Publish date:
Last updated at:

【業界研究】ゼネコンって何? 現役社員に聞いてみた!

ゼネコンとは、土木・建築工事を請け負い、各工程のとりまとめをおこなう建設業者のこと。「地図に乗る仕事」であり、高収入の会社も多いことから、就活人気も高いです。本記事では、ゼネコンの現役社員に、業務内容や業界ならではのメリット、有名企業など、就活前に知りたいすべてをお聞きしました!

本記事では、就活生を代表してHが、ゼネコンではたらくUさんとGさんにお話を聞きしました。

Uさん:入社4年目。旧帝大の体育会出身。就活時はゼネコン以外にも、商社・デベロッパーなどを見ていた。 Gさん:入社7年目。私大の理系院卒で、専攻だった「建築」の知識を活かせる建設業界を中心に就活をおこなった。

ゼネコンとは何? 総合建設業をわかりやすく解説

【ゼネコンの意味】

H:そもそも、「ゼネコン」ってどういう意味なんでしょうか。

Uさん:ゼネコンは「General Contractor」の略で、つまりは「総合建設業」を指します。 建築物の発注を請け負い、建設工事全体のとりまとめをおこなう仕事です。

Gさん:建設業界は、扱う建築物の規模によって、以下の3つに分類されます。

<工務店> 注文住宅やリフォームなどの建設工事をおこないます。地域密着型の企業が多く、発注者(施工主)と話し合い、細かなデザイン・設備などを決めていきます。実作業も担う場合が多いです。

<ハウスメーカー> 住宅の建築・販売をおこないます。戸建て、アパート、マンションなどさまざまな形態を手がけます。建築物の規模・間取りは規格化されており、工事の期間が短いのが特徴。販売に注力している起業が多く、実作業は下請けの工務店がおこなうのが一般的です。

<ゼネコン> 建築・土木・設備工事などを、一括して請け負います。発注者は、国や地方自治体、企業が中心です。具体的には、道路・河川・橋などのインフラ設備、ショッピングモール・病院・学校などの生活施設、災害時の復旧・復興なども担います。

ゼネコンは、なかでもスケールの大きな工事が中心で、下請けとなるさまざまな業者・企業とのやりとりなど、めんどうごとをすべて引き受けます。

【ゼネコンのビジネスモデル】

H:ゼネコンはどういうビジネスモデルで、利益を得ているんですか?

Uさん:建設・工事現場では、建設物の完成までにさまざまな工程があり、たくさんの技術者や職人が必要になります。

発注者の希望に沿った建設物を納期通りに工事を完成させ、下請けとなる専門業者を統括して、工程・納期・原価・品質・安全を保証する役割を担うことで、ゼネコンは利益を得ています。

H:「サブコン」という言葉もあると聞きました。これはなんのことですか?

Gさん:サブコンは、ゼネコンの下請けとなり、実際の工事をおこなう業者のことです。 具体的には、電気・空調・消防・衛生設備などを工事してもらいます。

Uさん:ゼネコンとサブコンの関係は、契約形態によっていくつかに分かれます。以下が代表的なものです。

<一括請負> ゼネコンが建築物の工事一式を請け負い、それぞれの設備工事を得意とするサブコンに依頼する方法。建築物の発注者は、サブコンとやりとりする必要がなく、ゼネコンにすべて任せます。

<別途工事> 発注者が、各設備工事をサブコンに直接依頼する方法のこと。ゼネコンが受けるのは建設工事のみで、サブコンとのやりとりは発注者がおこないます。

<コストオン工事> 「一括請負」と「別途工事」の折衷のような方式。発注者が、各設備工事をそれぞれのサブコンに打診し、契約を結びます。ゼネコンは、発注者が指名したサブコンに下請け発注して工事を統括します。

【ゼネコンの社会的価値と魅力】

H:ゼネコンは社会的には、どんな価値やプレゼンスを発揮していると思いますか?

Gさん:建築・建設物は、暮らしを便利にし、経済を豊かにし、時には災害などから身を守る役割を果たします。

それらの工事・事業を取りまとめ、より良いものを提供するゼネコンは、人々の未来を創っていく仕事だと思います。

Uさん:ゼネコンはなくては生きていけないものを創る業務ですよね。

いま、周りにある建築物やインフラ設備が、もしすべてなくなったらと考えてみてください。 雨が降っただけでも一大事で、道がないから流通も限られる。まるで、数百年前に逆戻りしたみたいになると思います。

いま我々が享受しているものの土台にあるのは、ゼネコンの作ったものなんです。

H:ほかの業界と比べて、ゼネコンならではの魅力はどういったところにあると感じますか?

Uさん:「地図に乗る仕事」であることは、誇りですね。私は、就活時に商社やメーカーも受けていたのですが、ここに惹かれてゼネコンに入社しました。

自分が関わった建築物が、何十年、何百年先にも残っていて、人々の生活を支えるんです。ロマンがありますよね。

Gさん:ゼネコンの仕事は、国や経済に影響を及ぼすプロジェクトも多く、社会貢献度が高いところです。 BtoB企業でありながら、誰もが知っているような仕事ができます。 最近で言うと、オリンピック関連施設の建設にもゼネコンがかかわっています。

スケールの大きな案件を、完成まで見届けられるのもゼネコンの良いところだと思います。

たとえば、総合商社なども大規模案件を扱いますが、関わるのはプロジェクトの一部だけということもめずらしくありません。 また、デベロッパーは不動産の開発企画までしか扱いませんが、ゼネコンはその建設・建築に最後まで関わることができます。完成時の感動は、ひとしおです。

ゼネコン(総合建設業)の仕事内容を詳しく知ろう

【ゼネコンの具体的な仕事】

H:ゼネコンは具体的に、どんな仕事をおこなっているのですか?

Gさん:自社やサブコンの建築技術を使って建設工事をおこなうのですが、なかでもゼネコンの重要な仕事は、マネジメント業務です。

たとえば、予算や必要な技術をもった専門工事会社・資材メーカーを選定します。 そして、納期通りの建設工事を進められるようなスケジューリングをし、トラブルが起きたときは矢面に立って解決するのです。

工事現場には、数百人近くの人や資材が毎日行き交います。事故が発生しないように工事中の安全管理をしっかりとおこなっています。 また、建築物・建設物のクオリティについても細かくチェックしています。

【ゼネコンの代表的な職種】

H:ゼネコンの職種には、どのようなものがありますか?

Uさん:代表的な職種とその仕事内容は、以下のようにまとめられるでしょう。

<営業> 発注者の要望を受け、社内の各部門と連携しつつ、建設企画・提案書を作成します。工事のスケールや金額の大きい案件が多いため、密なやりとりや交渉力が必要です。

<設計> 発注者の希望を叶えるため、利便性やデザイン性を追求し、建築図面や模型に落とし込みます。建築士などの専門資格が必須です。

<施工管理> 建設工事のスケジュールを管理し、工事現場での工程・品質のチェックをおこないます。さまざまな年齢・キャリアの職人たちをまとめる必要があるため、リーダーシップやマネジメント能力、建築の専門知識・技術が求められます。

<設備> 空調や電気設備などの配置を考えるほか、設計書やスケジュール通りに建設工事がおこなわれているかチェックします。建築設備に関する専門的な知識が必要となり、いかに心地よく安全で、使いやすい建設物にするかが問われます。

<研究開発> さらに有用な建築技術・工事システム・建設資材などを開発するため、研究をおこないます。その企業ならではのバリューを出すため、研究分野にも注力している企業が多いです。

ゼネコン(総合建設業)の年収・待遇について

【ゼネコンの平均年収】

H:ゼネコンは、高収入だと聞きますが、実態はいかがですか?

Uさん:たしかに、ゼネコンはほかの業界に比べ、年収が高い傾向にあると思います。

業界大手の企業では年収1000万円程度、準大手・中堅企業でも800〜900万円台のところが多いのではないでしょうか。

※大手ゼネコン:大林組(約1058万円)、鹿島建設(約1134万円)、大成建設(約1010万円)、清水建設(約1007万円)、竹中工務店(約1043万円)。 ※準大手ゼネコン:東急建設(約946万円)、長谷工コーポレーション(約939万円)、前田建設工業(約929万円)、フジタ(約909万円)、戸田建設(約907万円)、五洋建設(約876万円)、西松建設(約867万円)、三井住友建設(約859万円)、安藤ハザマ(約845万円)、熊谷組(約804万円)。 ※中堅ゼネコン:奥村組(約953万円)、東亜建設工業(約877万円)、鉄建建設(約850万円)、淺沼組(約837万円)、錢高組(約821万円)、大豊建設(約805万円)、飛島建設(約795万円)、東洋建設(約789万円)。

【労働時間・福利厚生・女性は活躍できる?】

H:労働時間はいかがですか? 休みなどはきちんと取れるのでしょうか?

Uさん:ゼネコンは、残業時間が長めで、かなり忙しいことも多いです。 とくに、施工管理・設計・設備などの現場に近い職種では、建設工事のスケジュールを優先して動かないといけません。 そのための休日出勤や、残業はよくありますね。

Gさん:平均して、月に60〜80時間ほどは残業している人が多いと思います。 私も、忙しいときは100時間を超えたこともあります。反対に、同じ建設会社のなかでも営業や研究職ではほとんど残業しないという人もいます。

忙しい対価として、残業手当や現場手当などは充実しているので、個人的には満足しています。

Uさん:ただ、労働環境の改善に向けて、福利厚生を充実させる動きは建築業界全体にあります。休みも少しずつ取りやすくなっていると思います。

H:建築業界というと男性が多いイメージですが、女性でも活躍できる環境でしょうか?

Uさん:主要ゼネコンの現在の女性採用比率は20%程度(※1)ですが、活躍している女性はどんどん増えています。私の周りでは、役職に就いている女性も複数いますね。

ただ、まだまだ男性が圧倒的に多いので、たとえば工事現場におけるトイレだとか、年上の男性たちとの付き合いとか、多少苦労することはあるかもしれません。

Gさん: ほかの業界と同じように、女性社員が産休・育休なども問題なく取れる企業がほとんどです。

同期の女性社員は、女性目線のアイディアが重用されたり、円滑なコミュニケーションができることもあると話していました。

男性人気の高い業界なので、就活でも女性ならではの視点は個性として歓迎されやすいのではないかと感じます。男性とはたらくことが苦にならない人にとって、意外な穴場かもしれません。

※1:日刊建設工業新聞「ゼネコン各社/新卒の女性採用比率は2割で推移/女性の採用増、6割が意欲的(2020年4月24日3面)」

ゼネコン(総合建設業)におけるキャリアとは?

【ゼネコンで身につくスキル】

H:ゼネコンに入社すると、どういった成長が期待できますか?

Gさん:設計や一部の研究職をのぞき、そのほかの職種は総合職として採用され、ジョブローテーションを繰り返しながらキャリアを積んでいきます。 よって、建設・建築・設備にかかわる、さまざまな専門知識を学ぶことになります。

また、「一級建築士」「免震部建築施工監理技術者」「建築設備士」など、業務に必要なさまざまな資格があるため、この取得が奨励されています。 一生ものの資格を手にできるというのは非常にメリットが大きいと感じます。資格を持っていると、転職が有利になり、資格手当もつきます。

Uさん:多くの人が営業職も経験しますが、超大規模案件における立ち振る舞いや顧客への気配り、プレゼンの仕方などを学べるのは、ゼネコンならではだと思います。

勉強と実践を繰り返す環境なので、若手のうちから大きく成長できる業界だと思います。

【ゼネコンのキャリアパス】

H:ゼネコンに入社してから、どんなキャリアを歩むことが多いのでしょうか?

Gさん:企業にもよりますが、入社1〜5年目くらいまでは、先輩について回り、知識を得ることが中心です。このあいだに、さまざまな工事現場を経験していきます。

5〜10年目になると、ひとりでできることが増え、工事現場の実務が中心になります。 その後は、中間管理職・上級管理職など役職付きになり、指導する立場に回ることが多いです。

また、かかわるプロジェクトによって、全国レベルの転勤や、国外への派遣もあります。いつどこに赴任になるかわからない不安はある反面、変化を好む人には適していると思います。

【ゼネコン出身者のネクストキャリア】

H:ゼネコン出身者は、どんな転職をすることが多いですか?

Uさん:資格や専門知識を持っていると、やはりこれを活かせる建築業界内での転職が圧倒的です。

互換性の高い不動産業界への転職も多く、デベロッパー、ハウスメーカー、住宅マンション販売などの職に就く場合もあります。

施工管理業務で培ったマネジメント力・調整力をアピールすることで、メーカーなどの管理職に移る人もいますよ。

ゼネコン(総合建設業)にはどんな企業があるの? 有名ゼネコン一覧

【スーパーゼネコン5社と各社の特徴】

H:ゼネコン業界で押さえておくべき、有名企業を教えてください。

Uさん:スーパーゼネコンと呼ばれる、大林組・鹿島建設・大成建設・清水建設・竹中工務店については絶対に知っておきましょう。

この5つの会社は、長い歴史を持っており、売上も1兆円を超えます。国内のみならず、海外の案件や公的事業も数多く扱っています。

以下に、各社の特徴・傾向を挙げます。

・大林組 国内外に多数の実績を誇りますが、とくに西日本において圧倒的なパイプを持っています。有名な工事物件は、東京スカイツリー・梅田スカイビル・阪神甲子園球場など。 原子力やロボティクスなど、新領域への進出も積極的。 おおらかで多様性を尊重する社風で、早くから女性の採用にも積極的な会社としても知られています。一年目は内勤配属で、建築業界に少しずつ慣れることができます。

・鹿島建設 土木・建築事業以外にも、開発事業にも注力しているのが特徴です。有名な工事物件は、国立新美術館・フジテレビ本社ビル・九頭竜ダムなど。 日本初の鉄道工事や高層ビルの建築を成功させたことでも知られています。 会社全体にやや体育会系の気質があり、情熱的な人が多い印象です。

・大成建設 市街地の再開発・施設運営を得意とする会社です。全国の法定再開発案件の20%に関与しており、ほかの4社と比べても圧倒的です。有名な工事物件は、東京都庁第一庁舎・中部国際空港・明石海峡大橋など。 風通しの良い社風で、若手のうちから活躍しやすい会社です。

・清水建設 大型物件のみならず、中小規模の建築工事にも積極的です。寺社建設や伝統建築などにも精通しています。有名な工事物件は、横浜スタジアム・サンシャイン60・大阪国際空港ターミナルビルなど。 社員の面倒見が良く、就活でも親身になってくれるリクルーターが多いと聞きます。

・竹中工務店 創業1610年と最長の歴史を持っています。とくに建築事業に強みがあり、総売上の90%以上を誇っています。有名な工事物件は、東京ミッドタウン・あべのハルカス・沖縄コンベンションセンターなど。 人材育成に注力しており、長期的に育てていくシステムが整っています。ゆっくり成長したい人にはうってつけの会社といえます。

【売上ランキング(2020年度)】

H:各社の売上ランキングはどのようになっていますか?

Gさん:かなり競り合っていますが、2020年度は以下のようになっています。

1位 清水建設 1兆4176億円 2位 大林組 1兆4164億円 3位 大成建設 1兆4095億円 4位 鹿島建設 1兆3051億円 5位 竹中工務店 1兆0539億円

ゼネコン(総合建設業)は地図に残る魅力的な仕事

ゼネコン業界について、現役社員の意見をもとにまとめてみました。 地図に残る魅力的な仕事ですが、業界全体として高齢化が進み、工事をとりまとめる現場において、いまとくに若い人材が求められているようです。 本記事から、少しでもゼネコン業界の魅力が伝わると幸いです。 UさんGさん、ありがとうございました!