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「日系大手メーカー、外資戦略コンサル、急成長ベンチャーを経たCHROが語るキャリアの築き方」

新卒で入社してから3年後「就職活動をやり直したい」と考える社会人は約50%。この数字を1%でも減らすため、「未来をつくる君たちへ伝えたいこと」と題し、各界の経営者達が大いに語ったイベント「Career Theater」。当記事では、株式会社GA technologies(以下GAテクノロジーズ)CHRO清家氏のご登壇部分をご紹介します。就活生が考えるべきキャリアの築き方。「人に向き合いたい」という思いで人事の道を歩む清家氏の、キャリア観は必見です。

「人と向き合いたい」思いで選んだファーストキャリア

清家:皆さん、こんにちは。GAテクノロジーズの清家と申します。CHRO(Chief Human Resource Officer)をしております。神戸出身、神戸大学卒で今年36歳、社会人13年目です。

今日は、まずみなさんにお聞きしたいことが2点あります。1点目は、少し変わっているのですが...この中に大学でフィギュアスケート部に所属している方はいらっしゃいますか?いないですか?

(就活生が数名、挙手)

何名かいますね。めちゃめちゃうれしい。私、体育会のフィギュアスケート部出身なのですが、その話もちょっとこのあとの話に出てきます。

もう1点目がですね、この中で10年以内に転職するんじゃないかという方、手を挙げていただいていいですか。

(多くの就活生が挙手)

ありがとうございます。半分ぐらいですかね。私が就活したのは2005年ですが、多分そのときには手を挙げる人はほぼいなかったですね。

今、手を挙げていただいた方々、もしかしたら気付きがあるかもしれません。もちろん、手を挙げなかった方にも、なにか気付きがあるようなお話ができればと思っていますので、よろしくお願いします。

まず簡単に弊社の説明をさせてください。現在7期目の会社で、PropTechやConTech(またはFinTech)を中心に、クロステック(従来のビジネスにテクノロジーを組み合わせたもの)を進める会社です。

昨年の売上高は201億。過去5年間、毎年2倍の成長を遂げており今年は約360億円を見込んでいます。この成長のスピード感は、サイバーエージェントさん、楽天さんを超えるような速度です。日本で一番成長しているベンチャー企業だと考えていただければと思います。従業員はグループ全体で約350名。19卒の方々は大体45名ぐらいです。職種ではエンジニアの割合が40%というテックカンパニーです。

さて、現在は「終身雇用の継続がなかなか難しくなる」ということを、トヨタのトップがお話されるような時代です。そんな中で、今回は皆さんのファーストキャリアの選び方というテーマで、実体験を踏まえてお話しさせていただきます。何かの参考になれば幸いです。

今日お話しするキーワードは3つです。1つ、ドラクエ。2つ、ダーウィン。3つ、不動産。この3つに紐づけてお話しします。

まず私のキャリアについて、概要を少しご紹介させてください。

2003年に神戸大学に入学し、2007年にAGC、当時は旭硝子という社名でしたが、そこで職種別の人事という形で入社しています。

AGCで国内と海外の人事を5年ほど経験したあと、アクセンチュアというコンサル会社で戦略コンサルを3年ほど、そのあとDeNAという会社で人事のマネージャーを3年ほど経験しました。

その後、ビズリーチという会社でニクリーチやビズリーチ・キャンパスといった事業の責任者を経験した後、今年の3月にGAテクノロジーズへCHROとして入社しています。この詳細は後ほどご説明いたします。

詳細をお話しする前に、1つ注意点があります。

みなさんは「キャリア選択」というと、どこの会社がいいとか、いつから誰とどのように働くかなどを考えていらっしゃると思います。しかし私は、そういったことは、そこまで大事ではないと思っています。

もっと言うと、今日キャリア講演をされている方々も、学生時代はそれほど就活のことを考えていなかったと思います。ただキャリアをスタートされた後は、そのキャリアに関して徹底的に考えられた方が多いのではないかと、個人的には推測しています。

なので、私の話も1つの参考としてお聞きください。

では、私のキャリアについて、ターニングポイントをメインにお話しします。

まず1つ目の大きな転機が、大学の部活動です。先程申し上げたフィギュアスケート部に入ったのですが、高校まではテニスをしていたので、入部したときは完全に初心者でした。ではなぜ入ったかというと、当時の部長が、僕が出会った中で初めて、ロールモデルになるような人だったからです。その人がいなければフィギュアスケート部には入っていなかったと思います。

1年目、2年目は自分の成長が喜びだったのですが、3年目になって「清家、主将をしてくれ」と頼まれ、その期待を受けて部長になりました。

主将のミッションは、部の存続と成長なんですね。部の存続って実は極めて難しくて、例えば今手を挙げていただいたとおり、ここに4、500名いらっしゃっても、フィギュアスケート部の方は1、2名しかいない。

入部してくれる学生が本当に少なくて、大体500人に声をかけて、1人入ってくれるかくれないかというイメージです。

なんとか入部いただいても、次はモチベーションの管理と育成が極めて難しい。例えば、何で大学に入ってまで、体育会で週に5回も練習するんだと。お金がかかるし、怪我も多い。他にも、練習場所まで遠いなど、モチベーションを崩す要因が多い種目です。

あとは育成ですね。同じ性別や年齢でも、体格、過去の部活、運動経験などによってプログラムを変えてあげないと成長できなかったりします。

しかしこういった状況で活動しているうちに、自分が2回転ジャンプを飛べるようになるというようなことよりも、部全体の成長の方が自分の喜びになっていったんですね。

この経験から、「人と向き合うことを自分の人生の仕事にしたい」と思い、人事という仕事を主軸に就活をしていました。

結果的にAGCという会社だけが私を拾ってくれたのですが、当時、職種別の採用をしている会社はほとんどなかったですね。この会社で次のターニングポイントを経験するのですが、当時はまずAGCに入社できた時点で、非常に嬉しかったです。

40歳で年収1,000万。10年後の退職率5%、60歳からは年金が400万もらえるみたいな。今も多分それくらいだと思うんですけど、当時はそういう会社でした。

新卒2年目で社員300人を解雇

清家:このような待遇だったので、入社当初は辞める気なんてまったくありませんでした。入ることがある意味ゴールだったかもしれません。

ところが、社会人2年目で2,000人の工場人事をしていた際、ターニングポイントが来ます。それは何か。リーマンショックです。工場で働く2,000人のうち、300人を解雇しました。社会人2年目の私が。対象者は、50歳から60歳ぐらいの会社を支えてくださった方々です。

人事という仕事柄、その方々の家族や人となりもすべて理解していました。その上で、お仕事がないことを伝えるのは、本当にとてもつらかったです。

めちゃめちゃつらかったけど、一方でちょっとドライなのですが、改めて自分を振り返ったところもあって。

「30年後、時代がどうなるかわからない。俺もこのままこの会社でただ働いているだけでは、こういうことが起こるんじゃないか」と思いました。

当時、社会人2年目だったのですが、このころから改めてキャリアを考えるようになります。その結果、AGCで自分の経験値を高めたあとは、その経験を生かして次のステップに行こうと決めました。

まず、自分は人事の道を歩んでいきたいので、そのキャリアアップをしていきたい。加えて、「インターネットカンパニーで働く」という目標を定めました。

どうなるかわからない時代を生きて行くためには、変化に適応できるようにならなくてはならない、と思ったんですね。なので、変化の大きなビジネスモデルで働こうと思いました。インターネット業界は、新しいビジネスが生まれやすく、変化が起こりやすいと考えられます。そのため、DeNAと決めてはいなかったんですが、インターネットカンパニーの人事になりたいと考えていました。

ただ、今自分がそこに行けるスキルセットはない。だからアクセンチュアという会社で短期間で一気に修行したいと思い、一流の経営陣と仕事をするという経験をさせていただきました。

そして、DeNAで人事のマネージャーをすることができたのですが、ここでまた壁にぶち当たります。 当時、執行役員の方々と一緒に仕事をしていたのですが、「清家、おまえはコンサルか。清家、おまえは人事か」と毎回言われていました。

「何ルールばかり作っているんだ、事業をつくれ。事業を泥臭くつくるというのはどういうことなのかわからないのか。おまえは事業を前進できる人事じゃないのか」と、常に問われました。

そこで気づいたのが、事業をつくった経験がないと、人事の仕事も限界がくるということです。制度を作る人になれる、もしくは採用を出来る人になれる。でも事業をつくれなかったらその次のステップはない。そう思い、自分は事業をつくる方に振り切ることに決めました。

そのときにDeNAでやるのか、もしくは次の会社でやるのかというのは迷っていました。最終的に、自分の経験は人事畑であり、その経験を生かして事業をしたいと思い至り、ビズリーチという会社で事業の責任者を務めることになりました。

一方で、ずっと人事というキャリアを歩んでいきたいと思っていたので、DeNAに在籍していた時から個人事業主として人事コンサルタントもやっていたんですね。

そのときの1社としてGAテクノロジーズという会社を1年半、個人でご支援をしていて、社長からずっと「うちの会社に来てくれ」と言われていました。

そのうちに会社の雰囲気などを知り、「GAを日本で一番社員が幸せな会社にしたい」と思って転職を決意。晴れて今の会社に入社しています。

さて本題、先程この3つのキーワードをお伝えしました。ドラクエ、ダーウィン、不動産。これらが私のキャリアとどうつながるのかをご説明します。

キャリアとはドラクエのようなもの

清家:先ほどお話ししたように、私のキャリアは企業人事からスタートしました。

その後、人事・経営コンサルティングという2つ目の職種を経験して、次の扉が開いたんですね。DeNAでHRビジネスパートナーという仕事ができることになりました。これは事業長付の人事で、どちらかというとハイレベルなお仕事です。ここで止まるかと思いきや、ビズリーチで事業の責任者をさせていただくことが出来ました。企業人事、コンサルタント、人事のマネージャー、事業の責任者、これら全てを包含して、やっと今CHROの仕事が出来ています。

これ、ドラクエの職業システムと同じかなと私は思っているんですね。戦士と武道家を足し合わせてやっとバトルマスター。魔法使いと僧侶を足してやっと賢者。2つを掛け合わせて、次の新しいキャリアがある。おそらくこれが、皆さんがこの先リアルに進んでいくキャリアの道かなと思っています。

私は運良く、社会に出る前に自分がしたいことを見つけました。でも、見つからなくても別に構わないんですよ。ただ、最初に与えられた仕事で得られるスキルを徹底的に磨いてください。それがきっと武器になります。徹底的に磨くと、それを使うことで次のキャリアが間違いなく開けます。

最初のキャリアが見つからなくても、自分がやりたいことが見つかったときのエネルギーを育んでいくこと。そのために武器を徹底的に磨いておくこと。この2つを忘れないでほしいなと思います。

先程申し上げた通り、私はAGCに入った時は、会社を辞める気が全くなかったんですね。ただリーマンショックという、自分ではどうしようもない事件が起きた。予想できない変化に適応した結果、充実した今があると思っています。

完璧で夢のような企業なんて存在しない

清家:キャリアが前に進んでいったとき、進化できない人は淘汰される。ここでダーウィンが関わってくるのですが、今の世界は非常に早く変わっていきます。なので進化しないと死ぬ。もしくは進化することを覚悟する。これが皆さんの時代には大事じゃないかと思っています。

事実、1996年の世界時価総額ランキングを見ると、トヨタさんが世界5位など、ものづくり系の会社が上位に入っていらっしゃる。さらにそこから10年ほどさかのぼると、日本の銀行が多数ランクインしている時代がありました。

現在のランキングではどうでしょう。昔は日本の銀行が世界トップの時価総額だったのに、あっという間に淘汰され、現在はGAFAと呼ばれるインターネットカンパニーが上位を占めています。

これを誰が予想できたか。誰もできなかった。もちろん私も、この先10年20年後がどうなるかわかりません。だからこそ、変化に適応できる姿勢を皆さんに持ってほしいと思っています。

例えば、皆さんの身近なところでいうと、私の時代は就活で使うサービスと言えば、リクナビかマイナビくらいしかありませんでした。でもこうやってエンカレッジさんですとか、他にもいろんなサービスが出てきています。今はそうでも、10年後にはまた変わっているかもしれません。そしてその新しい変化に適応できなければ、淘汰されてしまう。

そんな変化の時代に、皆さんは生まれているのだということを理解していただきたいと思います。

加えて、キャリアは、部屋選びと一緒かなと思っています。例えば部屋を選ぶときに、駅徒歩何分とか、部屋の広さは変えられないじゃないですか。でも、どういう家具を置くとか、どんな間取りにするとかは変えられる。もっというと、ワンルームをさらに半分にするみたいなことも、オーナーさんがOKだったらできるかもしれない。

これは、会社と同じだなと思っていて。基本的に夢のようなところってないわけですよ。

どこの会社に入っても、絶対何らかの不満はある。でも自分で変えていけるような力を持っていて、その変化を許容してくれるところであれば、それはすばらしい会社かなと思います。

なので私が1点オススメするとすれば、変化を許容できる会社かどうかは見定めたほうがいいかなと思います。

とはいえ、今って就活のスタートですよね。まだまだ前述したような企業を見つけ出すことは難しいかもしれません。この夏にはおそらく、皆さんはインターンなどで3社ぐらい行かれると思います。

そうやっていろんな業界なり職種を知り、9月頃から徐々に対象を絞っていくと思うのですが、それが本当にためになっているのか、戸惑う時はありませんか?

入社された後もそうかもしれません。「今の自分の仕事に意味があるのか」と感じることはかなりの確率で起こると思いますが、そこは安心してください。

多分今日キャリア講演で話された方々もみんな同じ道を通ってきています。ずっと順風満帆なキャリアはないです。絶対に戸惑う時もあったはず。

それでも前進さえしていれば、いつか自分が目指す場所には必ずたどり着きます。目的地が見つかっていなかったとしても、いつか必ず見つけられる。

そこは信じて進んでいってほしいなと思っています。

最後に本日のまとめです。まずはドラクエのように、キャリアを掛け合わせて上位職を目指していくのもありだと思っています。

あとは、変化することを恐れないでください。そして変化を受け入れてくれる会社なのかどうかは、1つ見定めてもいいポイントだと思います。

とはいえ、ゴールまでの道は様々。気負いすぎず前に進んでください。

私のキャリアの話は以上です。本日はありがとうございました。