ベンチャーは微分、大企業は積分?
仕事の川上と川下の特性の違いから適正を見極めるという本連載。今回は特に「ベンチャーか大企業か?」を考える上での視点について、その選択の参考となるような違いの新たな側面をご紹介します。
今回の切り口は「微分のベンチャー」と「積分の大企業」という違いです。
ここでいう「微分」というのは、「変化(率)」であり、フロー(日々の体験)のことを意味し、「積分」というのは蓄積の総和であり、ストックのことを意味します。
端的に言えば、蓄積は少ないが変化の大きいベンチャーに対して変化は小さいが蓄積は大きい大企業という違いです。
ベンチャー、とりわけ創業直後のスタートアップには「ヒト・モノ・カネ」の蓄積もなければノウハウの蓄積もほとんどない代わりに日々のエキサイティングな(良くも悪くも)経験が待っています。
対する大企業は変化に乏しく、良くも悪くも安定している一方で、ヒトモノカネの蓄積は膨大です。これらの関係は下図のような形で表現することができます。
このような構図を考えると、いずれはベンチャーに行ったり起業したりする上でも「まずは大企業」という選択肢も有力なものに見えてきます。
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リソース豊かな場所で働くメリットとは
ヒトもモノもカネも、あらゆるものが「ないないづくし」である新入社員にとっては、豊富なリソースのみならず様々なノウハウも蓄積されている大企業にはそこから学ぶものがたくさんあります。
したがってまずはそのような環境でとにかく「盗みまくる」ことで成長することができるのが大企業で若手が働くことの最大のメリットです。
ところがそのようにして学びながら成長していくと、ある地点で物足りなさを覚えていくことがあるのも大企業です。
前述の通り、蓄積はあるが変化は小さいのが大企業の特徴ですから、ある程度自分自身にとってのノウハウが蓄積されてくると、その「成長スピードの遅さ」が気になってくるのです。
一方でベンチャーは「微分」としての変化が大きいので、日々の業務は(良くも悪くも)変化に富んだものになるでしょう。ある程度蓄積ができている人間にとってみればそれは得難い経験になるはずです。
一般に大企業からベンチャーに行くことは逆よりも容易ですから、その不可逆性を利用するという点でも、「まずは大企業」という選択肢は理にかなっています。
ただし、逆に様々な点での「蓄積」がないために、ビジネスについて右も左も分からない新入社員にとっての基本を着実に覚えることでは大企業には敵わないでしょう。
また性格的にも「決まっていない」ことが愉快な人には向いていますが、ある程度最低限の仕組みが用意されていなければ不安な人には不向きであるといえます。
このように考えてくると、「まずは大企業に入る」という選択肢が多い理由も上記の観点からある側面で理にかなった選択であることがわかります。
まずスキルも実績もない新卒の時代には「大企業の蓄積」を当てにし、ある程度自分の中で実力がついてきたら、むしろ「成長率」の方に視点を移してベンチャーのような変化の激しい場所に身をおいてみるのは長期的な成長戦略にも合致するのではないでしょうか?
このように「フローかストックか?」あるいは「微分か積分か?」という観点で自分の志向と照らし合わせて就職先や職種を考えてみるのも視点として面白いと思いますので是非参考にして下さい。
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