銀行は就職で人気の業界 今後の動向とは
「将来安泰」や「高収入」などの理由から銀行を志望企業としている就活生は多いのでは。就職人気ランキングでも毎年上位にランクインします。
しかし、金融業界は環境が大きく変化している業界です。銀行は本当に将来安泰なのでしょうか?
そこで、群雄割拠の金融業界の今後を、大手の銀行に5年勤めている現役社員の近藤さん(仮名)にお聞きしました。
めまぐるしいIT化やマイナス金利政策により、金融業界にどのような変化があるのか。そして銀行は変化にどのように対応しているのでしょうか。
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就職活動で知っておきたい銀行の収益構造
ー本日はよろしくお願いいたします。今回は、就職で人気の銀行の動向についてお伺いしたいと思います。まず、銀行がどのようにお金を稼いでいるかおさらいしたいので、銀行のビジネスモデルについてお伺いしてもよろしいですか?
近藤:銀行の主な収入源は、お金の足りない企業や個人に貸付を行う事により発生する利子です。
銀行は預金者からお金を預かり、その預金を原資にお金の足りない企業や個人にお金を貸し出します。
例えば、ある企業が100万円の機械を購入したいと思いました。しかし、その企業は100万円ほどのお金をすぐに準備できません。
そこで、銀行に100万円の融資を依頼します。銀行は「その企業に100万円を貸した時に本当にお金を返すことができるか」を審査し、その審査が通った場合にその企業にお金を貸し出します。その時、銀行が2%の利子をつけて融資したとします。
すると企業は銀行から融資してもらったお金を元に機械を購入することができます。そして、銀行にお金を返すときに2%の利子をつけて返します。すなわち、102万円を銀行に返します。
すると、銀行は企業から返してもらった102万円から貸し出した時の100万円を引いた値、2万円を得ることができます。これが、銀行の利子による収入です。
このビジネスモデルでは、銀行は預金が多いほど多くのお金を融資出来るので、銀行の利子収入は預金の総量におおよそ比例します。なので、「各銀行がどれくらい預金額を持つか」この視点は大事になります。
銀行を志望する就活生は、「銀行のビジネスモデルでは預金の総量が大事」なことを覚えておいてください。
ー預金の総量が銀行のビジネスの源泉となっているのですね。
銀行のATMからお金を降ろす時の手数料などは大きな収入にならないのですか?
近藤:もちろん、手数料収入も立派な銀行の収入です。
ATMに限らず、個人や企業が銀行で何か手続きをする際に銀行が手数料をもらうことがあります。
例えば、自分の口座から他人の口座に送金する時や、外資を取り扱う時にこのような手数料が発生します。
低金利による金利収入が減少傾向にあることから、手数料収入も銀行の重要な収入源として無視できなくなっています。
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銀行に就職する上で押さえたい2つのポイント
ーありがとうございます。銀行がどのようにしてお金を稼いでいるのか確認することができました。
では、ここから銀行の動向についてお聞きしたいのですが、まず「銀行の動向を抑える上で大事なポイントは何か?」を伺ってもよろしいですか?
近藤:銀行の動向を探る上で、私が大事だと思っていることは2つあります。しかし、私1個人が思っているポイントなので、全て鵜呑みにはしないでください。
まず、1つは低金利政策です。低金利政策によって、銀行にお金を預けた時の金利は大きく減りました。それにより、預金者が銀行にお金を預けておくメリットが少なくなってしまいます。
すると、預金者は銀行でお金を眠らせるのではなく、投資など別の用途にお金を使ってしまう可能性があります。
結果として、銀行のビジネスの源泉である預金が減ってしまいます。これは今の銀行を語る上で大きな問題です。
もう1つは、Finetechの発展により、IT企業が金融業界に参入し始めている事です。
例えば、LINEが展開している「LINE Pay」。LINE Payに入金することで、そのお金を電子マネーとして用いることができます。LINE Payは、店頭での買い物もスマホ1つで出来ますし、ZOZOTOWN等のECサービスの支払いにも対応しています。
LINE Payに入金しておくことで数多の支払いを快適にできるのであれば、先ほどの低金利も合間ってわざわざ銀行に預金しておく理由が無くなるかもしれません。
これも、銀行の預金を食いかねない大きな問題です。
ーなるほどです。この2つが銀行の預金を減らしかねないのですね。
銀行の預金は低金利政策で減ってしまうのか?
ー少し難しかったので、もう少し詳しくお聞きしたいです。
近藤:まずは低金利政策から。低金利政策は日本銀行が行う金融政策です。
これは、民間の銀行が日本銀行にお金を預ける際の金利を下げることで、金融市場全体の金利を下げるというものです。金利を下げて企業が資金を借りやすくなる事で、市場の活性化を促す事が目的です。
さらに、2016年の2月からはマイナス金利を導入しており、これにより、民間の銀行は日本銀行にお金を預けると、その額に応じた金利を払わなければなりません。
結果として、個人や企業が民間の銀行に預金した時の金利が大きく減りました。2019年2月現在、金利の高い定期預金でも最高で年に0.3%ほどの金利しかつきません。
これは、銀行に預けて資産を2倍にしようとした時、最低でも230年かかることを意味しています。
2000年以前では、定期預金で4〜8%ほどの金利がついたので、10〜15年ほどで資産が2倍になりました。それに比べると、今の金利がいかに低いか実感できます。
そのため、現状銀行で預金を眠らせることは得策ではありません。従って、銀行に預金せず、株式や債券への投資をする人が増えてくるのではと考えられます。
すると、銀行の預金が減ってしまいます。これは銀行にとっては一大事です。
低金利政策に対して銀行が取っている対策は?
ーなるほど。低金利は銀行に大きな影響を与えているのは確かなのですね。
ここで、低金利対策に対して銀行が取っている対策についても教えてください。
近藤:大手の銀行グループは低金利政策に祭して、信託銀行や証券会社との連携を強化しています。
いわゆるメガバンクと言われている銀行大手の各行は、グループ内に信託銀行や証券会社を保有しています。
例えば、三菱UFJフィナンシャルグループは、信託銀行としての三菱UFJ信託銀行と証券会社としての三菱UFJモルガン・スタンレー証券をグループ内に持ちます。
また、証券会社である三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、2009年に世界的な投資銀行であるモルガン・スタンレーとの協業により設立され、証券部門での強化をはかっています。
そして、預金ではなく投資信託や証券投資を行おうとしている銀行の顧客を、同グループの投資信託や証券会社の顧客とする事で銀行の預金低下に対応しようと試みています。
みずほ銀行は、銀行と信託と証券を一体とする「One MIZUHO」を戦略として掲げています。
このように、銀行各行は低金利による預金の低下に対応しています。「低金利だから銀行は終わった」と早とちりしないでくださいね。
ー近頃よく聞く、銀行の信託と証券との連携の背景にはこのような事情があるのですね。
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銀行を脅かす、IT企業の金融業界への進出
ー次に、IT企業の金融業界への進出についてお伺いしたいです。
近年、「〇〇 Pay」と名のついた、スマホ決済機能が増えている気がします。これらは銀行にどのような影響を与えるのでしょうか?詳しくお聞きしたいです。
近藤:このようなIT企業の業界への進出は、低金利とあいまって銀行に大きな影響を与えうる要因です。
キャッシュレスは日本ではあまり進んでいませんが、海外では主流になりつつあります。例えば中国では「アリペイ」によるQRコード決済が主流で、現金を使う人は少ないとも聞きます。
これは日本が遅れている訳ではなく、現金とATMの質が良かったためにキャッシュレスを推進する必要がなかったためと言われています。
しかし、日本でも2020年の東京オリンピックに向けてキャッシュレス化を進行させようと、日本政府がキャッシュレスの後押しを始めました。
そして、2018年2月現在、スマホ決済サービスでのシェアを獲得しようと、多くの企業がこのスマホ決済サービスに乗り出しました。
スマホ決済サービスとは、そのサービスに入金したお金を現金のように使う事ができるシステムです。入金しておけば、現金を持たずともコンビニやスーパーなどで買い物ができる便利なものです。また、スマホでQRコードを読み込むだけで買い物ができます。
例えば、LINEが展開している「LINE Pay」や楽天が展開している「楽天 Pay」、ソフトバンクグループが展開している「PayPay」などがこれにあたります。
これらのサービスが銀行の預金を食いかねないのです。なぜなら、これらのサービスに入金しておく状態で貯金する事ができるからです。銀行に預金してもお金が増えないのであれば、スマホ決済サービスに入金する形で貯金する事も考えられます。
そして、各サービスは自社の強みを利用した利便性を提供しています。
例えば、「LINE Pay」は、メッセンジャーアプリの「LINE」上で送金が行えます。銀行で振り込むのに比べると、とても便利ですよね。
すると、ますます銀行に預金しておく意味がなくなり、結果として銀行の預金が減ってしまう可能性があります。
銀行もIT技術を駆使して対応している!?
ー今までのお話を聞くと、新しい金融サービスに銀行は押されがちなイメージを持ってしまいます。
銀行はどのような戦略でIT企業と戦っているのですか?
近藤:これに対しても銀行は手を拱いている訳ではありません。
スマホ決済サービスの普及に対し、各銀行は各スマホ決済サービスとの連携を強化したり、また、自社で独自のスマホ決済サービスを展開することなどして対応しています。
例えば、みずほ銀行が地方銀行と連携して展開する予定である「J-coin pay」。
このJ-coin payには、先発の「LINE Pay」や「楽天 Pay」にはない強みがあります。
それはこのサービスを行うのが銀行という点です。
まず、機能面で他サービスと違う点は100万円以上の取引が行えること。
実は日本の法律により銀行以外が行うサービスでは、100万円以上の取引が1回では行えないのです。銀行が展開する事で、J-coin payでは100万円以上の取引が行えることを意味しています。
100万円以上の大金の取引が行えるという事は、今後B to B領域でも利用出来る可能性があります。
また、信用度という観点では、やはり銀行のサービスに勝るものはないと思われます。
キャッシュレスと言われていても、スマホで金銭取引が行われることに対して及び腰になる方は多いと思います。
しかし、信頼出来る大手銀行のサービスとしてスマホ決済サービスが導入された場合、自然と使う事が出来るのではないでしょうか。
金融サービスで大事なことは何よりも信用です。この信用で、他者サービスに勝る銀行は、例え後発であっても十分に勝てる見込みはあるでしょう。
スマホ決済の登場により銀行はピンチになると言う人もいます。しかし、逆にスマホ決済戦争に勝つ事でスマホ決済という新たな市場にサービスを拡大出来るチャンスでもあるのです。
ー「低金利だから、スマホ決済に顧客を奪われるから銀行は終わる」というのは早計な判断なのですね。
本日はありがとうございました!
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就職活動で銀行への理解を深めるために
本記事では、大手の銀行に勤めている近藤さんに、「銀行の動向について」のお話を伺いました。
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