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ネットプロテクションズ小川氏が語る、チームで物事を成し遂げるために必要なこと。

T×決済の領域で、絶対に不可能だとも言われた「後払い決済」サービスを運営。主軸事業の一つである「NP後払い」では1億人もの累計利用者数を達成した、日本屈指のベンチャー企業、ネットプロテクションズ(以下、NP)。今回は、そんなNPで新たな決済事業「atone(アトネ)」のマーケティング責任者を務めている小川氏にお話を伺った。 小川氏は、事業を作るためには優れた企画、戦略だけが重要ではないと語る。強い事業を作るために絶対に必要な条件とは何か。

Fintech領域の雄、NPとはどんな会社なのか?

ー本日はよろしくお願いします。早速ですが、まずは会社についてお伺いしたいと思います。NPといえば、今話題の「Fintech」領域で活躍する企業というイメージがあります。一体どんな会社なのでしょうか?

NPは、2002年に日本で初めて後払い決済事業を始めたパイオニアカンパニーです。「NP後払い」事業を通じて、BtoC通販における後払いをつぎのアタリマエの決済方法にまで成長させてきました。現在は、BtoB市場において、あらゆる企業間の取引をスムーズに実現させるべく、「NP掛け払い」事業を展開中です。

今後は、決済事業を通じて蓄積されたビックデータや資金、ノウハウ等のアセットを活かして、周辺領域で新たな事業を立ち上げていこうというフェーズにあります。具体的には、購買データを活かしたリコメンド事業や、信用データを用いた融資事業等の展開を検討しております。

さらに先の未来においては、決済やその周辺領域に限らない第三領域での新規事業を興して、会社としてさらに成長スピードを増していこうと考えております。例えば、幼稚園経営やシンクタンクの立ち上げかもしれませんし、もしくはNPO等のようにそもそもビジネスから離れた活動をするかもしれません。

ーなるほど。今は決済領域に閉じているけれど、今後は周辺領域での新規事業構築や第三領域での活動を見据えているのですね。新規事業といえば、直近で、小川さんが事業立ち上げをされた「atone」のローンチが発表されました(2017年6月)。こちらはどんなサービスなのでしょうか?

「atone」はカードのいらない、クレジット決済。スマホさえあれば、携帯番号とパスワードだけで、誰でも、いつでも使える決済サービスです。消費者の方々によりスムーズなお買い物を体感してほしいと思っています。

3年間で様々なことを経験。事業を作る基礎力を学んだ。

ー現在、小川さんはatoneの立ち上げに全力投球されているかと思うのですが、事業企画に取り組まれるまでは、どんなキャリアを描かれてきたのでしょうか?

私は新卒でネットプロテクションズに入社しました。まさしく事業を作りたいという思い1点で入社を決めました。

社会人1年目はいわゆる営業。「NP後払い」を多くの店舗様に使っていただきたいと、営業活動に取り組みました。

その後2年間はカスタマーサービスの部署で働きました。お客様の与信審査をしたり、お問い合わせを受けたり。

カスタマーサービスでは、お客様から「こういう改善をしてほしい」という要望をたくさんいただきます。そういう要望を実際にサービスに組み込むためのシステム企画を、社長直下のチームで、私を含めた社員2名で推進しておりました。

そのうちに、社長から「そろそろ、次のアタリマエとなる新たな決済サービスを考えたい」とお題をいただいて、当時同じチームにいたメンバーと二人でいよいよ事業企画をすることに。それが、先日リリースしたatoneです。

ー営業やカスタマーサービスで過ごした初めの3年間。事業を作りたいと思って入社した小川さんにとっては、不満の残るものだったのではないでしょうか?

その点、私はあまり焦ってはいなかったんです。むしろ、振り返ると非常に重要な3年間だったなと。

私はそもそも、事業を作る上ではいきなり実践ではなく、まずは事業や会社というものを知る必要があると考えていました。

その上で、まず営業という仕事は絶対に必要だろうと考えていたんです。事業を広げるために重要な役割だと思って、意欲を持って取り組んでいました。

そして、カスタマーサービスグループでの経験は、まさにサービス作りを学ぶことができた2年間。今振り返ってみると、新規事業の立ち上げにとって、一番大事な経験だったのではないかと感じています。

ー具体的には、どんな力が身についたのでしょうか?

カスタマーサービスという部署は、お客様からサービスの課題を伺って、それを解決するサービスを作る、改善の現場です。その一つひとつの改善は小さなものですが、サービスを一から作り上げていくという経験をそこで得ることができました。

改善は「こうしたい」と思うだけではいけません。責任を持って自ら達成するんだという主体性が重要です。

その改善を実現するためには何をするべきか。どういう設計をして、どんな人に仕事をお願いすれば、そのサービスが形になるのか。そんな実現までのフローを詰め切らなくてはいけません。

そうして自分の提案した改善が完成すると、今度はそれに対するフィードバックが市場から得られます。それを真摯に受け止めて、さらに次の改善につなげていく。

そのフローは、まさに事業を作るということ。そういったことを何度も繰り返し訓練できたことが、今の自分の力に強く結びついていると感じています。

ー事業作りの基礎力を身につけることができた3年間だったということですね。

まさしくそういう3年間でした。他にも、マーケティング、プログラミング、新卒採用、全社の予算策定などにも取り組んでいたので、事業を作るのに必要な一連の事象を、大枠ですが理解できているという感覚があります。

その上で新規事業に取り組むと、今はどこに注力すべきなのか、どんなタイミングでどんな仲間を巻き込めばいいのか、どういうことが足りないのか、そんな事業の勘所がわかるんです。

それが、事業開発の際に非常に役に立ちました。事業というものの輪郭を知った3年間だったと言えるでしょうか。

事業を作るために、本当に必要なものは何か。

ー事業を作るための素地が重要ということですね。新規事業に関してもう1点気になっていることなのですが、これから始まるネットプロテクションズのサマーインターンのキャッチコピーは「事業を作ろう、でもその前に」。この言葉から想像するに、事業づくりの前に何か大事にされているものがある、ということなのでしょうか?

そうですね。先ほど話したような能力は事業のために必要であると思う一方で、最も重要なことだとは思いません。「想い」と「チーム」、この両輪が最も重要だと私は考えています。

まずは、「想い」について。

「誰かのためにこんなことをやってあげたい」「こんな価値を提供したい」、そんな想いが重要です。そういった想いやビジョンがなければ、そもそも人は集まりません。チームとして一つの物事を達成する上での強いコアが必要です。

そういったことを体現するのが、経営者や事業責任者であると思っています。

ーしかし、チーム作りをするためには、ビジョンを打ち出すだけでもダメですよね。小川さんはどんな風にチーム作りをしているのでしょうか。

結論から言うと、組織の理想と個人の理想を重ねる、そんなことが必要だと考えています。

壮大なビジョンを打ち出したとしても、はじめから、チームの全員が100%同じ大義を達成したいと思っている状態は、ほとんど無いだろうと思います。そんな時に、「これを達成したい」と一方的に押し付けても、チームは崩壊してしまいます。

事実、今回立ち上げた「atone」も、「世の中の取引を、もっとスムーズにしたい」という想いを持って進めていますが、チーム全員がそのように思い、言い出したわけではありません。

でも、それで良いんです。事業に関わるきっかけとなる理由の100%が、ビジョンへの共感じゃなくても良いと考えています。

事業に対する少しの共感と、事業が理想状態になるまでの「プロセス」への共感があれば、組織の理想と個人の理想は徐々に一致してくる。

僕は漫画「ワンピース」がすごく好きなのですが、彼らのチーム作りのプロセスは、事業構築にとても参考になると思っていて。

海賊王になりたいのは、ルフィだけの想いでした。例えばゾロは、世界一の剣豪になりたいと思ってルフィについてきています。しかし、次第にそういう人たちは、真ん中にいる人の想いを叶えるための剣豪になろうと、ミッションが変わってくるんです。

「自分のため」から「人のため」「チームのため」になっていく。組織の理想と、個人の理想がだんだんと重なってくる。そうして本当に強いチームができ上がる。そんな過程が事業構築でも起こっていると、私は思っています。

弊社のエンジニアの例を挙げると、事業に対しての共感もある一方で、メンバーになってくれた一番の強い動機は、自分でサービスを開発したり、会社の開発力を向上させたりすることで、会社全体をより良くしたいという想いでした。それを試せる場の絶好の機会がこの事業であると考えてくれたそうです。

そんな想いから、自分の理想、チームの理想に対してすごく努力をしてくれて、活躍をしています。

ただ、そのためには先ほども申し上げた通り、一つの強いコアが前提となります。将来ここに行きたいという強い想いに、チームのメンバーが少しずつ共感して賛同してくれなければ、そもそものチーム作りが始まりません。

だから、ビジョンは重要なんです。インターンなどでも、小手先のフレームワークを使って、なんとなくニーズがあって、売上があがりそうだな、と作り上げられた事業計画をよく見かけます。

でも、メンバーが心からその事業には賛同できていなかったり。そんな事業は、計画書では綺麗に見えるけれど、本当に強いチームを作って、理想を体現することはできないだろうと思うのです。

だから、「想い」や「ビジョン」、それに対する「チームの共感」は、新規事業を作りたい人には、本当に強く意識をしてほしい部分だと考えています。

ーありがとうございます。「想い」と「チーム」。なかなか簡単ではなさそうですね。これからサマーインターンに参加したり、学生団体や事業を運営しようと考えている読者の方々に何かヒントをちょうだいできますか。

簡単ではない大きな理由の1つは、多くの人はあまり想いを表に出そうとしない点ではないでしょうか。

自分がやりたいことを言うことを、恥ずかしいことだと思ってしまう。周りの人も、何を声高々に言っているんだ、どうせできないだろうと馬鹿にする風潮がある。

でも、そんなことを気にしなくていいんです。どうやったらそれを達成できるかだけを考えればいいんです。

その上で、チームにおいては、自分の想いに素直になって、それを発信することが大事だと思っています。互いにそれをすることで、お互いを尊重して一つの想いを組み立てられるのだと思います。

仮にそれで折り合わなければ、チームとしてそもそも組まない方が良いはず。でも、それはそれで良いんです。徹底的に話しあって「今回のプロジェクトは一緒にできないね」となれば、それは良い別れ方。

それぐらいやらなければ、何となく納得感がないままに事業を作っても中途半端なものになってしまうと思います。 そんな風にお互いの想いを共有して、一緒にやろうとなって、ようやくその先にはとても楽しい世界が待っているんだと思います。

「事業を作ろう、でもその前に」。チーム作りを本気で学べるインターン。

ーありがとうございます。最後になりますが、今まさに19卒の皆さんはサマーインターンに挑む真っ只中。ネットプロテクションズのインターンに参加することのメリットをお伺いさせてください。

先ほどお話したことのまとめにもなりますが、インターンでは5日間、徹底的に「社会の理想」「個人の理想」「チームの理想」を追求してもらうことになります。また、その理想を実現するための事業を本気で立案していただきます。

小手先の戦略論、知識、テクニックで事業計画書を作ることにはフォーカスしていません。インターンのプログラムだから薄っぺらな計画書を作ればいいや、ではなく、本当に事業を作るんだと考えた時に、必要になってくるチーム作り、ビジョン作りを経験していただきたいなと思っています。

将来事業を作りたいんだ、将来会社を経営したいんだ、チームで何かを成し遂げたいんだ、そんな気持ちを持っている方にぜひ参加いただきたいインターンです。(僕も、審査員メンバーとして関わります!)

ー本日はありがとうございました。事業作りに興味のある皆さんは、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。