時価総額1.5兆円を誇る医療ITのメガベンチャー
2000年の設立以来、快進撃を続ける「医療×ITの王者」エムスリー株式会社。設立わずか7年で東証1部へ上場し、時価総額は1.5兆円規模を誇る。
海外市場も堅調だ。唯一無二といわれる医療従事者向けWEBサイト「m3.com」により医薬品プロモーション支援事業等をメインとしてきたが、今後は会員情報をビッグデータ化したデジタルドリブンなマーケティング支援など「ネットとリアルを融合したビジネスモデル」を推進しており、製薬メーカー向け治験支援サービス、医師向けキャリア支援サービスなどを次々とリリース、収益化に成功している。
海外には、日本で成功した事業モデルを巧みに展開し、米国、英国、中国等10ヵ国以上に連結子会社を設立。治験サポート事業や医師キャリア支援事業も期待を集めている。
エムスリーに入社すると1年目でジョブローテションを経験し、2年目からはキャリアパスを希望できる。
ほかポジションに挑戦する「社内公募制」や社内ベンチャー企業「カンパニー」という独立組織があり、若手が活躍できる環境だ。30代前半の社員がプレジデントを務めているカンパニーも存在している。
革命前夜の医療業界には数多くの事業オポチュニティーがあること、年次に関わらずコアなポジションに抜擢されて活躍できる環境があることが、同社の大きな魅力だ。
ユニークなサービスを創造し「国家レベルの社会課題解決」を事業化する
---マッキンゼー、JPモルガンを経て、エムスリーを選んだ最大の理由は?
マッキンゼー時代、MBA取得のために米国UCバークレーのビジネススクールに留学していた頃、中国人やインド人たちと切磋琢磨する中で「これからは必ず彼らの時代が来る」、「もっと世界に目を向けなければ、日本の未来は本当に危うい」と強い危機感を覚えました。
「国境や人種の壁を越えて日本と海外をつなぎ、テクノロジーの恩恵を最大化して新しい価値を生み出してみたい」。エムスリーを選んだ理由はそこにあります。
「医療×IT」というビジネスモデルでここまでの成功を収めている企業は、世界でもほとんど前例がありません。いままで誰も踏み込めなかった〝聖域〞を開拓し、事業化する。それをもって世界に打って出るのです。これほどエキサイティングな経験はないと感じています。
---日本の医療業界はさらなる成長が見込まれる一方、人材不足や医療保険制度などの課題も山積していますね。
確かに、いわゆる超高齢化に伴い、少なくとも2040年頃まで医療費は増え続けることが想定されています。医療費削減が叫ばれる一方で、法規制や利害関係の複雑さから、医療業界は改革が進んでいません。
医師は人材不足で激務にさらされ、製薬メーカーはコスト高で創薬が難しくなっている。さらに患者は自分に合った医療情報を得にくいなど......。知れば知るほど、問題だらけです。でも裏を返せば、それこそが我々のチャンス。
医療という参入障壁の高い領域で、エムスリーはユニークなサービスを多数開発し、次々に事業化し続けています。医療業界における課題解決集団として、エムスリーだからこそ仕掛けていけることがたくさんあります。
例えば創薬の改善例では、膨大な時間とコストがかかっていた「治験の被験者募集」を「m3.com」で効率化し、新薬承認の早期化を実現。製薬会社の収益を改善しただけでなく、新薬を待ち望んでいた患者さんの命を救うことにもつなげました。このオンライン医療事業は現在、海外でも広く導入されています。エムスリーが提供する新事業は、日本だけでなく、世界中の医師や病院、製薬メーカーが求めているのです。
外コンを超える成長環境
---エムスリーには圧倒的なキャリアをもつ人材が集まっていますね。
中途社員は、外資系戦略コンサルや外資系投資銀行、IT企業、大手メーカー、商社、金融出身者などが多数、在籍しています。
―新卒の就活市場においても、優秀層ほど外資系コンサルや投資銀行を選ぶ傾向が強くなっています。
私がもし、いまの時代の新卒だとしたら、新卒→外資系コンサルという自分がたどった経歴は選びません。業界の成長フェーズで新卒入社したからこそ、オーナーシップを鍛えられたと感じているので。
例えば、私がマッキンゼーに入った時、業界全体の内定者は30人ほど。入社してすぐに自分が新しい価値を生み出せるかどうかがプロジェクト全体の成否を左右する仕事を任され続け、やればやるほど力がつく実感がありました。
ところがいまは、コンサル業界の内定者は数百人単位。コンサルも投資銀行も業界が拡大し、業務の定型化や大企業化が進んでいます。大規模プロジェクトの前例のあるタスクを任されるだけで、数年間ボロボロになるまで働いても結果的に何のスキルも身につけられない可能性すらあります。
---では、新卒でエムスリーに入社して得られるものは?
何よりもまず、少数精鋭のエムスリーでは「20代でバッターボックスに立てる回数」が圧倒的に違います。プロジェクトリーダーは各業界出身の一流プレーヤーたちで、若手社員が抜擢されることも珍しくありません。トッププレーヤーたちと競い合いながら、一度に数業界、数職種分の知見を吸収できる環境があります。
また、前歴では数十の案件をこなしてきましたが、自分の提案が実際にお客様や世の中にプラスになったかまではほとんど見届けられませんでした。いまは、自分で自分の事業や会社を責任もって大きくしていくことで、国境を越えて自らの手足とアイデアで生み出せる価値を日々感じています。
目指すゴールに最速で近づける場所
〝若者が高齢者を支える構図、本当にこのままでいいんだろうか?〞
その疑問が、この仕事を選ぶきっかけになったと記憶しています。小学生の頃、若者が支えるべき高齢者の数が年々増えていく社会保障の未来図に強い疑問を覚えました。
この構図を変えるといってもさまざまなアプローチがありますが、自分は社会保障費の約4割を占める「医療」に着目。
保険制度改革・医療技術開発・予防医療の普及など、選択できるオプションが多く、自分の介在価値を発揮しやすいフィールドだと感じたからです。結果、「医療を変えることで、高齢者も若者も幸せな社会を実現したい」という軸が芽生えました。
大学時代には厚労省や医療系スタートアップでインターンを経験。最終的にエムスリーを選んだ決め手は、少数精鋭で「自分の介在価値」が発揮できること。圧倒的な経営資源とスピード感が両立する環境で、〝ここで1やれば、10得られる〞という確信があったからです。
失敗して学んだ自分から動くことの大切さ
上司や先輩たちは惜しみなく協力してくれる社風ですが、入社して最も鍛えられたのは「自分で何とかする力」。
入社直後、4月1日から、製薬会社の現場担当者を動かす業務を1人で担当。半年後には、深い分析ができるようになりたいと希望してデータサイエンティストも兼務したのですが、配属初日から「コードを読んでおいて」と。プログラミング未経験でも容赦はないですね。
失敗も経験しています。入社2年目、28万人の医師が利用する「m3.com」に新しい機能をもたせるという課題で十分な成果を残せませんでした。その時、上司に指摘されたのは「机上で考えるだけではダメだ」ということ。足を使って人と会い、現場のニーズをくっきりと掴むことの大切さを学びました。
日本全体にインパクトを与えるレベルの「介在価値」
現在はLINEとエムスリーの共同出資会社「LINEヘルスケア」の創業メンバーにアサインされ、ジョイントベンチャーの立ち上げに携わっています。
LINEの国内ユーザー数約8000万人、エムスリーの医師会員約28万人、薬剤師会員約16万人。国内最大級のスケールで、遠隔診療の普及も見据え、さまざまな事業を展開していく予定です。
これはまさに、自分のアウトプットが日本全体にインパクトを与えるレベルの「介在価値」。日本の医療が変わる瞬間をこの手で実現したいと思っています。
最速で最大の成果を出せる一流のプレーヤーたち
就職活動では外資系戦略コンサルやリクルートからも内定をもらいましたが、最終的にエムスリーに決めました。
継続的な高成長を少数精鋭で実現していて、自分が大きな影響力とチャンスをもてると感じたからです。
内定後は、大学4年時に京都から東京へ移り住んでインターンとして入社し、コンシューマ事業部のWEBディレクターを担当しました。
周りには、自分が何時間もかかることをほんの10分で実行する、一次情報が入ったときに自分では考えもつかない仮説を一瞬で導きだす先輩社員の姿。さまざまな業界の最前線で結果を残してきたプレーヤーたちの仕事を肌で感じ、自分との差に愕然とする日々でした。
毎日の進捗報告をする夕会でも、周りに比べて自分は言えることが少なく、あの時の挫折感とどうしようもない悔しさはこれからも忘れることはないと思います。
成果は出せて当たり前常に満足せずに努力し続ける
コンシューマ事業部での悔しさから、新卒入社後は「危機感」が常にあります。
1年目の製薬プラットフォーム事業部では、WEBディレクターとして数ヵ月に及ぶ大規模プロジェクトのディレクションを担当。
成果だけを考え、細かい部分までケアしながら漏れなく進めることができ、結果的に約1.5億円の利益貢献ができました。ですが、周りの先輩たちは成果が出せるのが当たり前。
自分の周りの壁はまだまだ高く「危機感」が消えることはありません。結果が出たことは嬉しかったですが満足はすることなく、翌日からも変わらずに、がむしゃらに努力し続けてきました。
インプットとアウトプットを繰り返し、高い壁を越えていく
1年目の途中からは製薬企業向けマーケティング支援の担当で、先輩から叩きこまれているのは圧倒的に高い水準のビジネスの基礎。洗練された構造的な考え方ができれば最速で最大の成果が出せるということを目の当たりにしています。
大量の業務が同時発生する中、どう実行し、結果を出していくのか。日々の仕事で先輩たちのスキルをインストールし、とにかく実践しています。
仕事相手は製薬のプロ。対等に渡り合うためには、がむしゃらに目の前のことに対峙し進むしかない。できないなら、できるまでやるしかない。そう思って仕事をしています。
自分が成長できれば、結果的に、担当薬剤の適応疾患に悩む患者さん450万人のQOL改善、そして医療課題の解決につながっていくと信じています。周りの高い壁から学び、いつかは越えてやる。今の自分は「向上心の塊」です。