インタビュイープロフィール
小野 浩之 Hiroyuki Ono
株式会社メビウス製薬 代表取締役
1985年、野村證券入社。
国内営業を経て国際調査室(後の野村総合研究所、野村証券金融研究所)に配属。
1999年、企業調査会社「イー・リサーチ株式会社」を設立、第三者に売却後、ソフトバンクグループで現在の通信事業の基盤構築に参加。
2006年、株式会社メビウスソリューションズ(現株式会社メビウス製薬)設立。代表取締役就任。
データドリブンで開拓していく
現在のメビウス製薬は化粧品メーカーとして知られていますが、今後、当社のマーケティングノウハウは事業領域を問わず、必要とされていくだろうと考えています。
メビウス製薬のビジネスモデルは、いわゆる大手化粧品メーカーとは似て非なるものです。
私はもともと証券会社の研究所でさまざまな企業の財務分析を専門とするアナリストでした。
経済の動き、需給の変化などを調べ、数値を分析し、予測や戦略を立てる。 その手法をそのまま化粧品業界へ、ECへと展開したのが当社の始まりです。
少数精鋭で新規参入の企業でありながら、日本初の「BBクリーム」や主力ブランドの「美白オールインワンジェル」など自社製品がヒットできた陰にも、消費者ニーズや顧客のレスポンスデータに対する分析力がありました。
そうやってお客さまの声に真摯に向きあうことを追求した結果、自社ECシステムを何度もカスタマイズして、現在のDtoC(メーカー直販型)モデルやECサブスクリプションモデルを他社に先駆けて構築することができました。
お客さまと共創するブランドの価値
DtoCは、従来のメーカー直販とは一線を画すものです。
企業から消費者へという一方向のものではなく、私たちは最先端技術を利用して、お客さまが心地良く感じていただけるような情報・サービスの提供を実現しています。
メビウス製薬には自社のファンを獲得していく中で培った長年の経験があります。
初めてご利用いただいたお客さまがリピーターになり、ロイヤルカスタマーとなる。
それを目指して、商品開発から生産、商品発送、同梱物のコンテンツ設計、購入後のフォローまで創意工夫を凝らしてファンをつくる仕組みを講じてきました。
そして、もう一つの武器がテック企業としての技術力です。
例えば、店舗販売で売り上げを左右する、ベテラン店員による気配り。
それを超える接遇を、メビウス製薬はシステムで提供しています。
お客さまがある広告をクリックして自社サイトを訪れるとき、顧客の属性やライフスタイルが予測され、顧客ごとに最適化されたコンテンツが表示されます。
さらに購入履歴、行動予測・履歴、顧客のレスポンスなどのすべての情報が紐づいて、よりパーソナルな提案が行われていきます。
まるで昔からのつきあいのような「おもてなし」と「購入体験」。
これらを実現するシステムの設計思想やデータ収集・抽出の手法、分析や運用についてのノウハウは、私たちは業界でも1 、2位であるだろうと自負しています。
これは優れたシステム会社に依頼しても、一朝一夕にできるものではありませんから。
第4次産業革命のDtoCイノベーターへ
AIや機械学習などの技術革新が進んでいますが、これからのビジネスはどうなっていくのか。
それは20世紀後半の第3次産業革命を振り返れば分かります。
コンピューターとインターネットが登場した頃はその技術を有する企業が評価されましたが、 PCやWEBが普及したあとに成功をつかんだのは新技術を使いこなせる企業です。
AIやビッグデータも同じです。
技術を手にすることと、それで稼ぐことはまた別の次元なのです。
今がその過渡期であるならば、レッドオーシャンな市場である化粧品業界で勝ち続けるメビウス製薬のマーケティングノウハウ×最先端テクノロジーによるカスタマーリレーションマネジメントは他社にはない強みとなります。
これからのビジョンとして、このDtoCモデル×最先端テクノロジー×グローバルという構想を私は描いています。
国内で新規事業に取り組むのはもちろんのこと、自社製品を海外市場に売り出すこと、一方で海外DtoC企業の日本進出時に私たちのノウハウとインフラを提供すること......。
業界や国にとらわれることなく活躍のフィールドは広がっています。
世の中の動きの本質にリアルタイムで向きあいながら、企業と消費者の新たな可能性を示していきます。
ここからDtoCイノベーションを追求していきたいと考えています。
就活生からの質問に社長が答える!
Q.若手社員の育成は、どんな風に行われていますか?
A.目標は、100の新規事業、100人の社長輩出です
メビウス製薬は100の新規事業をつくり、100人の社長を輩出することを目標とした「100challenge」を掲げています。
経営者である私との距離が近く、マーケティングや経営戦略などのノウハウをカリキュラム化しているので、 新卒のうちから経営者視点が身に付く環境です。
現在、若手社員が進めている案件の一つが、睡眠障害改善プロジェクト。
中途覚醒や疲労回復など睡眠の本質に迫って、お悩みごとに何の機能を提供すべきかを追求しています。
調査や企画、商品開発まで携わり、徹底的な検証を繰り返して、サプリメントの販売に至っています。
実は、他社のヒット商品の類似品を売るメーカーはとても多いんです。
でも、うちは絶対的に売れる自信で裏づけられたものしか手掛けません。
お客さまや社会が喜んでくれることで、社員の幸福度も上がるのです。
メビウス製薬の目指すゴールは、お客さまの幸福に貢献すること、そして働く人も幸せに生きること。
そのためには、会社からも、社会からも求められる存在になることです。
メビウス製薬で3年〜5年真剣にやったら、一生もののビジネススキルの基礎ができると思います。
Q.事業が急拡大する中で、特に何を大切にしていますか?
A.真実に基づいた言動をすること、正直であることを大切にしています。
テクノロジーが変わることで、SNSも含めてコミュニケーションもどんどん進化しています。
そんな時代だからこそ、信頼を獲得していくためには、企業の姿勢に表裏がないこと、真実に基づいた言動をすることが重要です。
それは働く人も同じ。私たちは正直であることを大切にしています。
メビウス製薬では、社員たちに自然体で、素の自分をブラッシュアップしていってほしいと考えています。
それが成長には不可欠だからです。
そのために心がけているのが、アウトプットとフィードバック。
コミュニケーションにはギャップがあります。
どんなに一生懸命伝えても、相手が何を受け取ったかは分からない。そのギャップをフィードバックで埋めていく。
当たり障りのないコミュニケーションが好まれる世の中ですが、私たちは軋轢や衝突を恐れずに、正直なコミュニケーションを日々、実践しています。
Q.社長のキャリアは、学生時代に思い描いていた通りですか?
A.だいたい思い描いた通り......でも、まだ夢があります。
証券会社の元アナリストから化粧品業界で起業したことについて、よく「清水の舞台から飛び降りる決意だったのでは?」「さぞや大変だったでしょう」と声をかけられます。
確かに業界はずいぶん違いますが、私にとってはそれほど劇的な転身ではありませんでした。
それは一貫して、自分の得意な数値分析を追求してきたからです。
大学卒業時、私は自分の資質を生かした仕事をしていきたいと願っていました。
そして証券会社に入社したときには、いつかは独立したいと思っていました。
そのためにはベースの力を付けるべきだと考え、さまざまな業種の財務分析に邁進。
その中で、安定した成長をしているのが女性の日用品を取り扱う企業だと気付きました。
だから、化粧品業界で勝負をかけたのです。
その意味では、だいたいは思い描いた通りのキャリアを歩んでこられたと思います。
ただ、私には学生時代に描いた夢がもう一つあります。
それは、グローバルな舞台でビジネスを成功させること。
さまざまな挑戦をこれまで成し遂げてきましたが、海外ビジネスについてはまだ道半ばです。
これから、ぜひ新しい人材の力を借りながら、ともに夢をかなえていきたいです。
Q.社会の変化のスピードについていけるのか心配です。学生のうちに、やっておくべきことはなんですか?
A.不安を抱えたまま過ごさない思考習慣をつけよう
これだけ社会状況がめまぐるしく変わると、みんな不安だと思います。
その不安を抱えたまま過ごさない思考習慣を、学生のうちにぜひ身に付けてほしいと思います。
当社の指針を示したバリューブックに、こんな言葉があります。
「事実ではなく、真実をもとに行動する」。
情報や出来事には三つの段階があります。一つは噂・思い込み・先入観、二つ目が事実、三つ目が真実。
もし就職先が決まらないと悩んでいるとしたら、その真実を分析するのです。
受けている会社が少ない、実力が届いていないなど客観的要素が見えてくるかもしれません。
それなら応募する会社の幅を広げる、自分の能力を上げるなど、次の手が見えてくる。
表面的な出来事に惑わされずに真実を見極めて、不安から具体的なアクションへつなげていく。
何よりも重要なのはマインドセットです。スキルはその後でついてきますから。
株式会社メビウス製薬 設立 2006年7月
資本金 2,000万円
事業内容
医薬品、化粧品、健康食品の製造業及び 卸小売業