ESや面接の自己PRにて、「柔軟性」を自分の強みとしてアピールしたいけれど、具体的にどのような言葉やエピソードで伝えれば評価されるのか、悩んでいる就活生は少なくありません。
本記事では、元日系大手人事で、en-courageの就活サポーターとしても学生を支援している成田さん監修の基、そのまま参考になる例文やポイント、言い換え方をお伝えします。
さらに、企業が求める「柔軟性」とは何か、「ありきたり」と思われないために差別化すべきことなども解説します。
柔軟性とは
就活の自己PRで頻出の「柔軟性」ですが、単に「柔軟性があります」と伝えるだけでは、他の学生に埋もれたり、優柔不断な印象を与えたりするリスクがあります。ここでは、元人事の成田さんの経験に基づき、企業が本当に求めている柔軟性の正体と、選考で評価される理由を解説します。
企業が求める「柔軟性」とは
企業が求める「柔軟性」とは、単に周囲の意見に同調したり、環境に順応したりすることだけではありません。予期せぬトラブルや急激な変化に直面した際、状況を冷静に把握し、その場に応じた適切な判断と行動ができる「臨機応変な対応力」を指します。
また、従来のやり方や自分の考えに固執せず、新しい環境や他者の意見を受け入れ、変化を前向きに捉えて成果につなげる「適応力」や「発想力」も含まれます。ビジネスシーンでは、マニュアル通りにいかない場面でも自ら考え、最適解を導き出す力が求められています。
企業が柔軟性を重視する理由
企業が採用活動において柔軟性を重視する理由は、主に以下の3点に集約されます。
- 環境変化への即応:激しい市場変化や技術革新の中でも、即座に適応して成果を出し続ける必要があるため
- 臨機応変な課題解決:困難な状況でも過去の成功に固執せず、リスクを管理しながら解決策を見出すため
- 組織成果の最大化:多様な価値観を持つメンバーと円滑に協働し、チームの生産性を高める素養であるため
「ありきたり」になりやすいため、差別化が必要
「柔軟性」はアピールしやすい強みである反面、多くの学生が使用するため、言葉選びだけでは印象に残りにくいのが実情です。抽象的な表現で終わらせず、具体的なエピソードや独自の原体験を交えて差別化を図りましょう。「どのような課題に対し、どう考え、具体的にどう行動して乗り越えたのか」というプロセスを語ることで、あなたならではの柔軟性を伝えられます。
「主体性がない」と思わせない、適切な伝え方が大事
柔軟性を「相手に合わせる」「言われたことに従う」といった受け身の姿勢で伝えると、「主体性がない」と誤解される恐れがあります。企業が求めているのは、自ら課題を発見し、状況を変えるために行動できる人材です。「指示に従った」ではなく、「状況を分析し、自ら提案して行動を変えた」というように、能動的なアクションを強調しましょう。
柔軟性を自己PRでアピールする際のポイント
自己PRで柔軟性を効果的に伝えるには、言葉選びや構成の工夫が不可欠です。ここからは、成田さんが人事として多くの学生を見てきた経験に基づいた「評価されるポイント」を紹介します。採用担当者に「入社後に活躍できる」とイメージさせるための、具体的なテクニックを押さえましょう。
【最重要】具体性のある言葉に言い換える
抽象的な言葉である柔軟性を、具体的にどのような力なのか分解して伝えることが重要です。状況変化への対応力なのか、他者の意見を受け入れる力なのかを明確にし、解像度の高い言葉に変換しましょう。適切な表現を選ぶことで、強みが鮮明に伝わり、他の学生との差別化につながります。
言い換え例一覧
「柔軟性」と一言で伝えても、採用担当者には具体的に伝わりにくいものです。あなたの強みがどこにあるのか、解像度を上げていきましょう。
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事態を収拾する「行動・解決型」
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例
- 予期せぬ変更にも動じず、その場に最適な判断と行動をとれる力
- 一つの方法に固執せず、アプローチを変えながら解決へ導く力
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例
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環境に順応する「適応・学習型」
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例
- 新しい環境やルールに素早く馴染み、早期に即戦力になれる力
- 過去のやり方に固執せず、新しい知識を素直に取り入れる力
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例
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価値観を活かす「対人・組織型」
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例
- 自分の主張だけでなく、他者の多様な価値観を肯定的に受け入れる力
- 利害が異なる人々の間に入り、それぞれの立場を尊重してまとめる力
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例
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枠を飛び越える「思考・発想型」
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例
- 固定観念にとらわれず、多角的な視点で新しいアイデアを生む力
- 従来の方法で行き詰まった時、全く別の角度から打開策を見出す力
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例
自分に合った言葉を選ぶコツ
多くの言い換え表現の中から、自分に最適な一つを選ぶための視点は以下の3つです。これらは、どのような強みをアピールする場合でも共通する「言葉選び」の鉄則です。
- エピソードに合うものを選ぶ:自身のエピソードの内容と、選んだ言葉の持つニュアンスが合致しているか確認しましょう。同じ強みであっても、どのような状況で、どう発揮されたかによって適切な表現は異なります。
- 企業の求める人物像に合うものを選ぶ:志望企業の社風や「求める人物像」と照らし合わせましょう。企業によって、同じ強みの中でも「勢い」を重視するのか、「丁寧さ」を重視するのかといった評価ポイントは異なります。
- 第三者に合う言葉を聞く:自分の強みを客観視するのは難しいため、プロの視点を借りるのも有効です。就活エージェントなどの第三者に相談すれば、あなたの経験を人事の視点で分析し、独りよがりではない、市場価値の伝わる「最適な言葉」への変換をサポートしてくれます。
説得力のある構成で書く
以下の順序で構成することで、論理的で説得力のある自己PRが完成します。
- 結論:一言で、あなたの強みは何か?
- 背景:その強みをどのように培ったのか?
- 課題:強みを発揮したとき、どんな課題に直面していたのか?
- 行動:その課題に対して、強みを活かしてどう取り組んだのか?
- 実績:その成果はどんな数値や事実で裏付けられるのか?
- 仕事への活用:その強みを企業でどう活かし、貢献できるのか?
▼自己PRの構成について、詳細は以下の記事で解説しています。
エントリーシートの受かる自己PRの書き方強みの選び方と構成・書くポイントを元人事が解説
定量的な成果を示す
エピソードの具体性を高めるには、成果やプロセスを「数字」で示すことが効果的です。例えば、「売上が上がった」とするよりも「売上が前年比120%になった」と書く方が、客観的な実績として伝わります。
成果だけでなく、行動の規模感を示す際にも数字は有効です。「部員50名との個別面談」「月5時間の業務削減」「手順書を10種類作成」など、具体的な数値を盛り込むことで、行動量や工夫の解像度が一気に高まります。
主体性を示す
柔軟性が「受け身」「優柔不断」に見えないよう、自らの意思で行動したことを強調しましょう。
成果を出すために柔軟性を発揮していることを示す
柔軟性はあくまで手段であり、目的は成果を出すことです。自己PRでは、柔軟な対応をした結果、どのような良い変化や成果が生まれたのかを明確にしましょう。
自分から働きかけた行動を盛り込む
チームや組織の中で、自分がどのような役割を果たしたかを具体的に示しましょう。「チームで話し合った」だけでなく、「私がメンバーに働きかけて会議を主催した」など、自分発信のアクションを記述します。
言い回しを工夫する
同じ行動でも、言い回し一つで印象が大きく変わります。ポジティブで主体的な印象を与える表現に変換しましょう。
【言い換えの例】
- 状況が変わったので対応しました→状況の変化をいち早く察知し、先回りして行動しました
- いろいろな方法を試しました→粘り強く試行錯誤を繰り返しました
面接での受け答えでも柔軟性を発揮する
面接は、リアルタイムで柔軟性を証明する機会です。想定外の質問が来ても焦らず、落ち着いて対応する姿勢そのものが評価対象となります。
想定外の質問に対して、質問の意図を汲み取る
変化球の質問をされた場合、即答することよりも、質問の意図を正しく理解しようとする姿勢が大切です。分からない場合は素直に質問し返すなど、対話を通じて認識をすり合わせましょう。
準備してきた回答に固執せず、会話の流れに乗る
面接は会話のキャッチボールです。暗記した自己PRを一方的に話すのではなく、その場の空気や面接官の関心に合わせて話す内容を柔軟に変えることが重要です。
避けるべき表現に気をつける
せっかく内容が優れていても、避けるべき表現をしてしまうと評価の対象から外れてしまうことがあります。以下の表現をしないように気をつけましょう。
- 専門用語を避ける:研究内容や独自の用語は、採用担当者が理解できるよう「誰にでもわかる言葉」に噛み砕いて表現しましょう。
- 抽象的な表現は避ける:曖昧な言葉で終わらせず、具体的なエピソードや5W1Hを交えて記述し、行動特性や価値を伝えましょう。
- 企業の求める人物像とずれたものは避ける:企業の方向性と自分のアピール内容が合致しているか確認し、求める人物像とのミスマッチを防ぎましょう。
- 誤字脱字がないかチェックする:誤字や敬語の誤りは志望度の低さとみなされるため、音読や第三者チェックを行い、丁寧さを示しましょう。
- 話し言葉を使わない:ビジネス文書としての形式を守り、流行語や口語表現は避け、丁寧で標準的な語句を選んで記述しましょう。
▼エントリーシートの書き方の基礎については、こちらの記事もご参照ください。
落ちないエントリーシートの書き方企業が見ているポイントと対策まとめ
柔軟性を自己PRでアピールする例文
ここでは、柔軟性を効果的にアピールするための例文を紹介します。成田さんの添削実例をもとに、ポイントを解説します。
サークル・部活動の場合
私の強みは、多様な意見を調整し、組織を前に進める柔軟性です。100人規模のテニスサークルで代表を務めた際、例年は経験者中心の雰囲気になり、初心者の半数が夏までに退会してしまう課題がありました。そこで「全員が楽しめる居場所づくり」を目標に掲げたものの、同期や幹部から反対意見も出て方針がまとまりませんでした。私は粘り強く対話を重ね、各メンバーの思いを丁寧に汲み取りながら、経験者と初心者がペアを組む練習制度や、テニス以外の交流企画を新たに導入しました。その結果、相互理解が進んで一体感が生まれ、定着率は例年の5割から9割まで向上しました。貴社でも、多様な関係者の意見をすり合わせながら、プロジェクトを前進させる役割で貢献したいと考えています。
<ポイント>
- 課題の特定:初心者の離脱という課題に対し、「全員が楽しめる居場所」という目標を設定
- 調整力:反対意見にも耳を傾け、対話を通じて合意形成を図ったプロセスを記述
- 成果:定着率9割という具体的な数字で、取り組みの効果を証明
アルバイトの場合
私は、状況を瞬時に判断し、相手のニーズに合わせて行動を変えられる柔軟な対応力があります。カフェでアルバイトリーダーを務めた際、コロナ禍で売上が伸び悩み、マニュアル通りの画一的な接客が顧客満足度の低下につながっていました。そこで私はお客様の様子を徹底的に観察し、急いでいる方には手短に、常連の方には会話を交えて新商品を提案するなど、状況に応じた接客を実践しました。さらに、その工夫を自分だけに留めず、スタッフ全員に共有して店舗全体で再現できる形にしました。加えて、天候や客層に合わせたおすすめメニューのPOP作成も主導し、提案のきっかけを増やしました。結果として客単価は前年比115%を達成しました。貴社でも、相手の状況を踏まえた最適な提案を積み重ね、成果につなげます。
<ポイント>
- 脱マニュアル:状況に応じた臨機応変な対応(観察とアクション)を具体的に描写
- 巻き込み力:自分だけでなく、スタッフ全員にノウハウを共有し、組織全体の成果につなげた
- 主体性:自ら課題に気づき、POP作成などの具体的な改善策を実行している
長期インターンの場合
私の強みは、相手の反応に合わせてやり方を変えながら成果を出す粘り強さです。IT企業の長期インターンでインサイドセールスを担当した当初は、トークスクリプトを読み上げる一方的な営業になってしまい、月間アポ数は5件と伸び悩んでいました。そこで私は、相手の課題を聞き出すヒアリング重視のスタイルへ切り替え、業界や悩みに合わせて提案内容を都度カスタマイズするようにしました。また、失注理由を分析してスクリプトも随時改善し、試行錯誤を継続しました。その結果、月間アポ数は15件へと増加しました。貴社でも、顧客の潜在ニーズを捉えた柔軟な提案で信頼関係を築き、成果に貢献します。
<ポイント>
- 課題分析と改善:一方的な営業から双方向の対話へ、手法を柔軟に切り替えた点
- 個別対応:顧客ごとに提案をカスタマイズする「適応力」をアピール
- 定量成果:アポ数3倍という明確な実績で、工夫の有効性を裏付け
ゼミ・研究活動の場合
私は、未知の課題に対しても、周囲の知見を柔軟に取り入れながら解決策を導き出す力があります。環境化学の研究室で新規素材の開発に取り組んだ際、先行研究が少なく実験は失敗の連続で、従来の手法では手詰まりの状態でした。私は失敗も重要なデータだと捉え、計画を都度見直しながら改善を続けました。さらに自分の専門領域だけにこだわらず、分野の異なる教授や他大学の研究者にも自ら連絡して意見を求め、多角的な視点を取り入れました。得られた示唆をもとに実験条件を100通り以上検証し、粘り強く検討を重ねた結果、耐久性を高める新たな合成条件を発見し、国際学会での発表につなげました。貴社でも、困難な課題に対して多角的にアプローチし、成果創出に貢献します。
<ポイント>
- 思考の柔軟性:失敗を前向きに捉え、計画を修正し続ける姿勢
- 外部リソースの活用:自分の知識に固執せず、他者の知見を積極的に取り入れる「受容力」
- 行動量:100通り以上の検証という粘り強さが、柔軟性を支えている
ボランティア・留学活動の場合
私の強みは、価値観の違いを尊重しながらチームの力を最大化する調整力です。マレーシアでのボランティア活動で、多国籍メンバー6人と学校建設に取り組んだ際、作業手順や時間感覚の違いから対立が起こり、作業が大幅に遅れていました。私は意見の違いを否定せず、まず「子どもたちのために学校を完成させる」という共通目的を全員で再確認するよう働きかけました。そのうえで、互いの文化背景を理解するためのミーティングを主催し、相手の前提を知った上で話せる状態をつくりました。さらに、それぞれの得意分野を活かした役割分担を提案し、作業フローを再構築しました。結果としてチームの結束が高まり、予定より3日早く完成させることができました。貴社でも、多様なバックグラウンドのメンバーをつなぎ、チームとして成果を出します。
<ポイント>
- 異文化理解:価値観の対立を否定せず、受容した上で解決策を提示
- 目的志向:共通のゴールを示すことで、バラバラなチームを一つにまとめたリーダーシップ
- 調整力:それぞれの強みを活かす配置転換を行い、全体最適を図った
よくある質問
就活のサポーターとしてよく聞かれる質問や、en-courage利用者へのインタビューで出てきた疑問への回答をご紹介します。
柔軟性以外の強みと組み合わせてもいい?
はい、むしろ組み合わせることでアピールに深みが出ます。柔軟性は「調整力」や「傾聴力」、「課題解決力」など、他の能力とセットで発揮されることが多いスキルです。複数の強みが相互に作用して成果につながったことを伝えると、より説得力のある自己PRになります。どのように組み合わせれば効果的か迷った場合は、就活エージェントなどのプロに相談し、客観的なアドバイスをもらうことをおすすめします。
エピソードが平凡でも大丈夫?
エピソード自体は平凡でも問題ありませんが、そこからどのように強みをアピールするかはテクニックが必要です。自分の経験をどのように魅力的に伝えるべきか悩む場合は、就活エージェントに相談してみてください。些細なエピソードからでも、人事の心に響くストーリーを引き出してくれます。
文字数の目安は?
一般的に、ESや履歴書は枠の8割以上、面接では1分程度(約300文字)が目安とされています。限られた文字数の中で、志望動機や強みの根拠を効果的に伝えるには、無駄を削ぎ落とした密度の高い構成が求められます。自分の文章が適切か不安な場合は、添削のプロである就活エージェントにチェックしてもらうことで、より完成度の高い自己PRに仕上げることができます。
監修:成田 駿
元日系大手人事/就活サポーター
日系大手事業会社で最年少部長に就任し、新卒採用に5年以上従事。戦略設計からイベント企画、選考フロー、研修まで新卒採用の入口から出口までを幅広く担当し、延べ3,000名以上の学生と接点を持つ。人事業務以外でも累計2,000名以上の就活生を個別に支援し、大手・外資・メガベンチャーなど多様な企業への内定実績を誇る。
協力:NPO法人en-courage
全国約120の大学に支部を展開し、就活生を対象としたキャリア教育支援を行うNPO法人。独自にイベントやメディアを多数運営し、年間2,500件以上のセミナーを開催。企業と学生の間に年間約80万回の接点を創出するなど、国内最大級の規模で活動している。すべての就活生が本質的なキャリアを通じて人生を最大化できるよう、個別支援やコミュニティづくりを通じたサポートを目指している。