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「入社先は、仕事でも職種でもなく『タイミング』で選ぶべき」 ベンチャー社長が語るキャリアのススメ

新卒で入社してから3年後「就職活動をやり直したい」と考える社会人は約50%。この数字を1%でも減らすため、「未来をつくる君たちへ伝えたいこと」と題し、各界のエグゼクティブ達が大いに語ったイベント「Career Theater」。当記事では、株式会社Fringe81 代表取締役CEO 田中弦氏のご登壇部分をご紹介します。田中氏が語るのは「楽しい人生の送り方」。「キャリアにおいてタイミングが重要」とはどういった意味なのでしょうか?

Fringe81社長の田中氏が語る、キャリアの選び方

こんにちは、Fringe81代表の田中と申します。

本日は、就職活動を行う皆さんにキャリアの話をするということで、「面白くて楽しい人生の送り方」というテーマでお話をしようと思っています。

突然ですが、私は自分の人生が楽しいと思っています。

まずはじめに、私がどのような人で、これまでどのような人生を送ってきたかをお話しします。

私は、新卒でソフトバンクに入社して以来、約20年間ずっとベンチャー企業の経営をしています。ずっとインターネット関連の会社で、今まで3社上場させました。

現在はFringe81という会社を経営しています。社員は200人ほどでみんな優秀ですし、28億円ほど資金調達していて、ドイツにも進出しています。そんな会社の経営をしている私の戦闘力はまあまあ高いかなと思っています。冗談です。

(会場笑い)

さて、今となってはベンチャー企業の経営者として働いていますが、実はこの会社、実は元々私が立ち上げた会社ではなく、頼まれて社長をやっています。そうするうちにこの会社を好きになって、買い取った会社なんです。

こういった経歴だけ見ると、皆さんに「すごいですね」とよく言ってもらいます。それと加えて必ず「田中さんは学歴がいいんですか」「専攻していた学科がいいんじゃないですか」「起業家家系なんですよね」、あるいは「コンサルファーム出身ですか、大企業で働いていたんですか」とも聞かれます。

皆さん、私がこうなった条件を聞かれるんですよ。

ただ、私は条件がそんなに良くありません。出身大学は千葉大学。地方国立大学ですね。専攻学科は文学部文学科。平家物語ゼミというゼミで、就活市場では評価されにくいところですよね。

しかも私が就活生の時代は、就職氷河期と呼ばれる時代だったので、選考には落ち続けました。そして、親は公務員で、起業家家系でもありません。

出身企業は、当時(2000年頃)誰も知らなかったソフトバンクです。当時私の同級生にソフトバンクに行くんだと言うと、「どこの銀行に行くんだ」って言われるくらいの会社でした。

実は、人生を楽しむには「何か学問や技術を修めないといけない」とか「こう言う会社に入ったら良い」ということはありません。

会計のスキルを持っていなくてはいけないとか、大手企業に入らないといけないとかも、そこまで重要ではないと思っています。

「タイミング」はキャリアにとっても、会社にとっても重要

では、何が人生を楽しくする秘訣なんでしょう。

私の話が全てではないので、参考程度に聞いて欲しいのですが、私はその秘訣は「タイミング」だと思っています。

なぜそう言えるのか。ある人の研究を元にお話しします。

ビル・グロスという、アメリカでは非常に有名な伝説の起業家をご存知ですか?

彼が、自分が作ったサービスを含め、約200社の新規事業の成功の鍵は何かということを調べたそうです。その調べによると、成功には5つのファクターが必要であるそうです。

まず1つ目は私が言った「タイミング」。 タイミングが良いか悪いかって新規事業の鍵を握りそうじゃないですか。

もう1つは「チーム」。これもまあありそうですよね。優秀なチームであればあるほど、新規事業は成功しそうですよね。

そして、「アイデア」。まあこれは当然だと思います。

次に「ビジネスモデル」。ビジネスモデルとは、どうやって儲けるかの仕組みです。例えば利益率がすごく高くて、回転率がすごく高いという風になってると、より他の人たちと比べても生き残りやすい。優れているといえますよね。

そして最後に、資金調達。お金がなかったらダメですと。

この5つは、新規事業が成功するためには全て必要な要素です。では皆さん、この中で最も重要なキーとなるのはなんだと思いますか?

彼の調査では、結局「タイミング」が最も重要な成功の鍵であるということがわかったそうです。

そして次にチーム、アイデア、ビジネスモデル、資金調達と続きます。

私は最初、アイデアがもっとも重要なのかなと思っていました。

ところが彼によると、アイデア自体は、世界中で同時に考えている人はいっぱいいるんだと。

ただ、それを一番良いタイミングで、良いチーム、良いビジネスモデル、資金調達といった順番で事業を作った会社が成功していたと。

確かに言われてみると納得すると思います。わかりやすい例を挙げると、メルカリというサービスは皆さんご存知ですよね。

もしメルカリが10年前にリリースされても、流行らなかったでしょう。

その頃は、多くの人はパソコンでYahooオークションを使っていました。

しかし、スマートフォンが登場して、良いカメラで写真が撮れて、直感的に買い物ができる。ガラケー時代にメルカリが登場してても、あっという間に潰されそうですけど、スマートフォンがあるからこそ流行った。

スマートフォンの普及という「タイミング」で事業を作り、それをいいチーム、ビジネスモデル、といった具合で進めていった事例でしょう。

私たちもピアボーナスというHR系のサービスを運営しています。しかしこれも「働き方改革」というマクロな流れがあったからこそのサービスだと思っています。

このように、社会にはマクロ的な大きな風が必ず吹いています。その風が吹いたタイミングに適切なアイデア、チーム、ビジネスモデル、資金調達を揃えたものが勝つという構造です。

これは、人生・キャリアと一緒だと思っています。私は、インターネットがこれから普及するに違いないというタイミングで、当時全く名が知られていなかったソフトバンクに入り、2社目の上場した会社では携帯電話の普及期に、携帯電話を利用したメディア向けの広告を作りました。また、先ほども申し上げました通り、働き方改革の流れがある時にはHRのサービスをやっていると。

私はどの分野・業界で事業をやりたいかというよりも、風が吹いているタイミングで、タイミングよく事業をやるという方法をとってきたからこそ成功したと考えているんです。

向き不向きを見つける自己分析には意味がない

タイミングの話をもう少し深掘りして行こうと思います。

タイミングは偶発的なものと思われがちなのですが、私は測れると思っています。ニュースを見ると、「人口が〜〜年には〜〜人になっている」という様な情報が流れていますよね。

この様に、これからある程度の未来は予想できると思います。重要なのは、予想した未来で自分がどの様に行動していくかを考えていくことです。

それが人生を楽しむためのキャリア選択には必要になると思います。

これからの時代、キャリアはどうなるのでしょうか?

トヨタの社長も、終身雇用が終わると話していましたよね。単純な「大企業=安定」も、無くなっていくでしょう。

これから、マクロ的にどの様に風が吹いてくるのか、そして、そのタイミングでどのように行動するべきかがみなさんに問われています。

こういう話をすると、「日本はもう終わりじゃないですか」と、おっしゃる方もいます。でも私は、起業家からの視点でみると、実は日本という国は、課題の先進国だと思っています。

例えば、少子高齢化や田舎の過疎化。なんだか話を聞いていると、暗い気分になりますね。しかしこれから、少子高齢化は世界中で起こるわけです。

もし日本でそれらの課題を解決する方法を生み出し、ビジネスとして成功できれば、世界最先端の経験を持った日本人が世界に出ることができますよね。

同じ少子高齢化という事象でも、良いタイミングだと捉えるか、ネガティブに捉えて終わるかで違いが生まれます。

前者のようにポジティブになることが、自分の人生を楽しくし、より良いキャリアを気づいていくために必要だと思っています。

ここまで、人生、あるいは事業のためにはタイミングを見極めることが重要だとお伝えしてきました。

しかし、現状は「マーケティングがやりたい」とか「企画をやりたい」という様に、業務内容から考える方が多いと思います。

それだと「タイミング」の観点が抜けがちになる。

繰り返しになりますが、「タイミングをベースに考える」ということは覚えておいて欲しいなと思っています。

なぜかといえば、仕事というものは、みなさんが思っている以上に後天的な才能で成果の大小が左右されることが多いからです。

例えば、「社長に向いてる才能」とはどんなものか、皆さんわかりますか? わからないという方が多いと思います。

私は社長をしてみて、これまでたくさんの失敗をしてきました。でも、多分向いてたんですよ。しかし、自分が社長に向いてるかどうかは就活生の時にはわかっていませんでした。

やってみて、初めてわかる。そういうこともたくさんあるんです。

なので、「企画職がやりたいです」という様に、現段階で仕事や職能で絞ってしまうと勿体無い。

もしかしたら営業の才能があるかも知れませんし、社長の才能があるかも知れない。

皆さんは可能性に溢れていますし、絶対に後天的な才能が花開くはずですから、むやみに絞ってしまわない様にして欲しい。そう考えているんです。

では、今日の内容をもう一度まとめてみましょう。

まず1つ目は、タイミングの話。私は、インターネットが大好きという思いで企業を選んでいました。インターネットの仕事ができればなんでもいいと思いながら就活していると、タイミングをしっかり捕らえられたかなと思っております。

そして、仕事は後天的な才能で大きく左右されるという話。 やって見るとわかることがいっぱいあります。皆さんの選択肢は、本当に無限大といえます。今の時点で自分の選択肢を限定してしまうと、もしかしたらあなたの才能を最大限に活かせないかも知れません。

自己分析をひたすらするというよりは、いろんな会社を見て、「自分の価値観に合うか」「このタイミングでどの会社に入るべきなのか」などを考えて欲しいと思っています。

私は、大学で平家物語の研究をずっとやってきました。でもいつの間にかこうなっていました。これは、常に「今はどんなタイミングなんだろう」というのを考えてそれに乗ってきたからです。これが私の楽しい人生を送る秘訣です。

本日はありがとうございました。