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VCと起業家が語る、業界の展望【HR・組織編】

今回話を伺ったのは、いわゆるHRtech領域で注目されている企業、株式会社スタメン 代表取締役社長 加藤氏と、ベンチャーキャピタリストとしてスタメン社に投資を行った、株式会社ジャフコ 中山氏。 起業家、ベンチャーキャピタリストのお二人から、HR・人材業界の展望や、その中でなぜ組織の領域が今注目されているのかをお伺いします。HR・人材業界に興味を持っている人は、一読してみてはいかがでしょうか。 (記事内容は2019年6月当時のものです。)

人材業界で注目されるベンチャー企業、株式会社 スタメンとは

―お二方、本日はよろしくお願いいたします。今回のテーマは、VCと起業家が語る、HR業界の展望です。

まず前提としてお伺いしたいのですが、HR業界において期待のベンチャー企業として活躍している株式会社スタメンとは、一体どんなことをしている会社なのでしょうか?

加藤:株式会社スタメンは、エンゲージメント経営コンサルティング「TUNAG」というサービスを運営しています。

事業内容について説明する前に、まず前提としてそもそも「エンゲージメント」とは何か、について説明をしておきましょう。

エンゲージメントには様々な定義がありますが、我々は会社と従業員、及び従業員同士の信頼関係と考えています。

会社と社員一人ひとりの信頼関係を築くことで、社員は活き活きと働き、その結果仕事を通じて活躍できるようになる。それによって社員の満足度・幸福度は上がりますし、会社・経営という視点から見れば、売上の向上や、離職率の低下といった成果にもつながります。

そして、我々が提供しているTUNAGというサービスは、ITによる社内制度の管理と、その活用データを活用したコンサルティングを軸に、エンゲージメントに具体的かつ科学的にアプローチをしていこうというものです。

ー信頼関係構築や社内活性化のような領域は、魅力的な仕事だと感じると同時に、成果が見えづらい領域であるようなイメージもあります。具体的にはTUNAGを通じて、どのような成果が出るのでしょうか。

加藤:もちろん、難しい部分はありますよね。ただ、経営に近い人であればあるほど、その重要性と業績との連動性を実感値として持っている人が多いのではないでしょうか。

そんな「人」や「組織」という定性的になりがちな対象について、定量的に改善ができるのが我々のサービスの面白い点だと考えています。

よりわかりやすく解説をするために、具体例を交えて説明をしましょう。

一つ例を挙げると、TUNAGの機能として、管理者側のバックヤードで様々な数値を取ることができる機能があります。

一見、TUNAGは社内に課題に応じたオリジナルの制度を設計して、それによって社内イントラ、施策推進、コミュニケーションの促進をすすめるような表側に向けたサービスに思えるかもしれませんが、同時に多くのデータを得ることができます。

例えば、トップメッセージの既読率やコメント率と予算達成率はどうなのか、チーム単位で見るとどのような傾向が見られるのか、サンクスカードってそもそも業績や離職、サーベイとの結果に相関関係があるのか、など。

社内でたくさんの人が自然と集まる"場"だからこそ、そこに集まるデータから色々なことが見えてきます。

もちろん、バイネームでも色々とわかってきます。Aさんは最初は社内SNSで活発に活動していたが、ここ数日は、ログイン率が急低下している。すると、何か悩みを抱えているんじゃないか、他の社員のメッセージを見たくないと感じてしまう理由があるんじゃないかと仮説が立てられます。

これはまさに、インナーマーケティングとそれの経営への活用ですよね。

こんな風に、ツールの使用状況から見られるデータと、そのデータを元にしたコンサルティング活動により、社内を活性化していく。それにより、社員一人は活き活きと働けると共に、経営目線で見れば、会社としてより高い成果をあげる、より強い信頼関係を持って活動する組織を作り上げることができるのです。

株式会社スタメン 代表取締役社長 加藤 厚史 氏

起業家・VCが語る、HR業界で組織領域が注目される理由

―ありがとうございます。「業界」という目線から見ると、HR・人材の領域には様々な企業がありますよね。例えば、学生が就職活動で多く接する「人材紹介」のような採用領域であったり。

そんな中、中山さんが投資家として、HR業界の中でも、組織の領域に注目され、またスタメン社に投資をするべきだと考えられた理由はどういったものなのでしょうか。

中山:就職活動中の学生の皆さんにも是非知っておいていただければと思うのですが、「組織の在り方」に関する領域は、HR業界の中でも特に重要性が増している領域だと考えています。

例えば、キャリアという側面から考えてみましょう。就職活動をしている皆さんも「終身雇用の崩壊」といった話を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。

終身雇用の時代は、採用をした人は長い間会社にいることが前提となっていました。しかし、転職をするキャリアが当たり前になった時代、その前提は通用しません。

すると「採用すること」はもちろん、「採用した人に、会社を魅力的に感じてもらい長く活躍してもらうこと」が非常に重要になってきているのです。

会社目線のみならず、日本の社会全体から見ても、組織の観点は重要です。これから日本の労働人口が減少していくと、日本経済は衰退していくと言われています。

そんな中で、一人ひとりが活き活きと働き、生産性高く活躍をすることは、日本という国・社会にとって重要になるだろうと。

ただ注目が集まっているというだけでなく、非常に意義深い領域でもあると感じています。

―そうした問題を解決するのが、まさにエンゲージメントというわけですね。

中山:そうなんです。その重要性が徐々に知られはじめ、企業の経営者やマネージャー陣の意識も変わってきています。

少し前までは「優秀な人を採用すること」が目標とされていましたが、先ほどもお話ししたように、今は「採用した人が活躍する環境を作る」ことにも目が向けられています。

一方で、そういった環境を作るサービス、つまり組織のエンゲージメントを向上させるような領域は、これまで大きな発展が見られませんでした。

我々もベンチャーキャピタルとして、長年業界の変遷を目にしてきていますが、2000年代の人材領域サービスは、給与計算業務の代行・福利厚生業務をアウトソーシングなどを提供する企業が多かった。

言い換えれば、サービスを通じて業務の効率化・労働力削減を行う、つまり既存のコストを減らすような「守り」のサービスが中心でした。

一方で、より良い組織を作ろう・強いチームを作っていこうといった、付加価値を生み出す「攻め」のサービスは2010年以降でもアップデートされてこなかった部分です。

会社・社会には大きな課題があるのに、サービスがその課題に追いついていない市場と言えるでしょう。

そこに直球勝負を仕掛け、挑戦していこうというスタメン社には非常に魅力を感じました。

株式会社ジャフコ 中山 淳二 氏

加藤:中山さんのおっしゃられる通り、社会の変化によって、組織エンゲージメントの重要性は日に日に大きくなってきています。

中山さんがお話しした「終身雇用の崩壊」以外の側面でも、働き方の多様やITの進化によって、テレワーク・リモートワークと呼ばれる働き方が発達し、必ずしもオフィスにいなくても仕事ができる環境が生まれています。副業や時短勤務として会社に関わるという人も増えています。

働き方が変化した今、「会社に所属する意味」も定義しなおされるでしょう。

また、社会が豊かになったためか、人を動機づけするという面での金銭の力は弱まってきています。言い換えれば、これだけお金がもらえるからこの会社に属し続けよう、との思考は社会全体として弱まっている傾向にある。

そんな中で、会社と社員の繋がりを作るものは何か、その会社に所属する意味は何かと考えると、その大きな要因の一つとなるのが、会社や従業員との信頼関係であると考えています。

先ほど、就活生に人気の領域として「採用サービス」のお話が出ましたよね。

人材不足と言われる中、採用をサポートするサービスは引き続き重要である中、特にどんなサービスが成長しているかと市場に目を向けてみると、そこでも、エンゲージメント視点を踏まえたサービスが成長しています。

ただ単純に人を集めてそれを斡旋する、いわば人材を右から左に流すようなサービスではなく、求人側の会社がどのような特徴のある会社か、どんな人が合う会社なのかをきちんと定義して、求職者の情報と照らし合わせることで、双方の満足度が高いマッチングを行う。

そうした観点からも、人材領域において、あるいは社会全体において、組織エンゲージメントの重要性が向上していることが伺えます。

難易度の高い「エンゲージメント」の領域で、企業・社会の課題解決を行う

―そんな中、TUNAGというサービスで組織の課題を解決していこうというのが、株式会社スタメンというわけですね。

中山:繰り返しになってしまいますが、これまで組織やエンゲージメントの領域は、なかなか解決できてこなかった分野です。

それに対して、どの企業も漠然とした課題感は持っていて、試行錯誤しながら取り組みを行ってきたと思うのです。でも目に見える成果が出てこなかったという企業は非常に多い。

例えば、社内で部活制度を取り入れてコミュニケーションを促進しましょう、あるいはママさん向けの社内制度を取り入れて働きやすい環境を作りましょう、そんな取り組みを多くの会社が行なっています。

しかし、制度自体が形骸化してしまったり、社内制度を利用することに遠慮してしまう人がいたり、あるいは部活制度もなんとなく楽しくは行なっているけど、毎月同じ参加者と顔をあわせるだけなんじゃないかと。

そんな風に、人材や組織は大事だと思って挑戦をしながらも、うまく行かなかったという会社がたくさんあるのです。

そうした状況を打破して、本当に意味のある社内制度を作り、組織を定量的に改善していけるというのは、非常に魅力的なサービスだと感じています。

加藤:中山さんがおっしゃられる通りで、私も長い社会人生活で感じてきたのは、社内向けの取り組みというのは、本当に改善がされづらいということ。

皆さん、社外向けの仕事においては、日々すごく細かな改善をされているんです。広告の文言一つとっても、データとにらめっこしながら、売上が何%あがりました!といった具合です。

しかし、社内向けの施策は驚くほど改善してこなかった現実があります。それは、人・組織というものが定性的で捉えづらいということも一因でしょうし、いろんな人間関係が入るからこそ社長の鶴の一声に左右されてしまったり...。

その中で、IT サービスを通じて、コンサルティングを通じて、社内制度という手段を通じて、エンゲージメントを改善していくという過程は、非常にやりがいを感じられるものです。

人と組織の悩みを聞いて、課題を解決し、組織を再生する。

サービスの提供者として、より多くのお客様にTUNAGというサービスを使っていただけるよう、そしてTUNAGというサービスをより良くしていけるよう、努力していきたいと考えています。

今日のお話を通じて、弊社をはじめとした「組織・エンゲージメント」の領域に挑戦する会社に興味を持っていただける人が増えてくれれば嬉しいなと思います。

そして、広く「人材」という領域で就職を検討している方も、ぜひこういった観点を踏まえて会社のことを見てみると、魅力的な出会いがあるかもしれません。

―加藤さん、中山さん、本日はありがとうございました!

HR・人材業界の中で、注目が集まるエンゲージメントの領域。興味を持った方は、是非一度触れてみてはいかがでしょうか。

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