが少ない。 ・個人主義で、ワークライフバランスを重視する。 ・ユニークな制度がある。
具体的には、以下のようなエピソードがあがりました。
●実力に見合った、フェアな労働環境 外資系メーカー勤務です。実力による評価で、年齢に関係なく良い給与・役職を得られるのは魅力だと思います。同じ業界でも、日系より外資系のほうが年収が高かったので就職を決めました。
残業を少なくし、休みをきちんと取る文化が徹底されているのも良いところ。仕事とプライベートに明確な線引きがあり、個人が尊重されるので、飲み会などのめんどうな付き合いも少ないです。
また、決まった時間のなかで結果を残さないといけないので、やる気のある人が多く、仕事に集中しやすいです。
(外資系企業勤務、26歳女性)
●世界規模の、ビジネスノウハウを得られる 世界に名だたる会社で、誰もが知っている仕事ができることに、大きなやりがいを感じます。
日系企業と比べ、圧倒的に仕事のスピードが速いです。無駄を排除し、時代に合わせて新しいアイディアや価値観、技術をどんどん取り入れ、柔軟に変化するんです。
上層部は世界的なビジネスの天才で、彼らの考えに間近で触れられるのもメリットのひとつ。多国籍な同僚も、みなとても優秀なので良い刺激を受けます。
また、即戦力としてはたらくことを求められるので、非常に成長できる環境だと思います。
(外資系企業勤務、25歳男性)
●「楽しさ」を最優先にはたらく 外資系のIT企業に勤めています。語学力を活かした仕事ができ、さまざまな国の文化に触れられるのは楽しいです。LGBTの採用に積極的など、個性を尊重する文化もあります。
弊社には、クリスマス休暇や長期バケーション、社内ビュッフェや昼寝の推奨など、日本ではなかなかない、ユニークな制度が多くあります。
他社では、ランドリーサービスやマッサージを受けられる、ペットと一緒に出勤できる、なんて制度もあったと思います。
また、日系企業より転職があたりまえの文化なのも、個人的には良いと思います。不満があるなら主張して改善してもらうか、無理なら転職します。
我慢してはたらき続けることはないです。おかげで、ストレスを溜めずに仕事ができています。
(外資系企業勤務、27歳女性)
反対に、日系企業では......。
●「無駄な時間」が多すぎる 外資系企業から日系企業に転職しましたが、文化がかなりちがうことに驚きました。
たとえば、外資系は職種ごとの採用がメインですが、日系は入社後に配属が決まるので、やりたい仕事ができなかったり、思わぬ転勤や異動があったりするんですよね。
また、無駄な仕事が多く、拘束時間が長いことは、日系企業の大きなデメリットだと思います。
たとえば、朝礼や定例会議、飲み会など、成果に繋がらない「付き合い」が必要だったり、若手は早く来て遅く帰る、雑務を多く担当するなど、年功序列に基づいた縛りがあったりします。
短時間で成果を出すことより、頑張っている姿勢のほうが評価されるので、だらだらはたらいてしまうんです......。
(外資系企業→日系企業勤務、30歳男性)
3.日系企業の良いところ
■日系企業ではたらくメリット
・福利厚生が手厚い。 ・研修制度が充実している。 ・ひとつの会社で長くはたらきやすく、「クビ」になることはあまりない。 ・成果以外の要素も評価してもらえる。 ・チームによる協力や、フォロー体制がしっかりしている。 ・ジェネラリスト的な力を身に付けやすく、ほかの仕事でも潰しが効く。 ・同じ文化を共有している。
具体的には、以下のようなエピソードがあがりました。
●長く、安定してはたらける 安定性を重視し、日系企業に就職しました。福利厚生が手厚く、何かあったときに「会社に守ってもらえる」文化があります。
とくに大手では、育児休暇や時短出勤、休職時の見舞金など、男女ともに長く勤められるサポート制度がそろっていると感じます。
いっぽうで、外資系は最低限の福利厚生しかなく、厚生年金や健康保険などの社会保険に加入していない会社もあると聞きます。
また、外資系は給与が高めですが、日系企業には退職金や住宅補助などさまざまな手当てがあるため、トータルの収入を考えると同じくらいか、日系のほうが良いケースも多いと思います。
(日系企業勤務、25歳女性)
●ストレスやプレッシャーが少ない 外資系は個人主義が強く、自分のペースで仕事を進められるのはいいものの、他人に頼りづらい雰囲気がありました。
国やバックグラウンドがちがうチームメンバーとは、意外なところで共有できない文化・感覚があり、ストレスを感じることも多かったです。
また、即効でクビになる人も多くて、成果判断もシビアなので、常にピリピリしていました。
日系の会社に転職して、チームメンバーにフォローしてもらえたり、成果以外も総合的に評価してもらえるようになり、ずいぶん気持ちが楽になりました。
(外資系企業→日系企業勤務、29歳男性)
●「育ててもらえる」文化がある 日系企業は、長い目で見て「社員を育てる」文化があると思います。入社後の研修が丁寧で、多くの新入社員にとって好ましい体制だと感じます。
若手のみならず、中堅以降の資格やキャリアアップも手厚くサポートしてくれるのは、ほんとうにすごいことです。
外資系は、自主的に学べる人でないと成長しづらいと思います。また、専門分野の知識は身に付けられますが、ほかの仕事を目指したとき潰しが効きません。
日系企業は、ジョブローテーションを採用しているところが多いので、ジェネラリスト的な力をつけられると同時に、さまざまな仕事の適正を知ることができるのは良いところです。
(日系企業→外資系企業勤務、31歳男性)
反対に、外資系企業では......。
●上司との相性で、評価が大きく変わることも 外資系では、自らの成果や価値を「主張」しないと評価してもらえません。
望む待遇があるなら、自ら取りに行かねばならないんです。遠慮や謙遜は無用で、他人と競り、衝突しても引き下がらない人が出世します。
また、直属の上司の権限が大きく、気に入られなければ解雇されることもあるんです。
成果で判断する人が大半ですが、性格が合わないなど個人的な理由で、クビになった人も知っています。
日系企業とはまたちがう、人間関係のややこしさがあります。
(外資系企業勤務、29歳男性)
4.「外資系企業VS日系企業」 重視すべきポイントと採用情報・対策
■キャリアプラン・嗜好比較
先輩たちのエピソードから、就活時に重視すべきポイントをまとめました。 自分がどちらにより共感するか、このなかでもっとも大事だと思う要素は何か、考えてみてください。
ひとくちに、外資系・日系といっても、業界や会社ごとに大きなちがいがあります。かならず、業界・企業分析をおこないましょう。
外資系・日系企業にかかわらず、キャリアプランや嗜好に照らし合わせ、自己実現できる会社を選ぶこと。
これが、結果的にこれ以上ない強い志望動機となり、採用に勝ち残る秘訣でもあるのです。
■採用方法・対策
採用においても、外資系・日系企業では、取るべき対策が異なります。 とくに以下のポイントは必ず押さえておきましょう。
○採用スケジュール 経団連に加盟している日本企業は、就職協定で採用スケジュールが決まっています。 いっぽう、外資系企業は独自の採用スケジュールを設けている場合が多いため、事前に調べておく必要があります。
○OBOG訪問・説明会 外資系企業では、会社がOBOG訪問の機会を作ることはあまりないため、独自におこなう必要があります。説明会への参加も、採用フローにおいて必須ではありません。
いっぽうの日系企業は、OBOG訪問が推奨され、非公式の面接の場になっていることも。OBOG訪問や説明会への参加回数が多いほど、志望度が高いと判断されて有利になる会社もあるようです。
○インターン 外資系・日系ともに多くの会社がインターンを募集していますが、とくに即戦力を求める外資系企業では、インターンでの活躍が内定に結びつくことも多いです。
会社の雰囲気や実際の業務を知るチャンスでもあるので、インターンには積極的に参加しましょう。
○求められる姿勢 会社ごとのちがいは大きいものの、外資系では自らを意欲的にアピールできるかが鍵になります。日系企業では、積極性のみならず、協調性や空気を読む力なども重視されることがあります。
○求められるスキル 外資系企業では、英語やその他言語が堪能であることが求められます。 職務内容にもよりますが、目安としてメールや電話中心ならTOEIC700点以上、会議や資料作成も担当するならTOEIC800点以上のスコアがないと、業務が厳しくなってくるでしょう。
留学経験やネイティブであることは必須ではないですが、語学力が高ければ高いほど、有利になるのは事実です。
○面接で聞かれやすいこと 日系企業では、「なぜうちの会社を選んだか」を掘り下げられることが多いよう。業界全体や、競合他社の知識も必要となります。
人となりやこれまでの経験に関する、パーソナルな質問も多いため、自己分析をきちんとしていきましょう。
職種ごとの採用が多い外資系企業では、「なぜこの職種/部門を選んだか」を質問されやすいです。回答から、適正や仕事についてどれだけ理解しているかを判別します。
また、ケース面接やプレゼンテーションを通して、実務における能力を測られることも多いです。
○難易度と傾向 日系企業に比べて、外資系企業の採用フローはハードで難易度が高いといわれます。 Webテストや学歴による精査があるほか、複数日にまたがる選考をおこなうなど、ひとりひとりに割く時間も長いです。
たとえば、コンサルティングファームではスプリング/ウィンタージョブなど数日間のインターンを通して合否を決めたり、投資銀行では、志望者1人あたり1日で5〜10人の面接官から面接を受ける「スーパーデー」というシステムを採用したりしています。
まとめ
先輩たちの実体験から、日系企業と外資系企業では、はたらきかたやキャリアプランにまつわる部分にとくに大きな差異があることがわかりました。
就職活動の難易度や、若手への待遇のみならず、長い目で見てどのように仕事をしたいかが重要です。
会社ごとのちがいもあるので、きちんと企業分析をおこない、ほんとうに納得できる就職先を選びましょう。
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