物流業界は三つのフィールドがある
物流業界の仕事なしに私たちは生活することはできません。楽天市場やアマゾンで商品を注文し、受け取ることが一番身近に物流の仕事を感じる機会かもしれません。
それ以外にも、コンビニに毎日商品を納品したり、化石燃料を海外から輸入することも、大枠で見て物流業界の働きがあるからこそ成り立っているのです。
物流業界は、大きく分けて三つのフィールドに分かれています。空運、海運、陸運です。
それぞれ、ANA(全日本空輸)、日本郵船、ヤマト運輸など、超有名企業が並び、就活生からの人気もとても高いです。
三つのフィールドについてもう少し詳しく見ていきましょう。
・空運業界 空運とは、飛行機を利用することによって貨物を運ぶこと、またその事業のことです。
日本ではJAL(日本航空)とANAが覇権を争っています。物流に関して特化した会社をあげるならば、JALの子会社であるJALCARGOは貨物を配送するサービスを展開しています。
以前は運送専用の機体もありましたが、現在は一般旅客機に貨物を積むことで物流事業を推進しています。
・海運業界 海運業は、空運、陸運に比べて、輸送に時間がかかる一方で、大量の貨物を運ぶことが出来るため、コストが比較的安いことが特徴の物流事業です。
その特徴によって、化石燃料や自動車などを運搬する際に扱われることが多いです。
就活生にとって、物流業界の中でも、海運業を営む企業は高給かつ、グローバルに働くことが出来るという点で、とても人気がある業界です。
そのように、とても人気である海運業界ですが、ビジネスモデル上の懸念点として、世界情勢によって業績が左右されやすいことに注意しましょう。
・陸運業界 陸運は、貨物列車も含め、様々な種類の商品を取り扱うことに特徴があります。ヤマト運輸や佐川急便など、私たち消費者に身近な運送会社もある一方、日本通運など、BtoBを主とする企業も存在します。
また、JRの路線を普段使う人で、通常の路線に貨物列車が通るところを見たことがある人はいるでしょうか?これは、JR貨物という貨物列車を運行する企業であり、全国に輸送網を有している物流企業です。
近年では、貨物列車だけでの運搬ではなく、新幹線を用いた物流網を構築する動きも出ています。
物流業界の市場規模、平均年収を確認しよう
それでは、物流業界でキャリアを築く際に重要なことを調べましょう。まずは、物流業界の市場規模です。
矢野経済研究所によると、2019年度物流17業種総市場規模は、前年比4.1%増の23兆5410億円でした(注1)。2020年度も金額ベースでの市場規模は拡大すると予測しています。
また、平均年収はどうなのでしょうか?
海運、空運、陸運業それぞれの平均年収は以下の通りです。
海運:775万円 空運:695万円 陸運:538万円 (鉄道:678万円)
物流業界のうち、海運が平均年収としては最も高く、陸運が三つのフィールドの内最も低いことがわかります(注2)。
特に海運業界の中でも、大手企業はとても高給です。商船三井、日本郵船の平均年収はどちらも約1000万円ほどであると言われており、物流業界を志望する就活生の中でもトップクラスの人気を誇ります。 また、海運業界トップ二社はそれぞれ平均勤続年数が14年程度であり、高給でありながらも、長い間安心して働くことができる会社であることが窺えます。
必見!物流業界の有力企業
物流業界の大まかな平均年収を確認したところで、業界別の有力企業を確認していきましょう。
・海運業界(商船三井、日本郵船) まずは海運業界です。前章でも触れた商船三井、日本郵船について、詳しい企業概要を確認しましょう。
まずは商船三井の企業概要です。
商船三井 平均年収:986万円 勤続年数:14.0年 売上高:1兆2340億円 (全て2019年度)
商船三井はエネルギー輸送事業に大きな強みを持っていますが、近年は海洋事業にも力を入れています。
次に、日本郵船の企業概要です。
日本郵船 平均年収:958万円 勤続年数:14.3年 売上高:1兆8293億円 (全て2019年度)
日本郵船は、商船三井に比べて、定期船などの安定的な収入が目立っています。また、多くの事業を並行しているため、一部の事業が不調でも、他の事業部が不調をカバーすることができます。
・空運業界 次に、空運業界の有力企業である、ANAとJALを確認していきましょう。
ANA 平均年収:776万円 平均勤続年数:-- 売上高:2兆4478億円 (全て2019年度) ANAは言わずと知れた航空業界第一位の企業です。正確な平均勤続年数は、近年会社の形態を変えたために把握できませんが、年収、売上高共に業界トップクラスです。
JAL 平均年収:827万円 平均勤続年数:15.0年 売上高:1兆3576億円 (全て2019年度)
JALは、2010年に一度経営破綻していますが、京セラを牽引した稲盛和夫が代表取締役会長に就任し、経営再建を果たしました。
▼▼▼航空業界の二大巨頭を攻略しよう。 日本航空(JAL)_ ES(2020卒_本選考) 全日本空輸(ANA)_ ES(2020卒_本選考) 日本航空(JAL)_選考体験記(2020卒_冬インターン)
ANA、JALに関する詳しい内容は、以下の記事を参考にしてみてください!
・陸運業界 物流業界三つ目のフィールド、陸運業界においては、JR東日本と佐川急便を確認しましょう。
JR東日本 平均年収:715万円 平均勤続年数:16.5年 売上高:2兆1133億円 (全て2019年度)
JR東日本は、言わずと知れた日本最大の鉄道会社です。鉄道の物流網は、実質的な寡占状態であるため、車内の雰囲気も落ち着いたものであると言われています。
佐川急便 平均年収:684万円 平均勤続年数:9.7年 売上高:2兆3909億円 (全て2019年度)
佐川急便は日本通運などに並ぶ、日本でトップクラスの運送業者です。2020年の1月には次世代型大規模物流センター「Xフロンティア」を竣工し、輸送能力の強化にも取り組んでいます。
▼▼▼陸運でも安定している鉄道業界の選考は? JR東日本(東日本旅客鉄道)_ES(2020卒_本選考) 東海旅客鉄道(JR東海)_選考体験記(2020卒_本選考)
物流業界は大変革が起きている
それでは、物流業界の現状はどうなっているのでしょうか。
前項でも触れた通り、物流業界は業界全体としては好調な市場規模を保っています。しかし、業種によってある程度の差がありますが、人手不足が叫ばれていることが現状です。
特に、近年はインターネットショッピングが爆発的に普及したことで、ドライバー不足が最も懸念されています。それらの現状を打破するために、物流業界では様々なテクノロジーの導入が検討されています。
物流業界とは少し軸がずれてしまいますが、特に首都圏ではUberドライバーの爆増が一つのヒントと言えるでしょう。会社に属していない個人に、空き時間をドライバーとしての役割を担ってもらうことが、人手不足の解決策の一つです。
Uberの物流バージョンとも言えるサービスも登場しています。宅配サービスのラクスルは、「ハコベル」という新たなサービスをはじめました(※Uberはアメリカにおいて「Uber Freight」という運送会社と運送貨物をマッチングするサービスを導入しています)。
ハコベルには大きく分けて二種類のサービスがあります。企業・個人が送りたい荷物を空き時間に仕事を受注したい軽貨物ドライバーが宅配することをマッチングするサービス。
もう一つは、自社・協力会社の配車管理と、繁閑期の求貨求車が簡単にできる一般貨物/物流事業者向けの物流プラットフォームを展開しています。
特に前者に関しては、物流業界が最も苦心している「ラストワンマイル」を解決する具体的なサービスとなっているため、これからの動きに注目です。
物流業界の最新キーワード
それでは、物流業界で今後重要になっていくことはなんでしょうか?キーワードと共に考察していきましょう。
・ラストワンマイル 前章で最後に触れた「ラストワンマイル」を詳しく説明していきます。
ラストワンマイルとは、物流において、最終拠点から、エンドユーザーへの物流サービスのことを指します。近年はネットショッピング市場が拡大しているだけでなく、ECサイトはそれぞれ即日発送、翌日配達などのサービスを充実させています。
宅配貨物の数が増加し、大手宅配業者の負担が大きくなっているにも関わらず、肝心のドライバーの労働環境は中々良いとは言えず、担い手が減少してきています。
大手ECサイトであるアマゾンや楽天は、物流拠点を充実させるだけではなく、従来は宅配業者に委託していた物流部分を、自社で提供する試みを始めています。
・ドローン 近年の新たなテクノロジーとして、ドローンの登場は外せません。ドローンの使用は現在、カメラとしての役割が主ですが、ドローンを物流に活用しようとする動きは活発になってきています。
ドローンの物流への活用に最も力を入れているのは、従来の物流業界の企業ではなく、アマゾン、楽天を始めとしたインターネットを主戦場とする企業です。
例えば、楽天が開発を続ける「楽天ドローン」は、ドローンの実証実験を続けています。ゼンリン、東京電力ベンチャーズと共同で行った実験では、山奥の無人地域での配送実験に成功しています。
また、楽天は山間部での実験だけでなく、都心部での配送についても研究を続けています。地上での無人配送を目指す、「地上配送ロボット(UGV:Unmanned Ground Vehicle)」は千葉県での実験をしており、近い将来に無人での配送が実現する日がくるかもしれません。
・モーダルシフト モーダルシフトとは、トラックなどの自動車で行われている物流サービスを、鉄道や船舶といった環境負荷の小さい物流経路に変えることです。
これまで、特に陸運業界におけるラストワンマイルの需要が増加していること、それに伴ってドライバー不足が顕著であることを確認してきました。
モーダルシフトは、環境への負荷を小さくすると共に、ドライバー不足を解消する具体的な解決策でもあります。
例えば、新幹線による物流サービスの実験も始まっています。JR東日本スタートアップは、水産物の卸・小売りを手がけるフーディソンは、新幹線を利用することによる鮮魚輸送の実証実験を開始しています。
従来のトラック輸送では10時間以上かかっていた配送時間を、6時間程に短縮することができる見通しです。
この実験は、ドライバー不足を解消することが目的ではなく、「いかに早く新鮮な海産物を運送するか」を目的としていますが、新幹線を中心とした鉄道網を利用することで、自動車物流の負担を小さくすることができるということは間違い無いでしょう。
物流業界を目指す上で大切なこと
物流業界を取り巻く状況について確認してきました。物流業界は、インターネットの普及と共に、今後も業界全体としては市場規模は大きくなっていくでしょう。
しかし、従来の陸運業界に属する企業群のうち、佐川急便はアマゾンで行われる宅配サービスから撤退していることをご存知ですか?
その理由は、宅配個数の激増にもかかわらず、安い値段でその業務を担っていたために採算が取れなくなってしまうことを恐れたからです。
このように、物流業界は変革している真っ最中であり、異業界からの参入や協業が相次いでいる業界でもあります。
なぜ物流業界に行きたいのかを言語化する際、「日本の物流サービスを改善したい」といった社会貢献的意味合いを目的を軸に就活をしているのならば、従来の物流業界の企業だけではなく、アマゾンや楽天といったIT企業も研究し、実際に選考を受けてみることをお勧めします。
物流業界と関連する業界の選考を通じて、物流業界の新たな側面を理解することができるかもしれません。
▼▼▼物流業界に参入するIT企業の選考内容を確認しよう アマゾンジャパン(amazon.co.jp)_ES(2020卒_本選考) アマゾンジャパン_選考体験記(2020卒_本選考)
楽天_ES(2020卒_本選考) 楽天_選考体験記(2020卒_本選考)
物流業界の内定を得るために必要なことは?
前章でお伝えしたように、物流業界は異業界との協業が日常的に行われるようになっており、物流業界が第一志望だとしても、異なる業界の知識も必要であることがわかりました。
その上で、物流業界の内定を得るために必要なことは何でしょうか?
それは、異なる業界の知識を得ること。その知識を得るために、早期から業界研究などの準備をし、本選考の経験を積んでいくことです。
特に、アマゾンや楽天などのIT企業の最新の動向は確認しておくべきでしょう。また、これらの選考は物流業界の選考時期よりも早いです。
物流業界に関連する業界の研究も入念に行い、実際に選考を経験することで、本番となる物流業界の選考の準備を万全なものにすることができます。
以下に物流業界に関連する業界の業界研究記事、エンカレッジが厳選した企業の早期選考案内を載せておくので、チェックしてみてくださいね!
▼▼▼JR東日本を始めとする、鉄道業界を研究しよう
▼▼▼「エネルギー業界は安定」は時代遅れ?
▼▼▼大手航空会社内定者が語る、航空業界からの内定をとる方法
▼▼▼就活生上位5%になるために。早期選考に挑戦しよう! 本選考はすでに始まっている?!ライバルに差をつけるのは「選考経験」
参考サイト) 注1) 矢野経済研究所「2019年度の物流17業種総市場規模4.1%増を予測」(https://lnews.jp/2019/07/l0711412.html) 注2)CLABEL「【2019年最新版】運輸業界の平均年収ランキング【令和版】」(https://clabel.me/business/37406)