はじめに
よく耳にする、「ブラック企業」「ホワイト企業」という言葉。雑誌などで、ランキングが組まれることもしばしば。
就職するなら、なるべく待遇の良い企業がいいと思っている人が大半ですよね。
しかし、そもそも何をもってブラック/ホワイト企業と判断するのでしょうか?
本記事では、先輩たちの体験談をもとに、ブラック/ホワイト企業の本質と、ほんとうに幸せな就職のためのポイントを探っていきます。
1.いわゆるホワイト企業・ブラック企業ってどんな会社?
■ホワイト企業 一般的に、労働環境と待遇が優れている会社は、ホワイト企業と呼ばれます。
<ホワイト企業の特徴例> ●残業時間が少ない 労働時間は1日8時間以下を基本とし、月45時間を超える残業を強要しない。
●基本給が高い 残業代やボーナスとは関係なく、毎月の給与が高いレベルで安定している。
●有休を取得しやすい 有休日数が多く、実際の有休取得率も高い。
●福利厚生が手厚い 基本給以外の手当(住宅手当、家族手当、交通費補助、慶弔手当など)の充実。社員食堂や健康診断補助、施設やサービスを格安で利用できることも。
●コンプライアンスが遵守されている 労働基準法や契約をきちんと守り、社内ハラスメントへの対策も徹底されている。違反社員にきちんとした罰則がある。
●男女ともにはたらきやすく、ワークライフバランスを重視している 産休・育休・介護休、時短勤務制度など、性別にかかわらず、仕事以外の人生も充実させられる制度が充実している。
●人事情報が公表されており、離職率が低い 退職者数、年齢、性別比などの情報を一般に公開している。入社から定年まで勤める人も多い。
●スキルアップ制度の充実 社員をきちんと育てるため、研修制度や資格取得のための補助が充実している。
●評価制度が明確 上司の好みではなく、総合的で客観的な評価体系があり、役職や給与への反映もおこなわれる。
また、厚生労働省が認めた優良企業には認定マークが贈られます。国が公にホワイト企業だと評価しているため、信頼できる情報のひとつです。
<ホワイト企業エピソード>
●予期せぬ出来事への手厚いフォロー
大手飲食メーカー勤務です。営業職で体育会出身者も多いため、就活時の情報からハードな労働を覚悟していたのですが、超待遇の良い企業でした。同期は約80名ですが、入社7年目でも退職者がほぼいません。
労働時間・給与・研修体制どれも満足ですが、感動したのは、持病で入院したとき。完璧なフォロー体制ですぐに休め、療養中の給与は満額支払われました。復帰もスムーズでした。
ふだんの待遇のみならず、不測の事態が起きたとき、会社に守ってもらえるのはありがたいです。(Eさん、女性、30歳)
■ブラック企業
一般的に、ホワイト企業の真逆をいく、過酷な労働環境と待遇を強要される会社。労働基準法に違反していることもしばしば。
企業研究をすれば、あからさまに待遇の悪い企業の情報は得られそうなもの。しかし、先輩たちによると、就職前はホワイトに見える会社も多いのだとか。
<ブラック企業エピソード>
●さまざまな福利厚生があったが...... 出版社勤務です。入社前、育児休暇や生理休暇など「女性に優しい」福利厚生を導入したと聞いていました。
しかし実態は、男性社員が多く利用者はゼロ。取得を渋られ、セクハラまがいの返答を受けたこともありました。
さらに、「ノー残業デー」は、オフィス横のカフェで仕事をするありさま。時短勤務や遠隔地勤務も、申請すると何かと理由をつけて却下され、ホワイト企業とはほど遠かったです。
「制度がある」だけではダメです。ほんとうに使えるか確かめるべきでした。(Mさん、女性、27歳)
●高給のおどろきの真相 給与が高いことに惹かれ、入社したITベンチャー。はたらいてみると残業と休日出勤がとても多く、基本給には見込みの残業代が含まれており、残業代がほとんど出なかったんです。
きちんと確認していなかった自分が悪いですが、労働時間に対して実際の給与はとても低く、割に合いませんでした。(Nさん、男性、31歳)
待遇の悪い企業のエピソードには、長時間の残業や休日出勤を強いる、休暇取得を渋る、給与や残業代の未払い、正統な理由のない減給、ハラスメントの横行、精神論が多いなど、かなりつらいものが多く聞かれました。
<まとめ> ・ホワイト企業は、従業員を優先し、心地いい労働環境・待遇を提供する会社のこと。 ・ブラック企業は、利益優先で、過酷な労働環境・待遇で従業員をないがしろにする。労働基準法に違反することも多い。
2.意外な側面! ホワイト企業で後悔したこと・ブラック企業でよかったこと
ところが、一般的なブラック/ホワイト企業の認識にとどまらない、別の側面もあるようです。
<ホワイト企業エピソード>
●休みが多く残業ほぼなし。 しかし、若手給与は......
「ホワイト企業ランキング」でも常連の、インフラを扱う企業に入社しました。会社が公表している情報どおり、9〜17時勤務で、休みも多かったです。若手の仕事はかんたんな雑務で、残業もありません。
ただ、年功序列で給与が上がるのと、残業代で稼ぐことができないため、同世代の友人の平均給与とかなり差があります。忙しくはありませんが、お金面での不満が溜まるいっぽうで後悔しています。(Yさん、女性、29歳)
<ブラック企業エピソード>
●ブラック企業だからこそ得られたスキル
1社目はつねに成績ランキングが貼り出され、みなピリピリしていましたが、年功序列でなく実力主義の風土は、「成長したい」私にぴったりでした。 人手不足でひとりでさまざまなプロジェクトを担当したため、多くのスキルを身につけられました。
これを見込まれ他社にヘッドハンティングされたのですが、 ホワイトな環境にいた同期とはできることのレベルがちがうので、現在は "即戦力"として異例のポストについています。(Hさん、男性、34歳)
先輩たちのエピソードを総括すると、個人のキャリア嗜好によって、いわゆるブラック/ホワイト企業の認識は変わることがわかります。
仕事で「稼ぐ」ことを重視する人にとっては、どんなに休みが多く、やりがいのある仕事でも、不満を感じることになってしまいます。
自分の嗜好を加味せず、世間のブラック/ホワイト企業という情報だけで判断するのは、残念な食い違いの原因になりかねません。
このほか、先輩たちが入社してわかった、ブラック/ホワイト企業の意外な側面をまとめてみました。
<ホワイト企業で後悔したこと> ・年功序列で評価されるので、ずっと休職している人ややる気のない人も多く、ストレスを感じる。(Oさん、女性、26歳)
・会社のいうとおりに動くだけでいいので、主体性がなくなる。ぬるま湯のような環境で成長できず、転職して「使えない」と言われた。(Tさん、男性、29歳)
・「ルールで決まっていること」以外の融通が効かず、動きが遅い。(Kさん、男性、31歳)
・残業できないので、手当がつかない。そのぶん、給与が低かった。(Yさん、女性、29歳)
・長く勤める人が多いので、社内政治や人間関係に気をつかう。(Uさん、男性、24歳)
<ブラック企業でよかったこと> ・ハードな環境が性に合っている場合、ものすごく成長できる。(Kさん、男性、25歳)
・短期間でさまざまなスキルや人脈が得られ、いい条件で転職できることも。(Hさん、男性、34歳)
・労働時間が長いぶん、同世代平均より給与も良く、役職づきになった。稼ぐことを重視しているので満足。(Mさん、男性、31歳)
・実力至上主義で、情熱を持った人が多いので、やりがいを感じる。(Hさん、女性、28歳)
・決まりが少ないぶん、交渉次第で柔軟な対応をしてもらえることも。社長を説得して、週3勤務でOKになった人もいる。(Iさん、男性、29歳)
<まとめ> ・「会社に求める要素は何か」によって、入社後のブラック/ホワイト企業の認識は変わる。 ・人によっては、いわゆるホワイト企業にデメリット、ブラック企業にメリットを感じることがある。
3.「自分にとってのホワイト企業」を見つけるには?
一般的なブラック/ホワイト企業の認識が、自分の価値観とはちがう場合もあります。 「自分にとってのホワイト企業」に入るために重要なことを、先輩たちの意見をもとにまとめました。
■自分のキャリア嗜好を知る。
キャリア嗜好において、ブラック/ホワイト企業に関係する要素をいくつか集めました。 自分に正直に、何を重視するか考えてみてください。また、優先する要素をランキングにして整理するのもおすすめです。
■社員や社会人の先輩に話を聞き、実態をきちんと把握する。
会社説明会やホームページで得られる情報だけでは、ほんとうの労働環境や待遇はなかなかわかりません。
実際にはたらく社員に話を聞くことで、入社後のギャップを減らすことができます。
また、社会人ならではのアドバイスをもらうことで、自分の嗜好を見つめ直すことができます。
<ブラック企業エピソード>
●「やりがい」の恐さ。自分はタフだと思う人ほど知って欲しい 就職で重視したのは「やりがい」で、労働環境・待遇ともに最悪でしたが、憧れの仕事につきました。体力には自信があったのですが、年齢とともに身体を壊してまったくはたらけない状態に。
仕事漬けだったので、友人や家族とも疎遠になっており、金銭的にも困窮し、「いままで何のためにはたらいていたんだ?」と思いました。なんとか転職しましたが、このときのことはトラウマです。
これから就活するみなさんには、いまの自分だけでなく、将来の自分や、生涯のプランをよく考えて、と伝えたいです。(Kさん、男性、30歳)
就活時にはスルーしがちでも、社会人から見ると重視すべき要素は多くあります。自分にはない知見を得られるので、なるべく多くの社会人に話を聞くといいでしょう。
■「自分にとってのホワイト企業」を、つねに探求する。
運や縁で、合わない会社に入ってしまうことはあるかもしれません。 そこで無理して消耗するより、「自分にとってのホワイト企業」を探すべき、と先輩たちは言います。
<ホワイト企業エピソード>
●自分はダメな人間だと思い込んでいた 待遇が良いことで有名なメーカーでエンジニアをしていたのですが、年長者との人間関係が苦手で、「問題児」「できない人」扱いされていました。
入社3年目に、思いきってベンチャーに転職しました。周りからは「バカだなあ」と言われることもありました。
給料もかなり下がりましたが、上司がいなくなったことで仕事がしやすくなったんです。翌年、大きな成果を出すことができ、情報誌で取り上げてもらうまでになりました。
前の会社にいたら、それなりの給与はもらっていたかもしれませんが、エンジニアとして大成することはできませんでした。転職してほんとうによかったです。(Sさん、男性、34歳)
場所を変えることでひらける道があるかもしれません。世間のブラック/ホワイト企業の評価やランキングと関係なく、自分に合う会社に転職する勇気も必要です。
「少なくとも3年間ははたらかないと、合う・合わないはわからない」などといわれますが、そんなことはありません。
そのあいだに、せっかくのチャンスを逃したら意味がありません。
就職後も、広い視野を持ち、アンテナを張り続けましょう。
■ブラック企業だと感じたら、すぐに逃げる。
一般的にブラックといわれる会社でも、メリットを感じ、うまくやっていける人がいることはお伝えしました。 しかし、やはり残念ながら「誰にとっても悪影響を与える、ブラック企業」は存在します。
とくに「長時間労働」「低賃金」「ハラスメントの横行」などは、どんなに頑丈な人でも、心と体の健康をそこねてしまうでしょう。
これに加え、「福利厚生が充実していない」場合、療養時や退職時、お金の面でも困ることも。
ブラック企業のほんとうに怖いところは、「逃げられない」ところです。
退職する人を「根性がない」と詰ったり、無茶な待遇に反発する人を「無能だ」と罵ったりします。疲労と、精神的な恐怖で、真面目な人ほど「自分のがんばりが足りないせいだ!」と、ずるずるはたらき続けてしまいます。
ひとつの基準として、労働基準法に違反する会社は、どんなに成長できる場所であっても、絶対に避けましょう。
そうでない会社でも、はたらくメリットよりデメリットの数のほうが多く挙げられるなら、退職すべきです。
転職すれば無限の可能性があるのに、無理をしてはたらけない状態になってしまえば、元も子もありません。
<まとめ> ・「自分にとってのホワイト企業」を見つけるには、キャリア嗜好をきちんと把握し、社会人の意見を参考にする。 ・就職後も広い視野を持ち、より良い職場へのアンテナを立て続ける。 ・「合わない」と感じたら、迷わず転職の道を探ろう。
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