専門商社現役社員インタビュー・はじめに
商社が持つ仕事の面白みと、特化した業界での高い専門性を兼ね備えた、専門商社業界。 ただ、「商社」ときくと、三菱商事などの総合商社業界が頭に浮かぶ人も多いのでは。 また、専門商社業界で働く人が実際にどんな風に仕事をしているのか分からない場合もあると思います。
そこで今回は、鉄鋼系専門商社のA社で営業職として働くSさん(2年目)にインタビューを実施しました。
「専門商社ってどんなことをするの?」「専門商社の社員の社会人生活は?」「専門商社への就活で大切な考え方って?」など、私たちの疑問に、専門商社の現役社員が徹底的に答えてくれました!
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1.専門商社のビジネスモデルと、総合商社とのちがい
<商社業界の仕組み>
------本日はよろしくお願いします! 専門商社での具体的な仕事内容や就活のお話をうかがう前に、まず商社業界のビジネスモデルについてお聞きしてもいいですか?
Sさん:商社の業界の基本的な商売の仕組みをお話しします。この図を見てください。
商社業界は、貿易や取引の仲介をすることで収益を得ています。 詳しく説明しますね。
商社Aは、お客さまである企業B(メーカー)が、「新商品開発のため必要な原料を探している」という情報を入手します。いっぽう、企業C(メーカー)が「開発した原料を売りたいと考えている」ことも知ります。
そこで商社Aは、企業Cの原料を買い、企業Bに売る条件を整え、企業Bに納品します。このとき出る利益が、商社Aの儲けです。
つまり、商社の介在価値は、企業Bの安定的な原料調達の役割を果たすことと、企業Cの販路を拡大することなんです。
<専門商社・総合商社のちがい>
------なるほど! 総合商社と専門商社で、取引形態にちがいはあるのでしょうか?
Sさん:基本的にちがいはありません。 ただ、専門商社はお客さまや取引先が限られた業界で、よりニッチな需要に応えるビジネスです。総合商社はあらゆる商材を手広くやっている企業、という感じですね。
私の勤める鉄鋼系専門商社では、主に機械製造メーカーに素材や部品を供給しています。
さきほどの図で言うと、機械装置を製造している企業Bに、企業Cから購入した素材や加工部品を提供する役割です。 これが食品系商社なら食料の原料を、化学品系商社なら化学品材料の取引を仲介する、というのが、専門商社のビジネスモデルです。
------Sさんは営業職としてお勤めですが、専門商社の営業職はどんなことをするのですか?
Sさん:企業Bや企業Cとのやりとりをする役割です。 企業Bのニーズを聞いたり、企業Cからの購入金額を考え企業Bに売る競争的な価格を出したりするのが、専門商社営業職の日々の業務です。 専門商社のみならず、「商社の仕事」と聞いてもっともイメージしやすいポジションですね。
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2.現役専門商社マンの、実際の仕事と待遇
<専門商社社員の社会人生活>
------専門商社で働くSさんの日々の過ごし方を詳しく教えていただけますか。
Sさん: 1週間のスケジュールをご説明しますね。 月曜日は、取引先にアポを取ったり、納期の確認をしたりと、事務作業に充てています。
火曜から金曜日は、アポイントを入れたお客様のところをまわります。 事前にアポが無くとも、お客様の会社の近くを通る際は電話をし、訪問することを心がけています。
------進行中の案件のフォローができそうですし、お客様との関係性もより深まりそうです。 アポでお話しした内容をどうやって商社の業務に展開するのですか?
Sさん:アポの際、お客様から手配に困っているアイテムや価格検討したいアイテムの図面を引き出してきます。そして、それを社内で検討します。 見積を提出し、そのフォローを継続的に行うことで扱うアイテムを増やせるようにするのが仕事です。
------継続的な提案で、仕事が拡大していくのは商社の醍醐味ですよね。 Sさんは社内では若手かと思いますが、先輩に相談したり学んだりする機会はあるのでしょうか?
Sさん: はい、あります。日頃から聞ける雰囲気はありますし、課やチームでのミーティングがあるので、困っている案件は相談できます。 先輩方の報告を聞いて、自分だったらどうするか考えてみたり、やり方をお手本にしたりと、先輩の経験から学ぶことも多いです。
<専門商社の仕事の面白さと意外なギャップ>
------鉄鋼系専門商社の仕事で、面白い・やりがいがあると感じるのはどんなところでしょうか?
Sさん:1つ目は、やりたいと考えていた、商社の営業の面です。 取引のなかった企業と取引の入り口を作ることができたり、新しいアイテムを手がけることで取引が拡大していったりするところですね。 既存のアイテムだけでなく、新しいアイテムの取引ができるようになると、「やった!」と思います。
具体的には、今まで当社と面識のなかった企業にアポイントをとって訪問し、アピールを続けた結果、ある部品の品質向上が期待され、取引を始めることができました。 商売をさらに大きくできるよう、今も試行錯誤しているところです。
------取引拡大の面白さは商社ならではですね。専門商社での仕事を面白いと感じる2つ目はどんなことでしょうか?
Sさん:「製品ができるプロセスを実際に見ることができる」のも、専門商社の仕事の魅力だと思います。 商社という立場なので、自ら加工する訳ではありませんが、やはり物づくりに関われるというのはワクワクしますね。
------最近ではどんなことでワクワクしましたか?
Sさん:ある砥石メーカーの工場を見学し、製品完成までの工程を見たことです。
ひとつの製品を作るには、多くの、そして知らない工程があり、それを目の当たりにできるのはとても面白いです。また、商社の立場としてその工程に触れると、「物づくりに関わっているんだ」とやりがいを感じます。
------これも、専門商社業界だからこその経験ですね。
Sさん:販路開拓と業界特化の物づくり、両方に関われるのは専門商社業界で仕事をする醍醐味だと感じます。
------専門商社に入社した前と後とで、ギャップを感じることはありますか?
Sさん:そうですね......。「自由すぎる」ことです。 どこに営業に行くかも、どのメーカーさんに物を作ってもらうか決めるのも、自由なんです。もちろん一定の条件はありますが。
------Sさん、若手なのに、そこまで自由なんですね。その分裁量が大きく、魅力とも取れると思いますが、やはり戸惑いはあったのでしょうか。
Sさん:はい、多少ありましたね。 物づくりの知識ゼロの状態でフィールドに出ることになり、自分でレールを敷くところからトライしたので、専門商社の立場としてどう動けばいいかわかるようになるまで、苦労はありました。
<専門商社に向いている人物像>
------専門商社の業界は若手のうちから仕事を任されると聞きますが、そこまでとは! 自分で考える力が身につきそうですが、どんな人が向いていると感じますか?
Sさん:専門商社は、新しいことが好き・考えることが好き、という人に向いている業界だなと思います。:専門商社は、新しいことが好き・考えることが好き、という人に向いている業界だなと思います。
------Sさんは就職活動時、そういった持ち前の資質を商社の選考でアピールしたんでしょうか?
Sさん:そうですね。専門商社の面接では、新しい環境に飛び込むことが好き、周りの人が楽しめるように考えて行動するのが好き、という話をしていました。
実際商社で仕事をしていても、物づくりの方法はひと通りではないなと感じます。
専門商社の営業職は、「こうすればうまく行く」と決まったマニュアルがある仕事ではありません。だからこそ、どうすればうまく行くか、どうしたら失敗するリスクが少なくて済むかを考えられる人が活躍していますね。
また、自分では考えられていると思っていても、仕事を進める中で思考が浅い、と気づかされることは多々出てきます。まだまだ精進です。
------「自分で考えられる人」というのが、専門商社で活躍できる人のキーワードですね。
<海外勤務・駐在の可能性>
------「商社」といえば海外をイメージします。A社の場合、海外とのやり取りはどの程度ありますか?
Sさん:実はあまりありません。当社は、日本の加工メーカー様で作ったものを日本のお客様に納入する専門商社なので。
------それは意外です。今後、海外への駐在の可能性はありますか?
Sさん:最近、海外に合弁会社が発足し、研修生として派遣される可能性がありまして。駐在は、20代の後半ごろから、1年間程度の場合が多いです。
------専門商社でも、やはり海外で活躍できる可能性は高いのですね。
<ワークライフバランスと待遇>
------出勤・退勤時刻はどんな感じでしょうか?
Sさん:出勤は8時すぎ、退勤は19時前後が多いです。
------専門商社の営業職となると、激務を想像しがちですが、思ったより適正な労働時間ですね。終業後はどんなことをして過ごしていますか?
Sさん:会社が用意してくれる研修に参加することもあれば、TOEICや簿記の勉強、読書に時間を充てることが多いです。
------専門商社パーソンは、自己研鑽も大切なんですね。休暇は取りやすいですか?
Sさん:休暇は事前に報告していれば取れます。休暇を取りにくいと感じたことはないですし、そういう雰囲気も全くありません。 男性が育児休暇を取得するケースもありますし、実際私の上司は管理職の立場になってから取得していました。
------休暇に対する社内の雰囲気も良さそうですね! ちなみに、専門商社の給与の仕組みはどのようになっているのですか?
Sさん:すべての専門商社が同じではないと思いますが、弊社の例を紹介します。 1年間の自身の営業成績によって人事評価がなされ、それに比例して給料が変わります。また、賞与にも営業成績が反映されるので、仕事がうまくいけばその分自分に返って来ますね。
------結果が評価に繋がるとモチベーションに繋がりますね。
3.専門商社内定へのプロセスと就活ですべきこと
<専門商社に惹かれたワケ>
------Sさんが専門商社業界を志望した理由は何だったんですか?
Sさん:「自分の好きなものや人を、胸を張って紹介できる人間になりたい」と思ったからです。 就活を始めるとき、「どんな人間になりたいか」を考え抜き、至った思いです。
------自己分析を深く掘り下げたんですね。「自分の好きなものや人を、胸を張って紹介できる人間」となると、窓口の「営業職」が浮かんできますよね。
Sさん:はい。企業で営業職をやりたいなと考えるようになり、メーカーの営業職と商社の営業職を比較しました。 メーカーは自分の所属する組織で作られたもののみを扱ういっぽう、商社は扱える商品が幅広く存在します。商社のそういった点に惹かれ、商社の営業職を志望するようになりました。
――Sさんはなぜ総合商社ではなく、専門商社を志望したのですか?
Sさん:総合商社では、自分が扱いたいと思うものが扱えない可能性があるからです。 総合商社は、たとえば「エネルギー部門」「鉄鋼部門」「食糧部門」のように、企業内で組織が分かれています。総合商社の配属では、希望部門にいけない可能性もあるなと考えました。
そこで、就活を進めていくなかで興味が大きくなった「ものづくり」にフォーカスした商社で働きたい、と考えました。
------専門商社のなかでも、なぜ「鉄鋼系商社」という業界に絞ったのでしょうか?
Sさん:鉄鋼系商社の仕事は、ほかの専門商社と比べて、最終的な製品が目に見える形で残るものが多いからです。 自分が直接製作するわけではありませんが、自身の営業の結果、製品に関わることで、自分や周りの人に誇れる仕事になると思っています。
たとえば、弊社ではテーマパークの部品や、駅にあるものの部品を扱っています。
------まさになりたかった「自分の好きなものや人を、胸を張って紹介できる人間」ですね。数ある鉄鋼系の専門商社の中から、いまの会社を志望した理由は何だったのでしょうか。
Sさん:多くの社員さんとお話をする中で、会う社員の方々が、自分の手掛けた仕事をキラキラした目で話してくれたことが印象的だったからです。
この方々と同じように、「目に見えるものを残せる仕事に誇りを持てる」、そんな専門商社パーソンになりたい、と自然に惹かれていきました。
------専門商社の中で、ほかにはどんな企業を見たんですか?
Sさん:インテリアやエクステリアの専門商社を見ていました。
------「目に見えるものを残せる」専門商社業界、ということで筋が通っていますね。
Sさん:私の場合、自己分析を掘り下げたことで、「営業職」かつ「商社」の中の「専門商社」と志望業界を絞っていけました。
<専門商社の内定プロセス>
------A社内定に至るまでの採用フローを教えてください。
Sさん:営業の社員もしくは人事部社員との1対1の説明会を取り付け、そこから面接に進んでいきます。
------専門商社で、1対1の説明会ですか。それは珍しいですね。
Sさん:はい。弊社ではここ数年、集合説明会は実施しておらず、企業のウェブサイトや、エンカレッジなどの就活支援団体を通じて募集をしているんです。
ひとくちに専門商社と言っても、採用の仕方は企業で大きく異なります。 なので、各専門商社や興味のある企業が、どのような採用プロセスなのか確認することが大切ですよ。
------説明会では、何人ほどの社員の方に会ったんですか?
Sさん:15人くらいです。 いわゆるOB/OG訪問としては多い方だと思いますが、採用プロセスの中でほかの方を紹介していただいたりして、のべ人数として自然とお会いできる方が増えていきました。
多くの社員に会うことは、同じ企業をいろいろな人の視点で見ることができ、かつ生の情報を得られるので、非常に大事だと思います。
------たくさんの社員の方とお話ししたことで、具体的にはどのような理解が深まりましたか?
Sさん:専門商社の営業職として働いている方たちからリアルなお話が聞けたので、A社で自分が営業として働く姿が想像できました。 社員の皆さんは優しく、どんなことも聞けば教えてくれる雰囲気で、そこも魅力に感じましたね。
<就活中にやって良かったこと・すべきだったこと>
------晴れて専門商社に入社できたSさんですが、ご自身の就職活動でやって良かったことはありますか?
Sさん:やはり先ほどお話ししたように、「たくさんの社員に会ってみる」のは良かったことです。 少ない情報だけでは、その情報が正しいかの判断や、傾向を掴むことが難しくなります。
説明会や選考を通じ多くの社員と会いましたが、実際に会ってみて、新鮮な情報や社員の方の雰囲気などに触れることができました。 そして、自分で調べるだけより、はるかに多くを知ることができます。
もう1つは、「入りたいと思った会社は、業界と切り離して考える」ということ。 たとえば、「商社業界は体育会系だ」とか「専門商社の平均残業時間はどうだ」とかは、あくまで傾向にすぎません。「自分が入りたいと思った会社がどうなのか」という情報を読み取ることが大切だと思います。
------反対に、やっておけば良かったと感じたことはありますか?
Sさん:専門商社のみならず、業界を幅広く見ることですね。私は、鉄鋼専門商社業界では、弊社しか見ていませんでした。
------幅広く見るのが大切というのは、なぜでしょうか?
Sさん: 弊社では営業社員との1対1での説明会があったので、他社と比較せずとも有益な情報が得られたんです。
ただ、今となっては、もう少し広い目で就活したり、商社に限らず広く業界を見たりしても良かったかなと思っています。
より広く選択肢を持っていた方が、万が一少し方針や考え方が変わった時でも、うまく対応できるかと思います。
------最後に、専門商社を受けようと考えている就活生へのメッセージをお願いします!
Sさん:「自分が幸せに感じるのはどんな場面なのか?」「自分にとって理想はどんな状態なのか?」を考えながら就職活動すると良いのではと思います。
日本には何百万という会社があり、様々な会社が採用を行っています。商社に限らず多くの社員に会い、みなさんにとっての理想に近い会社と出会えることを願っています。
――自分で情報を掴み、次に起こすアクションを考える姿勢は、まさに鉄鋼系専門商社での働き方にフィットしていますね。Sさん、ありがとうございました。
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