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出版業界は市場規模が縮小している?今後の復活のカギとは

採用枠が少なく、難関業界として知られる出版業界。電子化の波によって市場規模が縮小していると喧伝されていますが、実際はどうなんでしょうか? 今回は、そんな出版業界の現状、そして今後の方向性について詳しく解説していきます!

出版業界とは?

出版業界というワードを聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか?

多くの人は『ワンピース』『鬼滅の刃』『君に届け』など、漫画を発行している大手出版社を思い浮かべるのでしょう。

これらの作品は、基本的には大手の出版社が発行する週刊誌、月刊誌に連載されています。

例えば、上に挙げた三つの漫画はそれぞれ、集英社が発行する週刊少年ジャンプと別冊マーガレットで連載されています(『君に届け』は既に完結しています)。

出版業界という言葉を使う場合は、出版社に限らず、実際に消費者に作られた本を売る「書店」や、出版社と書店の間に入り、流通を円滑にする役割を担う「出版取次」、大量に書籍を生産する「印刷会社」など、多くの会社が存在しています。

今回は、その中でも特に就活生の人気が高い、出版社について、業界の現状と合わせて、より詳しく解説していきます!

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出版業界の現状

大手出版社を中心に、多くの就活生から人気を集める出版業界ですが、「電子書籍の影響で市場規模が縮小している」などといった話を聞いたことはありませんか?

まずは、実際に現在の出版業界全体の市場規模がどの程度なのかを確認していきましょう。

公益社団法人 全国出版協会『2018年の出版市場規模発表』より

上記のように、2018年の紙の出版市場規模は1兆2921億円、電子市場は2479億円でした。紙の出版市場規模に関しては、ピーク時の1996年の2兆6563億円の半分未満となっており、苦境に立たされています。

各企業は、毎年10%以上の成長をしている電子書籍に力を入れていますが、業界全体で考えると、市場規模は年々縮小しているということが現状です。

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出版業界が縮小している本当の理由

では、なぜ出版業界は低迷しているのでしょうか?一言でいうのならば、若者を中心とした「書籍離れ」が原因と言えるでしょう。デジタルネイティブ世代の人々は、インターネット上で漫画や雑誌を見ることが出来るので、紙の出版物を買う機会は減っています。

しかし、ただ「書籍離れ」していることが出版業界が低迷する理由なのでしょうか?さらに踏み込んでいうのならば、出版業界が低迷している真の理由は、「インターネットの発達によって、娯楽が多様化していること」にあります。

通勤通学の時間を思い浮かべてみてください。20年前ならば、移動時間にすることといえば、本や漫画を読んだり、寝たり、友達や同僚と話をすることをしていたでしょう。

しかし、現代では多くの人がスマートフォンを所持しています。スマートフォン、ひいてはインターネットの普及によって、さらに多くの選択肢が生まれました。

TwitterやInstagram、LINEといったSNS、YouTubeやNETFLIXなどの動画配信サービス、Google、Yahooなどの検索サービスは、多くの人に利用されています。

つまり、昔は少ない選択肢の中で、漫画や雑誌といった出版物が人々に親しまれてきましたが、現代では娯楽の選択肢が増えたことによって、書籍が人々に利用される機会が少なくなったのです。

これが、出版業界が低迷する理由です。消費者の「可処分時間の奪い合い」(可処分時間: :自分の判断で自由に使うことのできる時間)が起きており、出版業界は、その争いにおいて他の業界の侵食を受けています。

異業界からの参入

多くの出版社は、電子書籍への対応に追われていますが、日本の10年先を行くと言われているアメリカでは、電子書籍の普及率は20%程度で停滞しているため、日本において電子書籍がそれを上回る普及率になることは考えづらいでしょう。

しかし、電子書籍の勢いは無視することができません。20年前はおよそ22000店あった書店の数は、2017年現在でおよそ12000店と、この20年で10000店も数が減っています。

その理由は、前の章で挙げた可処分時間の奪い合いだけでなく、書籍販売というビジネスに、異業界からの参入が相次いでいるからです。

コンビニエンスストアでは多くの雑誌、漫画が発売されています。それに加え、アマゾンや楽天市場など、現在はEC市場も活発です。

特に、アマゾンはKindleで通常の10%引きの価格で人気書籍を販売できることに加えて、会員登録をすれば、基本的には全国に翌日発送かつ、送料無料で書籍を購入することができます。

さらに、「note」というWebサービスをご存知ですか?このサービスでは文章、写真、動画といったコンテンツを手軽に共有できるサービスとなっており、閲覧するのに有料にすることも可能です。

クリエイターに入る収入は、出版社でコンテンツを作った際に入る印税よりも多くのパーセンテージを得ることが出来ます。

大手出版社の概要

ここからは、大手出版社である、集英社、小学館、講談社について詳しくみていきましょう。これらの企業の概要を掴んで、効率的な企業研究をしていきましょう。

集英社 設立年:1926年 従業員数:757人 売上高:1333億円(2019年) 代表的な雑誌:週刊少年ジャンプ、りぼん、Seventeen、週刊プレイボーイ

集英社は小学館の娯楽誌出版部門から分離して独立した企業です。そのため、週刊少年ジャンプやりぼんなどの少年、少女向けの漫画雑誌に加え、Seventeenや週刊プレイボーイといった娯楽雑誌に強みを持っています。

小学館 設立年:1922年 従業員数:708人 売上高:970億円(2019年) 代表的な雑誌:週刊少年サンデー、CanCam、女性セブン

小学館は、社名の由来にも関係しますが、小学生向けの書籍を出版することが創業当初の事業でした。娯楽誌出版部門が設立すぐ分離し、集英社となりましたが、戦後はこの部門に再進出しています。

講談社 設立年:1909年 従業員数:932人 売上高:1032億円(2018年) 代表的な雑誌:週刊現代、FRIDAY、週刊少年マガジン

講談社は『雄弁』に代表されるように、当初は弁論雑誌を刊行していましたが、「面白くてためになる」を標語に創刊された『キング』は国民的な人気を博すなど、弁論以外のジャンルにも進出していきました。

集英社と小学館が相賀一族によって経営される同族経営の企業であるとともに、講談社も野間一族によって代々経営されています。

今後の出版業界の動向

今後は、出版業界はどのような動きを見せていくのでしょうか?三つのキーワードと共に、紹介していきましょう。

まず一つのキーワードとしては、電子書籍に代表される「デジタルシフト」です。これまで見てきたように、日本の電子書籍市場は今後も伸びていく見通しであり、各社はデジタルネイティブ世代にマッチするビジネスの発掘が急務でしょう。

次に重要なのは、書籍の「クロスメディア化」です。元々、漫画は「ワンコンテンツ・マルチユース」型のビジネスを展開してきました。

一つの漫画が人気を博した場合、それに紐づけてアニメ化、映画化、実写映画化など、形を変えてビジネスを行なっているのです。

今後はあらゆる出版物がクロスメディア化していくでしょう。

最後のキーワードは読書体験の「特別化」です。近年、首都圏を中心に「泊まれる本屋」「入場料を取る本屋」が出現し、大人気となっています。

これは、本を買い、読書するという従来の習慣を再定義し、書籍に新たな価値を見出すことで、消費者の潜在ニーズを発掘しています。

このように、消費者が抽象的に何を求めているかを分析し、具体的なビジネスモデルに昇華させることが、今後の出版業界のビジネスパーソンに求められると言えるでしょう。

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出版業界を志望する就活生に求められる力とは

これまで、出版業界の現状、今後の課題、動向を確認してきました。

全体として市場規模が縮小している出版業界ですが、今後は異業界との協業やデジタルシフトなど、様々な活躍を求められることになるでしょう。

出版業界を志望する学生に求められる力は、先ほど挙げた「抽象から具体へ昇華する力」に加え、様々な業界と協業するために「関係を調整する力」も必須と言えます。

後者については、「周りを巻き込んで成果を出した経験」といった形で、エントリーシートや面接で必ず聞かれるので、入念に準備しましょう。

出版業界に関連する業界

出版業界は今後、デジタルシフトの流れが加速していきます。そのため、IT・Web業界に関する知識は不可欠です。

そして依然として一兆円規模の市場規模をもつ紙の出版物を生産する印刷業界など、関連する業界に関する知識も、出版業界を志望する就活生の皆さんには必須です。

これらの業界の企業研究も並行して行いましょう!以下の関連記事を読んで、万全の対策をしてくださいね!