FinTechとは何か?
―本日はよろしくお願いします。今話題のFinTech領域ですが、その実態がわからないという読者も多いのでは。
本日は、FinTechとは何か、今後金融業界はどう変化していくのかについて、お伺いをできればと思います。
まずは前提として、Finatextという会社について、簡単に紹介をいただけますでしょうか。
林:FinTechと言えば金融領域にテクノロジーの力を持ち込むことで、より良いサービスを作り上げていこうという領域ですが、我々Finatextもまさに、「金融をサービスとして再発明する」を理念として、事業を行なっている会社です。
現状の金融業界には、ユーザーから見た際に2つの大きな課題があると考えています。
一つは、ユーザー体験の悪さ。皆さんも銀行などに足を運ばれることがあると思います。そこでは、手続きが煩雑だな、書類が分かりづらいなと感じることが多いのでは。その体験を通じて「楽しかった」と感じる人はほとんどいないと思います。
そしてもう一つの課題が、サービス提供者とユーザーの間の情報格差です。今の環境では、投資信託などの金融商品を紹介されても、ユーザーは理解ができないことも。そうした環境では、商品をきちんと理解し納得した上で購入をしていないユーザーが生まれてしまうことも考えられます。
その課題が生まれている背景には、金融業界の特性があります。
金融業界には複雑な規制や参入障壁があるため、ユーザーが使いづらいサービスであっても、企業にはそれを改善するインセンティブがない。
そして、私も金融業界に身をおいていましたが、業界内では、個人向けのサービス改善よりも、法人向けのサービス改善に力を入れる慣習がある。
そうした環境から、個人の消費者向けのサービスは一向に改善せず、課題が山積みのままです。
私たちが目標としているのは、そうした課題をテクノロジーとデータの力で解決すること。
金融をユーザーにとって「面倒臭いもの」「よくわからないもの」にしておくのではなく、もっと身近で簡単で分かりやすいものにする。そして、誰もが、人生を豊かにするツールの一つとして、金融を使いこなしている、そういった世界を作りたいと考えているのです。
ー一口に「金融」と言っても、非常に幅広い領域がありますよね。それが「FinTechってなんだろう?」と感じてしまう一つの要因なのかなと思います。
FinTechは、金融のどんな領域で、どんな変化を起こすのでしょうか?
小野:金融には様々な領域がありますが、FinTechが関与している領域は、主に3領域に分けられます。あくまでも、分かりやすさのためにすごく大雑把に分けている、ということはご留意ください。
まずは、資産運用系。貯金・投資信託や株などの金融商品の取り扱いなどを、テクノロジーを使ってサポートする領域です。複雑だった取引を簡略化したり、投資判断のサポートをするなどのサービスがありますね。
そして、決済系。例えば、コンビニなどで財布を開かずにスマートフォンでワンタッチで決済ができるサービスなどが、この領域に含まれます。言い換えれば、資金の移動をサポートするようなサービスです。
最後に、金融コンテンツ系。会計システムやリスクモニタリングシステムなど、金融機関向けのより優れたITシステムを提供する領域です。金融機関は潤沢な資本を持っていますから、市場としてのサイズが大きいのはこの領域です。
そうした領域において、テクノロジーによってより便利なサービスを生み出すのがFinTechです。
―Finatext社の場合は、その中でどのようなサービスを行なっているのですか?
林:私たちも様々なサービスを提供していますが、一つの軸は、既存の金融システムとユーザーを橋渡しするようなサービスです。
例えば、我々が展開している、スマートフォンを通じてユーザーが資産運用を手軽に行うためのアプリケーションもそうしたサービスの一つ。
我々が介在をする前の資産運用は、ユーザーにとっては「わかりにくいもの」でした。金融機関でのユーザー体験が悪かったり、金融知識の理解にストレスを感じたり。そういったハードルを、我々のサービスによって解消するようなイメージです。
そのハードルが下がることで、ユーザーは自分の人生を豊かにするために、手軽に資産運用に取り組むことができる。金融機関側としても、より多くのユーザーに資産運用を行なってもらえるというメリットがありますよね。
そうした橋渡しをすることで、今の金融機関の基盤を活かして、ユーザーにより大きな価値を与えるサービスを提供できます。その裏側をサポートするのが、我々の仕事です。
また、上記のようなサービスをあらゆる領域で提供している他にも、金融機関や政府向けの金融データ解析サービスを提供したり、他の事業者の金融サービス立ち上げをサポートする事業を世界で展開するといった活動を行なっています。
FinTech、金融業界の未来
―読者である就活生の目線から考えてみると、既存の金融機関の採用縮小などの悲観的なニュースもあれば、FinTechがこれから成長すると言われるなど、金融業界はどのように変わるのか、今後のキャリアを検討する上でも気になるのではないかと思います。
小野さんは投資家として、FinTech領域に投資をされているわけですが、今後の金融業界はどうなっていくとお考えですか。
小野:金融業界は、既存のプレイヤーの規模がものすごく大きいですよね。なので、FinTechがそうしたプレイヤーに今すぐ取って代わるかと言えば、そうではないと思います。
ただ、まさに林さんがおっしゃられた通り、金融は複雑な規制や参入障壁があり、ユーザーに対するサービス改善が長らく行われてこなかった領域です。
そうした領域で、ユーザーの本質的なニーズを満たすような新しいサービスが提供できるか。そこが担保できていれば、必ず伸びてくる領域だと考えています。
Finatextで言えば、そういった観点を理解されていて、金融機関とパートナーシップを結びながら、既存のサービスを改善して提供している。
そして、前提として、高いサービス開発力やデータ解析技術など、新しい価値を提供するための要素をフルで持っている。
そうしたサービス・会社は必ず金融業界で一つのポジションを取ることができるだろうと思っています。
林:私も小野さんと同様、これからのFinTechには大きな可能性を感じているんです。
これまでの金融業界にも、様々な進化やイノベーションがありました。
例えば、2000年代にはインターネットを専門としている証券会社が生まれました。わざわざ店舗に行く必要もなければ、コストも安く、非常に便利です。
そうした証券会社は今非常に成長しています。
でも、証券業界全体の運用金額シェアから見てみると、インターネット証券会社のシェアは13%。「あれ、まだまだ全然少ないじゃん」と思う人もいるかもしれません。
それこそ、就職活動においても、金融業界の人気企業と言えばメガバンクや大手証券会社。ITに関わる金融企業を志望する人はまだまだマイノリティですよね。
でも、長い目でみると、どこかで変革点が来ると思うんです。
今お金をたくさん持っていて、証券取引や資産運用を行なっているのは、上の年代が中心です。そうした人の多くはインターネット証券を利用していません。インターネットリテラシーもあれば、今まで築き上げてきた認知度や安心感の違いもあるでしょう。
しかし、20年、30年後はどうでしょうか。今インターネット証券を利用している若い人たちが、50代、60代になって、いわゆる「お金を一番持っている層」になる。
彼らは、その時、現状不便だと感じている金融機関の店舗に足を運ぶでしょうか。きっとインターネット証券を利用し続けますよね。
そうすると、インターネット証券が主流になる時代が来るのではないでしょうか。
そんな風に、優れたサービスが徐々に認知や信頼を獲得して、雪だるま式に成長していくのが金融業界なのかなと考えているんです。
それは、FinTechについても同様だと思います。
皆さんもきっと、どれだけ良いサービスであっても、今すぐにFinTechのサービスに全財産を投入したいとは思わないですよね(笑)
金融という領域の特性上、爆発的に成長して全員が使用するというサービスは生まれづらいと思います。
でも、10年単位で認知や信頼を得て、業界を大きく変えていく可能性はある。
そこに必要なのは、コスト競争力が高く、高品質なサービスを提供すること。便利で信頼性の高いサービスを提供し続ければ、必ず多くのユーザーに使われるサービスになっていくでしょう。
我々のような会社が、長いスパンで、本当にユーザーに便利なサービスを提供し続ければ、FinTechが金融業界をより良いものへと変えていくと考えているのです。
―FinTechによって、より便利なサービスが生まれていく。そしてそれが徐々に市場に浸透していく。それが金融業界の今後であると。これからさらに加速するFinTech、期待できる領域ですね。
キャリア形成の場としての金融業界・FinTech
―では、少し視点を変えて、キャリアについてのお話をお伺いしたいと思います。
多くの就活生は「金融業界」といえば、まだまだ大手の銀行や証券会社を中心に就職先を選んでいて、FinTech領域をファーストキャリアとして選ぶという人は少ないと感じています。
新卒のキャリアとして、FinTechという領域に踏み込んでいくことのメリットはあるのでしょうか?
林:まず前提として私の価値観としては「流す」ように仕事をするよりも「何か自分が価値を生み出すんだ」という気概を持って働く方が、人生は楽しくなると思うんですよね。
そう考えると、そうしたレベルの高い人に囲まれて仕事をする、若くして大きな課題にチャレンジする、当事者意識を持って仕事に向かえる環境を選ぶ、そういったキャリアを、若い人には特におすすめしたいと考えています。
「外資が良い」というお話ではないですが、私も外資系投資銀行をファーストキャリアに選んで、チャレンジングな仕事に取り組んで、優秀な人たちから色々なことを学んで、非常に面白いキャリアを歩むことができました。
一方で、そうした環境を選ばなければ、優秀な人であるほど「仕事がつまらない」と感じる可能性が高いと考えています。
単なる資料作りをひたすらこなします、研修を1年やります、そんな会社でワクワクするチャレンジができるかというと、そうではないと思います。
そういった会社に入るくらいならば、まだ小さい会社であっても、自分が先陣を切って戦う機会が多い会社の方が、どんどんレベルアップして、仕事も楽しくなっていくでしょう。
とはいえ「大企業ではなくてベンチャー」という括りで単純に考えるのはおすすめしません。大企業でも高い意識を持って頑張って取り組まれている方はたくさんいますし、ベンチャーにも「ベンチャーにいること自体」に満足してなんとなく仕事をしているという人もいますから。
そうした観点を踏まえてキャリアを選んで欲しいというのが、私からの就活生へのメッセージです。
その前提の元考えると、FinTech領域は今非常に魅力的な環境だと思います。
テクノロジーを活用して金融業界の課題を解決するというチャレンジングな事業に挑戦できる。その事業に全力を捧げる魅力的な人々と一緒に働くことができる。これから必ず成長していく領域で、若手にもチャンスが与えられる。
そうした環境で挑戦を続けていくことで、きっと「楽しい」キャリアを歩むことができると思います。
スキル面でも、今の時代、テクノロジーに関する知識があれば、あらゆる領域で活躍することができますし、金融の知識はなかなか陳腐化することはありません。若くしてそういった力を身につけられるのも、魅力の一つでしょう。
―FinTechの領域で働くと考えると、入社時点で金融の高度な専門知識を持っている、あるいはプログラマーとして高いスキルを持っているというイメージもあるのですが、そういったものは必要ないのでしょうか?
林:そういった知識がない人も大歓迎ですね。逆にいえば、中途半端に知識を持って凝り固まっている人よりは、今は詳しくなくても素直になんでも吸収していくぞという人の方が、活躍できるかもしれません。
小野:私もFinatextという会社をずっと見てきましたが、今エンジニアとして活躍している創業者二人も、元々は非エンジニアですからね。そこから会社を支えるエンジニアとして成長しています。
彼らもまだ26歳、27歳ですし、それでこれだけの会社を支える人材になっているのは、まさに先ほど林さんがおっしゃられた通り、魅力的な環境でどんどんチャレンジをしていった結果だと思います。
そういったことを踏まえると、FinTechって難しそうだな、専門知識が必要なのかなと考えて、敬遠してしまうのは勿体無いと思います。
林:本当にそうですね。FinTechに少しでも興味を持った人は、遠慮をせずにぜひ一度接してみて欲しいと思います。我々も歓迎をしています。
そして、もしそこでFinTechに興味を持てば、ぜひ業界に飛び込んでいって欲しいなと思います。そこには魅力的なキャリアが待っていると思います。
―林さん、小野さん、本日はありがとうございました!未知数なイメージも強い「FinTech」ですが、これから発展の期待ができる、魅力的な領域ですね。金融業界を志す人、IT企業を志す人は、ぜひ一つの選択肢にしてみてはいかがでしょうか。
Finatextホールディングスに興味を持った方はコチラから!