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楽観的ならベンチャーへ、悲観的なら大企業へ【細谷 功】

細谷 功氏、連載記事第10回。引き続きテーマは「大企業かスタートアップか」。今回は、「川上」「川下」という観点から、大企業とベンチャーで求められる発想の違いを明らかにしていきます。あなたが持っている発想は、大企業向きなのか、ベンチャー向きなのか。この記事を読んで考えてみてください。

「機会」なのか、「リスク」なのか?

「川上か川下か」の適正を、仕事の性質と自分の価値観や性格に合わせて考えてみようという本連載。今回は「性格が楽観的なのか悲観的なのか」を参考にしてみましょう。

よく引き合いに出る話ですが、半分水が入っているコップを見たときに「半分も入っている」と楽観的に考える人と「半分しか入っていない」と考える悲観的な人がいるという「ものの見方」の話です。

例えば友人が「一年間海外に留学して来ようと思う」という話を相談されて、「語学が上達するね」「いろんな価値観の人と出会えるね」「視野が広がるね」という肯定的な反応をする人と、「そんなことしてて就活大丈夫?」「一年遅れちゃうよ」「危険なんじゃない?」という否定的な反応をする人がいます。

もちろん話題によってどちらの反応かは違うのかも知れませんが、概ねどのような話題でも肯定的に「機会」を見る人と否定的に「リスク」を見る人がいるのではないかと思います。

本連載で繰り返している通り、このような性格や価値観の違いは絶対的な良否があるわけでなく、場面によってそれが強みになったり弱みになったりします。

それも本連載のテーマである「川上と川下」という視点である程度説明することができます。図1を見て下さい。

「川上と川下」で求められる発想の違いとは?

本書の連載でも繰り返し述べているように、川上というのは、「ないないづくし」です。コップの水の話でいえば、ほんの1-2割しか水が入っていないのです。

そこでは「ほとんど水が入っていないじゃないか」と考える人はやっていかれません。いくらでもないものを探すことはできますが、それでは一歩も先に進めないからです。

むしろそれを肯定的にとらえて「残りの空間にどんな液体を入れておいしくしてやろうか」ぐらいの想像力(妄想力と言っても良い)がなければ川上ではやっていけません。

逆の言い方をすれば、そういう発想の人にとっては限りない可能性があるということです。

対する川下では「ヒト・モノ・カネ」を始め、様々なものが豊富に揃っています。そのような場面では、その状況に甘んずることなく「それでもないもの」を執拗に探して80点を90点、そして100点に近づけていくようなストイックな姿勢が求められるのです。

川上で「最後の5点、10点」を詰めていって100点を狙うためには、「例外的なこと」「うまく行かなそうな理由」を探すことが大事ですが、川上では逆に5点や10点しかない状況にめげずにそれが100点(や場合によっては200点や300点)になったらどんなに素晴らしい未来が待っているのかを頭の中で勝手に妄想することが求められるのです。

例えば「ないもの」の代表がルールや規則です。「規則がない」ことを(何でもできると)愉快に思えるなら川上の仕事を志向するべきだし、「こんないい加減な状況じゃ何もできない」と思うなら川下の仕事を志向するべきです。

さて皆さんはどちらのタイプでしょうか?

少なくとも試験で求められるのはどちらかというと「悲観的に」ミスをなくしていったり例外的なことを徹底的につぶしていくことではなかったでしょうか?

その点で学校の勉強ができた人はほぼ川下的な発想は訓練できているでしょう。

そこで違和感を感じて、今ひとつ試験の世界になじまなかったような人は川上の仕事を考えてみるのも良いかも知れません。