はじめに
サントリー、キリン、アサヒなどといった企業を聞いたことがない人は、日本にいないのではないでしょうか?
飲料メーカーはBtoC(Business to Customer:企業が消費者に対して行うビジネスのこと)の領域で事業をすることが主であるため、就活生にとっても馴染みのある企業であることがほとんどでしょう。
しかし、いざそれらの企業でビジネスパーソンとして働く、と考えた時に具体的に自分の姿を思い浮かべることは出来ますか?
飲料メーカーには、商品企画、マーケティング、営業など、様々な職種が存在します。まずは、飲料業界の概要について確認しましょう。
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飲料メーカーの業界全体の概要
飲料メーカーといっても、ビールや清涼飲料水など、各企業によってセグメントが異なるため、一概に比較することは難しいということが実際です。
まずは、各企業に共通する商品企画に始まり、実際に消費者の手に商品が渡るまでを確認して、飲料メーカーで働く姿をイメージできる様にしていきましょう。 (わかりやすく伝えるため、一部過程をスキップしています)
1、市場調査 例えば、昨今第3のビールが登場し、生ビールの売り上げが微減している様に、消費者のニーズは日々変わっています。
そのため、飲料メーカーは市場調査を行うことにより、消費者が何を求めているのかを調べます。そこで得た消費者のニーズを、次の段階である商品企画にバトンタッチします。 2、商品企画 ある市場調査によって、「高級志向」「飲みやすい」というアルコール飲料が消費者のニーズが高いという報告を受けると、商品企画チームがそれに合致する商品の企画・開発を行います。
これらは、何百回という試作を経た上で、新商品が開発されるのです。
3、プロモーション せっかく作った新商品も、消費者に認識されなければ、売れることはありません。プロモーションチームが行う仕事は、どのようなメディア、広告手法を選択すれば商品の売り上げ、企業かつ当該商品のブランド価値を高めることができるかを考え、実行することです。
先ほど挙げた、「高級志向」「飲みやすい」ことがコンセプトのアルコール飲料を、高校生以下の若者の街に広告を出すよりも、仕事終わりに食品と一緒にアルコールを飲むビジネスマンが多い街に広告を出す方が適していますよね。
4、営業 プロモーションは主に一般消費者に対する訴求ですが、飲料メーカーの営業職の場合、多くは飲食店、スーパーマーケットなどの小売店に自社製品を提案すると共に、顧客の売り上げを最大化することを目的としています。
自社製品の売り上げを上げると同時に、顧客の経営にまで寄り添えることが求められます。
例えば、メーカーが提供している飲料だけでなく、食品とのコラボレーションを提案すること。競合メーカーの商品の売れ行きを分析して、より高い売り上げを見込むことができる自社の飲料を提案するなどといったことが挙げられるでしょう。
飲料メーカーには、上記に挙げた職種以外にも、栄養成分などの研究をする基礎研究や、工場の製造ラインの生産管理、商品の原材料の調達が必要です。飲料業界には文理を問わず幅広い職種が存在しています。
実際に飲料メーカーの選考を受ける際は、ある程度職種が絞られた上での選考ルートになりますが、自分がどんな形で企業に貢献できるかを言語化できるようにしておきましょう。
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飲料業界の最近のトレンド
さて、飲料メーカーにおけるビジネスの流れを確認したところで、最近の飲料業界のトレンドについて確認しましょう。
最近、コンビニのお酒コーナーに、サントリーの「-196℃ストロングゼロ」、サッポロビールの「99.99(フォーナイン)」など、アルコール度数が9%で比較的度数が高い商品が並んでいることに気づきませんか?
なぜ飲料メーカーがこぞってアルコール度数が比較的高い、チューハイの商品を押し出しているのでしょうか?
その理由として、「消費者が支出を抑えていること(低価格)」「飲料への飲みごたえを期待しているということ(高アルコール)」という消費者のニーズが存在するからです。
一言で言えば、「コストパフォーマンスが良い」飲料が求められていたのです。そこで、ビールよりも酒税が低いことによって実現する低価格に加え、度数9%という高アルコールの商品が一斉に市場に出回ることになりました。
このように、何気なく立ち寄ったコンビニやスーパーで、「なぜ商品の陳列がこうなっているのか」「地域によって陳列の仕方は変わるのか」といった所に対して、日頃からアンテナを張ることをお勧めします。
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大手三社飲料メーカーの強み、課題
では、飲料業界の大手三社について企業概要、強み、課題を確認していきましょう。
サントリー
創立年:1899年 売上高:2兆1209億円 営業利益:2117億円 従業員数:39466人
サントリーは、1899年に鳥井信治郎によって創業されました。飲料メーカー大手の中では珍しく、東京ではなく大阪に本社を置くグローバルカンパニーです。
事業の走りはぶどう酒の製造販売であり、赤玉ポートワインや国産ウィスキーの開発に成功しています。
ちなみに、サントリーという社名の由来は、「赤玉」=「太陽(サン)」の下に、創業者・鳥井(トリイ)を合わせたものです。
<強み> サントリーの強みは、清涼飲料水事業において高いシェア(21%でコカ・コーラについで第2位)を持っていること(安定した収入基盤)と、42%という海外売上高比率の高さ(グローバル化への対応)でしょう。
サントリーが海外市場に対して他企業を差し置いている理由は、サントリーの社訓にあるのではないでしょうか?
「やってみなはれ」という言葉は、創業者・鳥井信治郎が残したものです。
どんなに開発に失敗したとしても、諦めずに挑戦し続けることを是とするものであり、創業以来受け継がれたこの考え方が、サントリーを支えています。
飲料業界は、他の食品業界などと同じように、商品の当たり外れが如実にでる業界です。その中で、たとえ失敗したとしても、挑戦を奨励する社風は企業に対して追い風になります。
<課題> 近年、プレミアムモルツなどでシェアを微増させているものの、アサヒ、キリンの二大企業と比べると、ビール市場においての存在感は希薄です。
<最近の取り組み> 飲み物に対して新たな付加価値を提供した事例として、プレミアムモルツにつける「神泡サーバー」をあげることが出来ます。
近年、外食ではなく内食(自分の家でご飯を作り、食べること)、中食(買ってきた食品、飲み物を自分の家で飲食すること)の需要が増えたことに着目し、ビールの缶に専用の小型サーバーをつけることで、家でも居酒屋で提供されるようなクリーミーな泡を作ることができる機械をビールとセットにして販売、ヒットに繋げました。
▼▼▼サントリーを特集した記事はこちら
キリン
創立年:1907年 売上高:1兆9305億円 営業利益:1983億円 従業員数:30464人
キリンは、1907年に創立されました。ビール事業に始まり、1928年には「キリンレモン」を発売し、人気を博します。
1978年には現在のサッカー日本代表の国際親善試合、キリンカップのスポンサーを務めるなど、飲料業界以外にも足を伸ばしたビジネスを行なっています。
代表的な商品としては、「キリンレモン」「午後の紅茶」「キリン 一番搾り」があります。
<強み> キリンの強みは、高い営業利益率(10%以上)、そしてビール市場において国内シェア第2位(31.8%)であることです。
ビール事業においては、近年リニューアルした「キリン 一番搾り」や、新ジャンルに属する「本麒麟」の売り上げが好調です。
また、キリンは健康事業へ注力しています。微糖・無糖の清涼飲料水が売り上げが伸ばしたことからも伺えますが、飲料以外にも食品分野で新たな商品を数多く開発しています。
<課題> 課題は、強みでも挙げたビール事業にあると言えるでしょう。キリンはかつてビール市場のシェアを60%以上占め、業界を席巻していました。
しかし、アサヒの台頭によって、業界第2位に甘んじています。他の飲料ジャンルでも圧倒的に1位であるものがなく、ヒット商品の開発が急務と言えます。
<取り組み> キリンが売り上げを確実に伸ばしているジャンルとして、微糖・無糖の清涼飲料水が挙げられます。具体的な商品としては、「午後の紅茶 おいしい無糖」「ファイア ワンデイブラック」などです。
これも、緻密な市場調査、膨大な数の商品開発が成功につながりました。近年人々の健康意識が高まり、業界内でも、無糖の清涼飲料水への注目が高まっていました。
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アサヒ
創立年:1889年 売上高:2兆1202億円 営業利益:2117億円 従業員数:22194人
アサヒは語る上で欠かせないのが、1987年に発売された「アサヒ スーパードライ」です。このビールが他の商品と一線を画しているのは、日本初の辛口生ビールであるということ。
スーパードライが生まれた理由は、冒頭にも記した、市場調査をしっかりと行なったからです。80年代当時、それまで「商品を出せば売れる」「消費者はビールの味がわからない」といった風潮があり、市場調査の重要性を企業側は軽視していました。
その中で、アサヒは徹底的に市場調査をし、消費者が求める味をさぐり当てました。
<強み> ビール市場で第1位であり、「アサヒ スーパードライ」を擁する、他者を圧倒するブランド力が最大の強みです。
ビール市場以外にも、「カルピス」「三ツ矢サイダー」を筆頭とした清涼飲料水市場でも安定的なシェアを誇っています。
どちらにも言えることが、「ロングセラー」の商品開発に成功しているということです。飲料以外にも、食品事業を手がけるアサヒグループ食品は、ミンティアなどのヒット商品の開発に成功しています。
飲料だけでなく、食品にも強みがある点がアサヒグループ全体の強さと言えるでしょう。
<課題> アサヒが抱える課題は、圧倒的なシェアを誇るビール市場以外のお酒の販売に苦戦しているということです。
また、ビール市場は年々縮小しており、チューハイなどのその他のジャンルでヒット商品を生み出すことが直近の課題と言えるでしょう。
<取り組み> 「アサヒ」のブランド価値を底上げするために、多くの新商品に関して、「asahi」のロゴが全面にに押し出されています。また東京オリンピック・パラリンピックに向けて、中長期のブランドスローガンを"THE JAPAN BRAND"とし、ブランド価値の訴求を狙っています。
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飲料メーカーのESで求められる設問とは?
ここからは、飲料メーカーのエントリーシート選考(総合職)において求められる設問について解説していきます。
今回取り上げた飲料メーカー大手三社のエントリーシートに共通しているキーワードは二つです。
それは、「チーム経験」「挑戦(困難をどう乗り越えたか)」の2点です。
なぜこの二つが飲料メーカーの就活で求められるのでしょうか?
それは、飲料メーカーの総合職として働く場合、飲料メーカーは多くのビジネスパーソンと協業することが必須であるということ。そして、新商品の開発やクライアントとの交渉は常に困難が付き物であるからです。
では、具体的にどのような回答が求められるのでしょうか?一つ、具体的な解答例を紹介します。
設問:直面した課題を、周りを巻き込み、リーダーシップを発揮して乗り越えた経験をお答えください。
主将を務めた〇〇部で、全国3位を勝ち取った事。 【背景】所属する70名の部員の戦力差は大きく、突出した選手は少なかった。また、試合に出場できる人数は限られており、全員が試合に出場する事はできなかった。一方、例年部で立てられる目標は、「全国優勝」であり、部員全員が目指せる目標ではなかった。その為、部員の部活に対するモチベーションはバラバラであった。 【解決策】チーム全員の競技が好きだ、という想いは共通していた為、誰もが競技に没頭し続け、全員が同じ方向を向いて強くなれる環境を作りたいと考えた。 【取り組み】2つの取り組みを行なった。 (1)チーム全員が同じ目標に向かって突き進む為、「全員自己ベスト更新」という目標を掲げた。 (2)モチベーションの向上と継続の為、部員に短・長期目標を立ててもらい部内ホームページで可視化した。毎月その目標の達成度や反省を詳細に行い、共有した。 【結果】以上の取り組みより、部員全員が目標に対する当事者意識を持つ事、闘争心を煽り部内競争を活性化する事に成功した。結果、全国大会で前年7位から3位になることができた。
このESでは、設問に対してしっかりと答えていることに加え、具体的に書かれているために、選考官が情景を思い浮かべることができる形になっています。
また、【】を使って、起承転結をわかりやすく表現することで、読み手に伝わりやすい構成を心がけていることがわかります。
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まとめ
ここまで、飲料メーカー全体の仕事内容から、大手3社の飲料メーカーの詳細に迫りました。総じて言及できることは、業界全体としてビール市場が縮小しており、その他の新商品の開発、ブランド価値の向上といった対応策を講じているということです。
飲料メーカーへの就職を志望する就活生の皆さんも、「ビール市場が縮小している」という「困難」をどのように乗り越えるか、といった課題設定をして、自分の中で答えを作っておくことがおすすめです!
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