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社会起業家2人が語る、日本の公教育とその将来

今回は「LEAP」の「社会起業家セッション」の内容をお届けします。登壇したのは、株式会社LITALICO 代表取締役社長 長谷川敦弥氏、認定NPO法人カタリバ 代表理事 今村久美氏。若くして社会起業家として大きな成果を出すお二人は、なぜ社会起業に関心をもち、継続して成果を出すことができているのでしょうか。社会起業に興味がある方だけでなく、これから何かにチャレンジしようとしている方も、ぜひ読んでみてくださいね。

社会起業家2人が語る、日本の公教育とその未来

佐藤:せっかくなので来場者の皆さんとも、色々やり取りをしたいなと思っています。聞いてみたいことや、言っておきたいことがあればお受けしたいと思います。

質問者1:お話ありがとうございます。長谷川さんに質問なのですが、今後日本の教育にどのように取り組んでいくか、お聞きしたいです。

今IT教育など国が取り組もうとしている中で、現状、学校の先生など、手探りの状態が結構あると思うんです。子供達が1日の1/3ぐらいの時間を過ごす学校という場で、その教育を変えることができれば、障害のない世の中に本当に近づくのではないかなと考えています。その点についてお伺いしたいです。

佐藤:もうビジョンを持っていそうな感じですね。後で長谷川さんお願いします。もう一人質問受けましょう。

質問者2:ありがとうございます。今村さんにお聞きしたいのですが、ご自身でもおっしゃっていたように、自己肯定感が低いということを認めている中で、より一層、自分に対して深く内省する時に「ああ、やってしまった」「なんでこんな気持ちにならなきゃいけないんだ」という気持ちになったことがあったかと思います。

そんなときに、なぜ折れなかったのか、支えになっていたものって何だったのか、どうして支えられるものがあったのかということを具体的にお聞きしたいです。

佐藤:ありがとうございます。ではもう一人指します。

質問者3:ありがとうございます。長谷川さんにお聞きしたいのですが、障害のない社会を作ろうとしても、当事者意識を持ってない人は、自分は関係ないと思ってしまうと思うのです。そういう当事者意識がない人たちに対して、どう巻き込んでいくのか、どういうアプローチをしているのか、具体的なものがあったらお聞きしたいです。

佐藤:ありがとうございます。では長谷川さんからお願いします。

長谷川:一つ目、教育に関してですが、民間としてできることの方がどんどんこれから増えると思います。 民間ができること、ビジネスやお金の力、技術の力が高まっているので、どんどんパワーが大きくなっていく。民間が果たせる教育の役割というのが非常に大きいのではないかと思っています。

そういう意味でLITALICOは民間としての教育サービスを作り続けるというのと、家庭教育にアプローチしたいですね。親御さんがお子さんと向き合う時間が一番長かったりしますし、幼少期の時期の親御さんとの関わりって非常に重要なので、親がやっぱり親になる前後で教育を学んで親になっていく必要があると思うのです。

子育ては重労働です。重労働でも企業の中であれば、上司がいたり、横の仲間がいたりして、支える仕組みがありますね。でも子育てってそれを支える資源があまりにも少ないので、僕はその親御さんを支える資源も含めて、親向けの教育を作っていくことが大事だなと思います。

次に2つ目の質問について。僕の目的は「障害のない社会をつくる」ということです。そこに向けて僕はいろんな人を巻き込むべきだと思っています。ただあえて難しい人から巻き込みません。巻き込んで、ちょっと話をすればすぐ変わっていく人たちから変えていくっていう方が効率がいいのです。

ある種世の中の大多数というのは何かの空気で動いています。だから新しい動きとか、今の仮想通貨もそうかもしれないけど、5%か10%ぐらいの人が取り組んでいる時は、「変わり者が何かやっているな」と思われる。でも2割ぐらいを超えてくると、 深く考えずに「前から俺もいいと思っていた」と便乗してくるのです。

だからいかに2割の人を早く掴んで、早く変化させるかが、僕は戦略的に重要だと思っているので、難易度が高い、当事者意識がない人からいかない。当事者意識の高い人から巻き込み方をした方がいいなと思っています。

佐藤:それでは今村さん。質問にお答えいただければと思います。自己肯定感が低い中で、何が自分を支えていたのか、というご質問でした。

今村:ありがとうございます。私はさっき言った通り、ものすごく勢いのある、東京に集まる優秀なエリートしか社会を変えていけないという感覚が嫌でした。だから環境的に不利な立場に居ても、その人たちが不利な状況にあっても、パワーにしていけるということを実現したかったという想いは、私がずっとやってこれた支えになっていると思います。

佐藤:ありがとうございます。

時間がなくなってきましたが、あと3人ほど質問や意見を伺いたいと思います。

質問者4:今村さんに質問です。意欲と創造性を育むために、一年間の実践型教育インターンを始めたと思うのですが、どういう思いで始めたのかお聞きしたいです。

今村:今、学校の職員の中で、既存の学校のシステムのために積み上げられた歪みがたくさん起きています。

一番起きている歪みは、先生方の自己肯定感を下げてしまうこと。それは、先生の忙しさや、全てのクレームが学校に行くという社会が原因だと思っています。

そんな学校という現場に、大学生という立場で客観的に入る人達を増やして、その人たちがきちんと学校の難しさ、学校の大変さというところに伴走する。そして、何でも新しいことを導入するわけではなくて、こんなことをすれば一歩前に進む、そんなアイデアをどんどん出すことで、学校や教育を新しくできればと思っています。

そんな思いで、実践型教育インターンシップという制度をカタリバでは作りまして、月10万円の奨学金と、シェアハウスと、自分の家からの往復の交通費を年に何回分か出すことで、現地に入ってもらっています。特に社会起業家を目指すような方々には、そういう現場で起きているリアリティを知っていただく機会にしていただきたいと思っています。

佐藤:折角だからご紹介しましょう。実際に経験している方が会場にいるのですよね。

今村: 実際に福島で活動をしている野崎くんです。自己紹介をお願いします。

野崎:皆さん、こんばんは。僕は起業という形ではないのですが、実践型教育インターンを通して、自分の持っていた問題意識を、実際に1年間行動したという立場から、お話できればと思います。

僕が持っていた問題意識についてです。学校ってどうしても放っておくと、だいたい3つの軸で人が評価されてしまう。1つは勉強。2つ目は、部活。特に運動部系かどうか。3つ目は、いわゆるリア充であるかどうか。だいたいそんな軸で評価されてしまうところが、特に高校までの段階だと多いように感じていました。

自分もそのような原体験を持っているので、公立の学校でそこに対してチャレンジをしようと思い、去年の1月に休学をして、現在活動をしています。

佐藤:ありがとうございます。では、次の方お願いします。

質問者5:お話ありがとうございます。今村さんにご質問なのですが、株式会社で起業する方が多い中で、なぜNPOという形をとったのかという点と、株式会社に今後していく可能性はあるのかという点、また今後のカタリバについて教えていただければと思います。

今村:確かに株式会社でやる選択肢は十分あったと思います。ですが、私には当時その選択肢を取れなかったです。それはもしかしたらそこに対する自信がなかったということもあるかもしれないですが、経済性が成り立っていないからこそ、課題が起きているというところにブレずに向き合えると考えたのがNPOを作った理由です。

これからもカタリバはずっとNPOであり続けると思っています。今は本当に良い社会になってきているので、寄付という新しい財源もきちんと集めながら、どんどん展開していきたいなと思います。

多くの人に、社会課題に取り組んでほしい

佐藤:ありがとうございます。では最後の方お願いします。

質問者6:お話ありがとうございます。事業に関する質問とは少し違って大変恐縮なのですが、お二方ともグラデーションのような課題をもつ子どもたちと関わっているのかなと思って。

例えば、病院で診断はされないけれど、自分の中でコミュニケーションの課題を持っていて苦しんでいる、でもネガティブだと思われるのが嫌で人にも相談できない、そんな人もたくさんいると思うのですね。

それは僕らの年代でもたくさんいると思うし、僕のまわりにもたくさんいると思うのです。そういう人にはどんなアドバイスをしているのでしょうか?

佐藤:要するに障害だと判定されていないグレーゾーンなところに対して、どんなアドバイスをしているかということですね。

長谷川:実際グレーゾーンの人がいっぱい来てくださっていますが、基本は一緒です。単純に自分が不得手とするところは何で、得意とするところは何で、じゃあ不得手のところで困り続ける人生はハッピーじゃないから、どうやってそれを自分で解決するのか、また周りにサポートをお願いするのかというのを一緒に考えていきます。

障害の重さでの違いはそんなにないですね。

佐藤:では、今村さんはどうですか?

今村:一つの考え方として、ポスト・トラウマティック・グロース(心的外傷後成長)という言葉があります。それはトラウマ体験の後の成長、ハンデの後の成長というものです。

トラウマやハンデを経験したからこそ、それを克服した後に見える示唆というのが、そのハンデがなかった人よりも増えているという考え方を前提に、どんな状況の人達にも関わっているつもりです。

佐藤:ありがとうございます。

最後に、今日のイベントのタイトルが「LEAP」ということで、「次のステップへ行こうぜ」ということだと思います。せっかく集まった機会ですし、これもチャンスなので、ここから何かやり取りが始まればいいなと思います。

遅ればせながら、僕自身は社会起業家と呼ばれることも多いのですが、仕事としては「お金」を扱っています。

今の時代、寄付や購入型のクラウドファンディング、投資や融資など、色んなお金を集める方法があります。学生ピッチのセッションでもでそういう話をされていたと思いますけれども、やりたいことが決まっていて、「よし、じゃあLEAPするぞ」と決めているのに、お金の問題でつまずくとか、お金の問題で次のステップに移れないということが、僕は社会の障害だと思ったからこの事業をやろうと思ったのです。

以前は、個人からお金を集めるのなんて無理だったんですが、ネットやSNSのおかげでそれができるようになってきて、僕自身もそういうのをやろうと思ってチャレンジ中です。

だから、僕もそういった形で皆さんのLEAPのサポートができればといいなと思い、LIFULL Social Fundingという会社をやっております。関心があれば、この後是非お声がけください。

それでは、ここでお開きにさせていきたいと思います。どうもありがとうございました。