はじめに
「大学名などの学歴に左右されたくない」「面接より筆記試験が得意」「同じ仕事を安定して長く続けたい」という人にとって、公務員は人気のある仕事のひとつです。
しかし、民間企業よりも就活に関する情報が少なく、募集要項も見てもよくわからない・・・という声も、多く聞きます。
そこで、就活生が知っておくべき公務員のすべてを、わかりやすくまとめました。本記事では、民間企業とのちがい、仕事内容、給与と福利厚生などを具体的に示しています。
公務員をめざしている人はもちろん、民間企業が第一志望という人も、本記事を読むことで、これまで知らなかった公務員の魅力が見つかるはずです。
1.公務員と民間企業のちがい
■公務員
【仕事】 中央省庁や都道府県などで、国民と国家のためにはたらきます。
たとえば、 ・警察官として犯罪を取り締まる。 ・区役所で住民票の発行をする。 ・厚生労働省で新型肺炎の感染を防ぐ対策を練る。 ・税務署で税金の申告を受け付ける。 などの仕事があります。
【就活】 公務員試験を受けます。一次は筆記、二次は面接などが多いです。
大学名などの学歴は関係なく、試験の得点で合否が決まります。
【給与・待遇】 公務員の給与は職種・役職によって法律で決められており、国民の税金で払われます。
民間企業の給与レベルを参考にして金額が決まり、残業やボーナスなどさまざまな手当もつきます。
不景気でもリストラや給与カットの心配が少なく、定年まではたらく人も多いです。
■民間企業
【仕事】 利益を得るため、モノの製造・販売、サービスの提供などをおこないます。
たとえば、 ・食品メーカーで新商品の企画をする。 ・商社で海外から穀物の輸入をする。 ・コンサルタントとして企業の合併を手伝う。 ・IT企業で、テレワーク用のシステムを開発する。 などの仕事があります。
【就活】 ES、WEBテスト、面接などを経て内定が出ます。インターンからの採用をおこなう会社もあります。
コミュニケーション能力が重視される傾向があります。また、学歴によって選抜する企業もあります。
【給与・待遇】 給与は会社によって大きくちがいます。年齢ではなく、実力による昇進が多いです。
成果を出せば、若手のうちから活躍でき、ずば抜けて高い給与を得ることもできます。
兼業や副業が可能な会社もあります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― まとめ 「安定性を求めるなら公務員、若いうちからバリバリ働いて稼ぎたいなら民間企業」といえます。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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2.公務員の具体的な仕事と職種
■国家公務員
【仕事】 内閣府、省庁、裁判所、国会など国の機関で働きます。国家を動かす、スケールの大きな仕事です。
たとえば、 ・環境省で地球温暖化対策を検討する。 ・外交官として海外の日本大使館に駐在する。 ・農林水産省の研究所で新しい作物の調査をする。 ・国税局で税金の滞納者を処罰する。 ・裁判所で事件の原因を調査する。 ・国会図書館で本の管理をする。 などの仕事があります。
【試験】 国家公務員試験を受けます。
公務員は仕事の種類ごとにさまざまな試験があり、同じ仕事でも、試験の難易度によって採用後の給与や昇進の仕方が変わることがあります。
たとえば、 ・国家公務員採用総合職試験:最難関試験のひとつで、中央省庁の最高幹部を採用します。 ・外務専門職員採用試験:外交官を採用する試験で、高い語学力が求められます。 などがあります。
■地方公務員
【仕事】 都道府県庁や市町村役所など、地方機関ではたらきます。地域に密着した実務を担います。
たとえば、 ・県庁でゆるキャラなどを使った広報をする。 ・福祉事務所で障害者支援をする。 ・教員として、子どもたちに授業をおこなう。 ・市役所で災害時の復興サポートをする。 ・消防官、警察官として地域の治安を守る。 ・清掃局で、地域のゴミ収集サービスをおこなう。 などの仕事があります。
【試験】 地方公務員試験を受けます。
公務員試験は、都道府県や市町村などの各地方自治体によっておこなわれます。
たとえば、 ・東京都職員採用試験:都庁ではたらく職員を採用するための試験です。 ・教員採用試験:学校教員を採用します。受験には教員免許が必要です。 などがあります。
仕事の種類や自治体ごとに受験資格や待遇がちがうので、募集要項を細かくチェックしましょう。
■特別職と一般職
公務員のほとんどは一般職ですが、特別職といわれる仕事もあります。
①選挙で選ばれた、行政機関のリーダー たとえば、国会議員、内閣総理大臣、都道府県知事などです。公務員試験は受けません。
②中立性が求められる仕事 たとえば、裁判官、自衛官、防衛省の職員などです。公務員試験がある仕事が大半です。
一般職の公務員は、公務員法で給与や昇進、懲罰のルールが決まっています。
しかし、公務員特別職は、癒着や汚職などを避けるために、公務員法ではなく職種ごとのルールが適用されます。
ちなみに、民間企業でも、ストップすると国家や国民の生活が成り立たなくなる仕事は「みなし公務員」として扱われます。
たとえば、日本郵便、日本銀行、交通機関、電力会社、日本放送、日本年金機構などです。
社員には、接待の禁止など公務員法の一部が適用されます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― まとめ ・公務員には、国家公務員と地方公務員の2種があります。国家公務員は国家方針にかかわる仕事を、地方公務員は地域に密着した仕事をおこないます。
・「公務員法」によって、公務員が従うべきルールや給与、懲罰などが決められています。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3.公務員の給与
■基本給
公務員の基本給は職種ごとに決まっており、国民に公開されています。国家公務員の給与は「俸給表」、地方公務員の給与は「給料表」と呼ばれる一覧表にまとめられます。
地方公務員の給与は、国家公務員の額を基準に決められるため、平均年収で見ると国家公務員の方が地方公務員より若干高い傾向があります。
一覧表には、職種のほかに「級」(=課長、部長などの役職)と「号俸/号給」(=勤続年数や功績)があり、この2つの要素でも公務員の基本給は変わります。
役職があがったり、勤続年数が長くなったりすると給与が高くなるのは、民間企業と同じです。
基本給は、人事院によって毎年、「民間企業の給与と同水準になるように」調整されています。
ただし、上場している大企業の平均給与が基準であるため、景気や業績に左右される民間企業よりも、給与は高めで安定しているといえます。
■諸手当
手当とは、基本給とは別に、条件がそろえばもらえるものです。
残業代や年2回のボーナスなどは、諸手当にあたります。公務員の諸手当は充実しており、手当だけでかなりの額になります。
残業手当や深夜手当、期末手当(ボーナス)はもちろん、以下の公務員向けの手当もあります。
■年収モデル
・国家公務員 Aさん
厚生労働省勤務 新卒 20代男性:年収320万円
・国家公務員 Cさん
防衛省勤務 本省係長クラス 50代女性:年収1200万円
・地方公務員 Dさん
区役所勤務 新卒 20代女性:年収300万円
・地方公務員 Eさん
公立中学校教諭 40代男性:年収730万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― まとめ ・公務員の給与は、民間の大企業と同水準になるように調整されており、比較的高く、安定しています。基本給以外の手当が手厚いことも特徴です。
・国家公務員の給与のほうが地方公務員よりもやや高いことが多いですが、職種や自治体によっても大きな差があります。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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4.公務員の待遇と福利厚生
■休暇制度・労働時間
仕事内容や配属によりますが、基本的には土日祝休みです。
公務員が1年に取得できる休暇の数は20日ほどで、このほかに病気・介護・結婚・葬儀などで特別休暇を取ることができます。
公務員には、ボランティア休暇(プライベートでボランティア活動に参加する場合に取得できる)というユニークな休暇もあります。
有事の際や、職種によっては労働時間がかなり長くなることもあります。
しかし、近年では国をあげてワークライフバランスの改善を目指しており、その手本となるべく公務員の労働環境はどんどん整えられているようです。
たとえば、定時に退社する「ノー残業デー」や、夏の定時を早めて明るいうちに退社する「ゆう活」など、公務員に向けたさまざまな試みがおこなわれています。
■怪我・病気の保障
仕事による怪我や病気は、公務員法で治療費や給与の支払いが約束されています。
公務員は多くの場合、最大3年の休職が可能で、そのうち90日間は満額の給与やボーナスももらえます。
産業医による診断・面談など、復帰のためのプログラムも充実しています。
このほか、公務員専用の共済組合に入ることができ、事故や入院などの、お金の保障をしてくれます。民間企業の保険よりも、共済組合の保障は手厚いともいわれています。
共済組合がおこなう事業はいろいろあり、公務員はたとえば健康診断・人間ドッグなどを安く受けられるほか、関連するレジャー施設や宿泊施設を利用することもできます。
■定年と退職金
基本的に、公務員の定年は60歳です。
業績悪化によるリストラもほぼないので、非行や不始末さえ起こさなければ、定年まで安定して働ける仕事といえます。
現在、公務員の定年年齢を65歳に改正するという法案も出ています。
公務員には再任用制度があり、元の職務を続けることができます。
昇給はありませんが、フルタイムもしくは時短での勤務が可能で、基本的には年金が支給されるまで雇用されます。
公務員の退職金は、退職時の月給×支給率で決まります。
「整理退職」(ほぼないですが、人員過剰などを理由に退職を促された場合など)≧「定年・勧奨」(60歳または早期退職制度を使った場合など)>「自己都合」(個人の転職、結婚を理由に退職する場合など)の順で勤続年数が長いほど、公務員の退職金支給率は高くなります。
■退職金モデル
・国家公務員 Fさん 農林水産省勤務 局長クラス 定年退職の場合 退職金 6200万円 (月給100万円、勤続年数35年で試算)
・地方公務員 Gさん 県庁勤務 一般職員 自己都合退職の場合: 退職金 225万円 (月給30万円、勤続年数10年で試算)
民間企業の退職金平均は、中小企業で1700万円、大企業で2500万円ほどといわれます。
定年まで働いた場合、国家・地方公務員ともに圧倒的に退職金が多いことがわかります。
■男女の待遇
公務員は育児休暇制度が充実しており、女性の取得率は99.7%(※1)です。男性が取ることも勧められており、もちろん、育児休暇中の手当や給与の保障もあります。
育児休暇後の復職率も98.8%(※2)であり、時短勤務や育児時間の申請ができるなど、国家・地方公務員にはともに育児と仕事を両立できる制度が多くあります。
このほか、配偶者の海外赴任や地方転勤に付いていく場合、3年以内であれば休職・復職できる制度もあります。結婚で仕事を諦める人を減らすためのシステムです。
また、採用や給与、昇進においても男女平等が重視されています。
H31の国家公務員採用者の女性比率は35.4%で、そのうち国家総合職の女性割合は34.5%(※3)でした。
まだ男性のほうが多いですが、女性比率は過去最多となっており、多くの女性を登用するための環境づくりがなされています。
これは、地方公務員でも同じで、各地方自治体が女性の採用に積極的になっています。
※1、2データ出典:人事院「平成30年度年次報告書」 ※3データ出典:内閣人事局「国家公務員採用試験からの採用者に占める女性割合の推移」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― まとめ ・ワークライフバランスを重視し、出産・育児を支援する制度が充実しており、女性もはたらきやすい環境が整備されつつあります。
・公務員だけが入れる共済組合があり、病気や怪我に対する手厚い保障が受けられます。
・公務員は60歳の定年後も、希望すれば同じ職場ではたらくことができます。退職金も、民間企業に比べてかなり高額です。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
5.公務員の就活
■試験概要
公務員になるためには、国家・地方ともに基本的に公務員試験に合格する必要があります。
職種ごとに試験があり、難易度や受験資格もまちまちです。
公務員志望者の多くが2、3の職種を併願します。スケジュールが被らなければ併願できますが、対策範囲を狭めるためにも、なるべく近い職種で専門科目が共通するものを受験します。
<一次試験> 筆記試験が中心です。基礎能力・教養試験と、専門試験の2つに分けられています。
基礎能力・教養試験は、どの職種にも共通するテストで、数学・物理・化学・文学・歴史・芸術・政治・社会学・法律など、幅広い分野からの出題があります。
長文読解問題もあり、限られた時間でたくさんの問題を正確に解く力が必要です。
専門試験は、職種に必要な専門知識から出題されます。
たとえば、外交官の専門試験では国際法・憲法・経済学の知識が問われ、時事問題や、外国語の翻訳問題もあります。
難易度がかなり高く、国家に関する時事も追う必要があります。
<二次試験> 一次の合格者だけが受けられます。面接が中心で、身体検査、作文テストを実施している職種もあります。
面接では、公務員への志望理由や大学で学んだことを聞かれることが多いです。社会問題をテーマとした作文や数人での討論試験をおこなう場合もあります。
地方自治体の一部では、二次で集団面接、三次で個別面接というパターンもあります。詳しくは、各地方自治体の募集要項をチェックしましょう。
■対策方法
試験は出題範囲が広く、問題数も多いため、準備に少なくとも1年は必要です。
国家・地方公務員ともに3〜4月に出願、5〜6月に一次、7〜8月に二次というスケジュールが多いため、大学3年生あるいは修士課程2年生の春までには、対策を始めているのが理想的です。
公務員の合格者は、以下のような対策をすすめています。
・公務員試験対策本や要点整理集で各試験の出題傾向を知ることが大切です。配点が高い、もしくは問われやすい分野があるので、ここを優先的に対策すべきです。
・過去問を繰り返し解きましょう。対策本とともに書店で手に入るほか、公務員試験対策アプリでも勉強できます。
・独学が不安なら、公務員志望者専用の予備校を利用するのもひとつの手です。苦手科目や、二次の面接対策だけなど、スポット利用も可能です。
・各予備校が実施する模擬テストをできる限りたくさん受けましょう。これは本番と同じ形式でおこなわれます。公務員試験の形式に慣れることで、合格しやすくなります。
公務員試験は、国家・地方ともに職種ごとにこまかな規定があります。また、どの試験を受けるか決めるためにも、情報収集は欠かせません。
たとえば、以下のような方法があります。
・公務員志望者向けの説明会、講演会、オープンゼミが定期的におこなわれています。実際に公務員としてはたらく人の声が聞けるので、仕事のリアルがわかります。
・ほとんどの職種がホームページで、募集要項や仕事、待遇の詳細を公開しています。
さらに、人事院はメルマガ「国家公務員試験使用情報NEWS」を配信しており、地方自治体は「地方公務員採用試験案内サイト」を運営しています。
最新情報をわかりやすく知ることができるため、公務員志望者はぜひチェックしてみましょう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― まとめ ・公務員試験は職種ごとに内容がちがっており、一次は筆記、二次は面接が中心です。
・出題範囲が広いため、最低でも準備に1年は必要です。複数の職種を併願することもできます。
・人事院や地方自治体がおこなう説明会に参加したり、模擬試験を受けることで、出題の傾向と内容を事前に把握することが合格の秘訣です。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※参照 ・北里敏明監修、コンデックス情報研究所編著、『21年版 公務員をめざす人の本』、成美堂出版、2019年 ・人事院ホームページ、2020年 ・内閣官房ホームページ、2020年 ・総務省ホームページ、2020年
※年収情報などはあくまで先輩たちの声をもとにした参考です。実態とは異なる場合もあります。試験情報などは必ず志望先のホームページなどで最新情報を確認するようにしてください。
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