公開日:
最終更新日:

「金融×IT」の仕事とは ~決済データが明らかにする新型コロナウイルスの産業への影響~

今回お話を伺ったのは、三井住友カードデータ戦略部の日向さん。「金融」「クレジットカード」のイメージも強い中、「データサイエンス」の領域が今注目されているとのこと。最新の事例も交えて、「金融×IT」の魅力をお話いただきました。

三井住友カードの「データ戦略部」とは?

―本日はよろしくお願いいたします。まずは簡単に自己紹介をいただけますか。

日向:三井住友カード株式会社の日向と申します。

私は理工系の学部を卒業後、新卒で金融機関に入社し、データを元にコンサルティングや投融資のリスク管理などを担当していました。その後、IT企業に転職すると、人々の位置情報を分析し自治体や鉄道会社などに提供する業務を中心に従事しました。そして、2019年9月に三井住友カード、データ戦略部のデータアナリストとして入社をしています。

前職・現職と一貫してデータサイエンスに関わるキャリアを歩んできました。

―「三井住友カード」と聞くと一般的な就活生は「金融」「クレジットカード」といった言葉を思い浮かべ、「データ」「IT」といったイメージを連想しづらいように感じます。

三井住友カードのデータ戦略部とは、一体どんな仕事をしているのでしょうか?

日向:確かに、三井住友カードという名前を聞くと、いわゆるカード会社で、消費者の皆さんにクレジットカードを使ってもらうために仕事をしている、というイメージが強いかもしれませんね。

私たちは、特に健全なキャッシュレス社会の実現を目指し、決済手段を提供している会社です。もちろん「クレジットカードを使ってもらう」ということも重要なのです。

しかし、昨今ではテクノロジーの進歩に伴い、決済手段を提供していく過程で新たな付加価値を提供するステージに突入しています。

その一つが、まさに私たちデータ戦略部が取り扱っている「決済データ」です。

―決済データとはどのようなデータを指しているのでしょうか。また、決済データからどのような付加価値を生み出すことができるのでしょうか。

日向:ユーザーの皆さんがクレジットカードを利用すると、誰が、どこで、いくら買ったのかという決済情報が蓄積されていきます。

キャッシュレス決済の普及も追い風で、当社には月間何億件もの決済データが蓄積されています。

従来は、これらの決済データはお客様への請求業務や不正検知業務など、いわゆるクレジットカード事業の運営のために利用されていました。

しかし、近年のテクノロジーの進歩によってデータ分析領域も大幅な進歩を遂げ、蓄積された膨大な決済データを分析/活用することで、様々なビジネスに役立てることができるのではないかというパラダイムシフトが生まれました。

そして、そのパラダイムシフトを事業化するために生まれたのが私が所属しているデータ戦略部です。

これは一例ですが、決済データの分析により「この地域に住む人はこういう買い物をする傾向が強い」といった情報が得られます。

この情報は、世の中のビジネスシーン、マーケティングや事業戦略にどう活用できるでしょうか。

例えば、小売企業の店舗戦略に対してであれば「この地域にはターゲット顧客に近いセグメントが多く居住しており、新店舗を出すと顧客増加が見込めます」「この地域には富裕層が多く居住しているので高級志向の商品が売上増加に繋がります」そんな提案につなげることができます。

こうした三井住友カードが保有する決済データをもとに、企業や地方自治体の現状把握・施策遂行・意思決定をサポートするのが、データ戦略部のミッションの一つです。

決済データを用いた分析について、もう少し具体的な事例を見てみましょう。

新型コロナウイルスの産業への影響は?

日向:今年、新型コロナウイルスが世界的に流行し、大きな被害を及ぼしていますよね。日本でも緊急事態宣言が発令され外出自粛要請などが行われました。これによって人々の消費行動、産業にも大きな影響が出ています。

日本でも類を見ない状態の中で、経済にどういう影響が出たのかをマクロな視点から分析し、消費者の消費行動の変化を明らかにしていくことで企業や自治体をサポートしようと、決済データを元に消費行動レポートを作成しました。

まず一つ、分析の例を見てみましょう。人々の可処分所得のうち、衣食住、生活娯楽、旅、学びなどの決済行動の内訳はどれくらいかとを示す「お財布シェア」という概念があります。

日向:2019年はシェアの推移にほとんど変化は見られませんでしたが、2020年は大きな変化が発生しています。

皆さんも想像がつくかと思いますが、緊急事態宣言に入って旅行などが抑制される中で、EC系*のシェアが伸びています。このグラフはシェアですが、実際の消費額についても増加しています。

また、「衣食住」でみると、「衣」は4~5月減少する一方で「食・住」はあまり変動がないのも面白いポイントです。

また、業種ごとのオンラインチャネルに着目すると、衣服小売や家具・雑貨といった業種がコロナ禍でオンラインシェアが一気に高まる一方、スーパー/ホームセンターのような店舗はECシフトが起きていないことなどもわかります。

日向:さらに、これらのデータを、性別や年代別で切り分けることも可能です。

女性は、家族の在宅で家での食事が増えたのか、「食」に対する支出割合が増えていたり、お年寄りはECの利用が少ないというイメージもありますが、こうした状況下においてはECへのシフトが起きているということもわかりました。

日向:緊急事態宣言を「宣言前」「宣言中」など各フェーズで切り分けて分析してみることも可能です。

例えば、家電量販店での購買行動について見てみましょう。

緊急事態宣言中、決済件数は増えている一方、決済金額は増えていない、言い換えれば比較的少額な購買が増加していることがわかります。

これは、多くの人が在宅ワークにあたってWebカメラやマイクといった単価が低い購買を行ったことが要因でしょう。

そして、緊急事態宣言が開けると、件数も金額も向上していることがわかります。リアル店舗が開くことで、白物家電など大きな買い物が増えているのですね。

日向:他にも、緊急事態宣言中はホームセンターやEC、玩具・娯楽品といった家中消費が目を引いていましたが、宣言解除後、スポーツブランドが大きく伸びています。外出の再開や在宅での運動不足解消など、家中消費から家外消費への変化を見出せます。

以上のように人々の購買行動データを分析することで、コロナウイルスによって消費行動がどう変わったのかを知ったり、今後コロナウイルスが収束していく、あるいはwithコロナにおいての人々の消費行動を予測することが可能になるのです。

コロナウイルスによる消費の減退や経済への影響が懸念されている現在ですが、こういったレポートを元に、先ほどもお話ししたような形で企業活動へのアドバイスができれば、販売促進をサポートすることもできるでしょう。

こうした一連の活動が、決済手段を提供しそのデータを蓄積している我々だからこそ成しえる「データ事業」であり、提供できる付加価値と言えます。

―確かに、こうした活動を行なっているイメージはあまり無かったですね。まるで、調査会社やコンサルティング企業が行うような事業に感じます。

日向:まさしくその通りで、データ戦略部は「調査」だけではなく、「コンサルティング」まで担っているセクションであると感じています。

更に付け加えると、通常の調査会社やコンサル会社と違い、当社は決済事業という消費者・事業者と密接したサービスのご提案までつなげることができることができます。

既に多くの事業者と繋がりがあり、様々な企業のビジネスを決済という面からサポートしてきた経験や知見が会社内に浸透しているため、ただ単に分析した結果を数字として並べるだけではなく、「その背景や要因は何なのか」、「示唆はなにか」、「打ち手はあるか」といったところまで思いを馳せることが当たり前となっています。

この風土があるからこそ、ただ「調査だけ」や、データ分析で見えた「示唆だけ」に留まるのではなく、きちんとお客様の行動/成果に繋がるような「提案」をしていくことを大切にしており、それが我々の生み出す価値になっていくのではないかなと考えています。

三井住友カードでのキャリアの魅力

―すごく興味深い仕事ですね。一方で、理系あるいはデータ系に知見のある学生が、就活で金融/決済の会社を目指すことは珍しいような感覚があります。推薦で研究職を目指すなど、いわゆる「理系らしい」就活が一般的だと思います。

そんな中で、理系学生にとって、三井住友カードならではのキャリアの魅力はどんなところにあるのでしょうか?

日向:様々な魅力がありますが、その中でも特徴的なのは二点ではないでしょうか。

まずはビジネス/データ両面での専門性を高めていける、理系学生向けに言い換えれば、研究のみでなく、ビジネススキルを鍛えていける点です。

データを用いてクライアント企業の活動に貢献するためには、企業のビジネス構造を理解した上で、ビジネス課題を把握し、その課題解決に資するデータを整理し、分析を行う必要がある。その結果として、解析した情報からビジネスを成長させるための提案を行うことができます。

逆に、ビジネス構造を捉えずにデータを分析しても、なんだかそれっぽいまとめはできたけど、ビジネス上の施策には繋がらないね、という無駄なものになってしまいかねません。

我々の仕事においては、データという専門性/得意領域を持ちながらも、それと同等にビジネス構造への感覚も重要になってくるのです。

さらには、決済データを取り扱うという業務の性質から、消費者の生活様式や消費行動の時流に触れ、思考をすることが非常に多くなります。マーケティング的な観点が自然に身に付く環境とも言えるでしょう。

研究家的な業務だけでなく、ビジネスを構造的に捉え成長させる力やマーケット感覚を身に付けたい方、仕事を通じてお客様や社会に貢献したいという方にとっては、非常に魅力的な仕事だと思います。

―理系/データ系に知見がありながらも、いわゆるビジネスに挑戦したい学生にとっては魅力的な環境ですね。

日向:そしてもう一つの魅力は、豊富なアセットと挑戦機会を兼ね備えた、大企業の中でもベンチャー気質のある環境です。

三井住友カードは金融/決済の会社として長年活動し発展してきました。その中で、テクノロジーの進化によって「決済データ」が新たなコアバリューとして生まれてきた、というタイミングにあります。

言い換えれば、データ領域はまさに立ち上げ期。膨大なデータというアセットをどう活用し、どのようにビジネスに発展させていくか挑戦するダイナミックな時期で、データ戦略部は社内ベンチャー的な活動が求められています。

そして、「IT/データ」という領域自体が、若い人が即戦力になりやすい領域でもあります。近年生まれた領域ですから、ベテランも若手もスタートラインは同じ。データ事業では思考力やこれまでの努力で活躍ができる点もポイントです。

若手社員から部長までがフラットな立場でデータを机に挟んでアイディアを出し合う、いわゆるベンチャー的な環境と言えるでしょう。

こうした背景を踏まえ、大企業の基盤を有しながらも、ベンチャー的な挑戦/キャリアによって、若くして新しい価値を生み出すチャンスにあふれた、貴重なキャリアだと感じています。

また、学生の皆さんがイメージしやすい、いわゆる「大企業としての魅力」ももちろん兼ね備えています。ベンチャー企業から転職してきた私の目から見れば、教育制度が整備されていて、社員のビジネススキルの平均水準が高い会社だと思います。

基礎的なスキルをしっかりと身につけた上で、データを中心とした自らの専門領域を深掘りできる環境も、この会社の魅力だと感じますね。

―ありがとうございます。データ領域の立ち上げ期という挑戦、若くして活躍できるチャンスのあるデータ領域。たしかに、大企業ながらベンチャー気質を持った環境ですね。データ系のベンチャー企業に行く学生などにとっても、魅力的な環境に映るのではないでしょうか。

―決済×ITの魅力や、三井住友カードという会社でのキャリアの魅力を存分にお話しいただけたと思います。本日はありがとうございました。

最後に、これから就職活動を迎える学生の皆さんに、メッセージをいただけますか。

日向:今までのお話のまとめにはなってしまいますが、決済データが生み出す価値の大きさ、データの専門性を持ちながらビジネスへの理解を深められる環境、大手企業の中で領域立ち上げに携われるタイミングなど、三井住友カードは非常に魅力的なキャリアを歩める環境だと思います。

冒頭にもお話しが上がったように、三井住友カードというと「金融」というイメージが強く、理系学生やベンチャー志向の学生さんは縁遠いものと思われるかもしれません。

しかし、そうした学生の皆さんにこそ、ぜひ魅力を知っていただきたいです。私の話を聞いて、少しでも魅力を感じたという方は、説明会などで弊社により深く触れていただき、選択肢の一つに入れていただければと思っています。

―日向さん、本日はありがとうございました!データ系の業務に興味がある、あるいはデータ系の興味を持っているという方は、ぜひエントリーをしてみてくださいね。