CareerTheaterに、Fringe81田中弦氏が登壇
新卒として企業に入社してから3年後「就職活動をやり直したい」と考えている社会人は約50%。
この数字1%でも減らすため、「未来をつくる君たちへ伝えたいこと」と題し、各界のエグゼクティブ達が登壇し、キャリアについて大いに語ったイベント「en-courage Career Theater」。
就プロではその内容をより多くの就活生に伝えるべく、その一部を書き起こし・編集、そして記事化を行いました。
当記事では、Fringe81株式会社 代表取締役社長 田中氏のご登壇部分をご紹介します。
田中氏が語るのは「真にイノベーティブな事業の作り方」。未知の領域に挑戦し、イノベーティブな事業を作り出すキャリアの魅力をお話いただきました。
Fringe81社長が語る「イノベーションの条件」
田中:皆さんこんにちは。Fringe81の田中と申します。
本日は「パクりではなく前例のない、真にイノベーティブな事業の作り方」というテーマで講演をさせていただこうと思います。
まずは簡単に自己紹介をさせていただければと思います。私は大学時代、文学部の日本文学科で、平家物語を専攻していました。皆さん今から就職活動に取り組まれると思いますが、私の専攻は、言ってしまえば就職活動前線の最弱クラスです。
ただ、その時インターネットというとんでもない変化が起きているのに出会いまして。そこで「インターネットに携われる会社じゃないと生きている意味がない」と思って、ソフトバンクに新卒のインターネット部門採用第一期生で入りました。
そうすると、一緒に働くメンバーは孫さんのような方々。そんな環境にいると、人生も面白い方向へとどんどん変化していきます。
その結果、大学では平家物語を学んでいた私が、ベンチャーを3社立ち上げるという結果になっています。
そのうち、2社は上場、私が初めてオーナー社長として上場した会社のFringe81は、先日上場を果たしました。
ということで、私は今、Fringe81という上場企業のオーナー社長となっています。
社員は現在160名程度。"Reshape the World"というビジョンを掲げています。新しい未来を形作る、そんなサービスをたくさん生み出していきたいなという風に思っています。
さて、そろそろ本題に入りたいと思うのですが、本日は我々の会社、つまりFringe81という会社のことよりは、この「パクりではなく前例のない真にイノベーティブな事業の作り方・仕方」というお話をぜひ皆さんにお伝えしたいと思っています。
このテーマを耳にすると「パクったサービスは駄目だ」って話をするんだろうなと、皆さん考えるかもしれません。
ただ前提として覚えておいていただきたいのは、「パクり」というのは事業戦略上で考えれば、別に悪いことではないということ。
例えば日本でも、海外で興っている先進的なサービスを日本に連れてくる、ということに対して、相当の苦労をして、投資をして、という会社もあります。そうして日本に最新鋭のサービスを提供する。それはリスペクトの対象になるのは間違いありません。
そして「パクる」というのには大きなメリットもあります。まず、スピードが非常に早いです。アイデアも考えなくていいです。「パクる」というと言い方が悪いだけで、事業戦略上は素晴らしい戦略なんです。
例えば「マッチングサービス」というものがあります、皆さんも、そのアプリやサービスを通じて彼氏・彼女を見つけて、という経験をされた方もいるかもしれません。
マッチングサービスの市場はとてつもなく大きくて、すでにその領域で儲かってる事例が無数にある。極端に言えば、必要な機能がすでにわかっていて、お金と人さえあれば成功できる市場と言い換えられるかもしれません。
そういった市場に対してさっとパクって、お金と人材を投資して、先行者優位でシェアを獲得して行くというのは、非常に優れた事業戦略なんですね。
しかし「これは真にイノベーティブなのか」というと、それはそれで違う感じもしますよね。そんな風に思っています。
では、イノベーティブなサービスとは何か。それを今日はお話をしようと思います。ただ、これはあくまでも「私が考える」3つの条件であって、絶対に正しい、とは思わないで欲しいなとも思います。
真にイノベーティブなサービスに求められる3つのポイントとは?
イノベーティブなサービスは「馬鹿にされる」 田中:まず1つ目として、真にイノベーティブなサービスは、多くの場合「こういうものを作りたい」と話した際に「まさかそんな」や「今あるやつでいいじゃん」という風に、馬鹿にされるものである、と考えています。
例えば、Airbnbというサービスはその典型です。何故わざわざ、人の持ち物、アパートに行かなきゃいけないんですかと。汚いかもしれない、どんな人の家なのかもわからない。じゃあ、ホテルに泊まった方がいいじゃんと。
逆に貸す側だって、部屋を汚されちゃったり、壊されちゃったりしたらどうするの、って。そんな風にいくつも批判をすることはできるサービスです。
ただ、そんなAirbnbは今や、世界の人たちの旅行の在り方っていうのを変えていますよね。
今はもう皆さんが自然に使っているYouTubeだってそうでした。
YouTubeが始まったのは、ブロードバンドでもない時代。そもそも、インターネットで動画を見るなんて、通信料がかかりすぎる、なんて言われていたけれど、今YouTubeを見てない人なんていないですよね。
これがまず一つ目の真にイノベーティブな事業の条件の一つです。
イノベーティブなサービスは「時流を捉えている」 田中:そして2つ目が「タイミング」です。大容量通信ができるようになった。スマートフォンというデバイスが普及した。新たな決済手段や電子通貨が普及しつつある。そんな時流を捉えた事業を生み出すことがポイントです。
例えば「メルカリ」というサービスがありますよね。上場も果たしましたね。
メルカリの山田進太郎さんは昔のバイト仲間で、メルカリが生まれる前ぐらいに、ちらっと話をしていたんです。山田さんが「スマホでオークションやろうと思うんだよね」と言っていたんですね。
その時は私も正直「何言ってんだ」なんて思っていました。今だってヤフオクとかあるじゃないかと。
ところが、既存のサービスはPCに特化しているもので、スマホには全然特化していないんだとお話をされていたわけです。
スマホが普及してきたタイミングで、メルカリを生み出すことに意味があるんですね。
まさにタイミングを捉えてイノベーティブな事業を生み出し、それを皆さんが頑張って成長をさせてきたからこそ、今のメルカリというサービスが生まれているんですね。
Uberというサービスもそうですね。街ゆく車が、タクシーのように自由に人を乗せて運ぶ。そんなサービスも、そもそもスマートフォン、あるいはGPSやマップなどのテクノロジーが進化していなければ、実現ができないサービスです。それがなければ、単なる絵に描いた餅になってします。
Uberというサービスもテクノロジーの進歩に合わせて、素晴らしいタイミングで素晴らしいサービスを生み出している例と言えるでしょう。
イノベーティブなサービスは「実行が早い」 田中:最後のポイントは「ガタガタ言う前にやる」ということです。実現できなければ、アイデア自体には何の価値もありません。
今の時代は、「これはいけるだろう」と思ったものが失敗したりする、すごく不確実性にあふれた世の中です。Fringe81でも、実行力や実行の早さを非常に重視しており、ここは非常に大事なポイントだと思っています。
以上、お纏めをすると「馬鹿にされるようなものである」「タイミングを捉えている」「とにかくやってみる」この3つが、真にイノベーティブなサービスの条件になっています。
Fringe81が生み出したイノベーション「Unipos」
田中:でも、条件を揃えるのはもちろん簡単ではありません。
そもそも市場が小さかったら難しい。前例がないので、失敗もしやすい。余計な機能なんかも作ってしまいがちです。
ただ、一つ大事なのは、真にイノベーティブなサービスを作っていると、めちゃくちゃ楽しいぞ、ということ。
Airbnbを作り上げた人、メルカリを作り上げた人、きっとすごく楽しんでいると思います。先陣を切ることほど気持ちのいいものはない。未知のものに取り組むこと、それは探検みたいなものです。私も経験がありますが、物凄くワクワクします。
だから私は皆さんにも、イノベーティブで取り組んでいてワクワクするような領域・事業に挑戦してみては、とオススメをしたいと思います。
同時に一つご紹介をすると、我々もUniposという事業をやっています。
どんな事業かというと「給料というものを変えてみよう」という取り組みです。
皆さんアルバイトをしたり、これから会社に勤めた際、必ず給料をもらいますよね。給料というのは大体、半年に一度上司が定量的な成果などをもとに評価をして支給する仕組みです。
ところが会社では、数字で評価できない人たちがたくさんいます。人事や総務や経理といった職は、数字で売り上げを生み出すような事業じゃないので評価が難しいです。縁の下の力持ち感が強い。
うちにも総務の方がいます。その方はね、ホスピタリティがすごく高い。「これ困ってるな」ということを全て先回りしてやってくれます。でも、その人のホスピタリティは90点です、という風に計測することはできませんよね。
もちろん総務の方だけではなく、そういった例は無数にあります。
戦後60年ずっと続いてきた給料制度ですが、そんな点で矛盾がかなりあるんじゃないか、というのが僕らの問いです。
そこで我々は「上司」や「経営者」が給料を決めるのではなく、従業員同士で給料を贈り合い、それをリアルタイムに全公開で見せ合える仕組み「Unipos」を作りました。
そこでは、感謝のメッセージと少額のボーナスを、みんなが見ている前で贈り合うことができます。
田中:そこで、先ほどのお話を思い出してください。
私が初めてUniposというのをやりたいんだと言いだした時、「給料というのは、そもそも見せ合ったり、シェアしたりしないんだよ」「社員に給料の権限を渡すとか危なっかしい」なんて散々言われたんです。
でも今は、人口も減っていく中で、日本中の人が働いて生産性を上げなきゃいけないということが散々言われています。会社では何が起こっているかを知って、それについてきちんとフィードバックをして、フェアに、士気を挙げて行こうということを、誰もが言っています。
タイミングがめちゃくちゃいいんです。
だから、ガタガタ言う前に実行してみたんです。
初めはちゃんとしたシステムなんてありません。段ボール箱を切り取って箱を作って、そこに感謝のメッセージを入れる。
それをオープンに発表することで、組織が元気になることを実感して、きちんとしたシステムを作り、Uniposというサービスとしてご提供しています。
今も社内で活用しています。感謝の言葉と100円くらいのボーナスをリアルタイムに贈り合っています。もちろん、上司の許可なんて一切いりません。
少額のボーナスをそれぞれ社員同士で贈りあうと、様々なことが起こります。
例えば私は、社内の状況がどうなっているかというのを毎日把握しています。社内でどういう人がどんな活躍をしたのかもわかっています。
また、給料といえば、上司から給料にあげるもの、というイメージがあるかもしれません。でも、部下から上司に感謝や給料が届くことで、上司の側から「安心しました」という声も上がっています。
Uniposで感謝やお金がもらえると、すごく嬉しいんです。たった100円じゃん、と思うかもしれませんが、それでも凄く嬉しいんです。時短勤務で普段みんなと話せないけれど、こんなに感謝されているんだ、ってわかったり。
それだけではありません。うちの社員160名でのやりとりのデータを全て取って、その繋がりを図示して見ると、会社っていうのはこんなにも有機的につながるんだ、ということがわかります。
そしてそれを元に、会社の良いところ、悪いところがわかる。会社のあり方や組織をさらに改善することができるんですね。
Uniposというサービスを展開してからまだ1年程度ですけれど、全国でどんどん導入されています。みなさんの知っているような会社の方々も、導入をしてくれています。
さっきの3つの条件を思い出してください。この3つの条件を満たしているUniposは、最初は段ボール箱だったかもしれないけれど、今ではすごいことになっています。
「給与を権限付与するなんてありえない」なんて言われていたサービスです。でも、タイミングを捉え、とにかくやってみる。そうした結果、すごいサービスになってきています。
段ボール箱で「カッコ悪いけど投票してくれ」なんて言っていた瞬間はまさに、真にイノベーティブなサービスを作っていた瞬間だったんですね。
Fringe81は真のイノベーションのため、未知なる挑戦を続ける
田中:繰り返しになりますが、「パクって勝つ」というやり方も間違いではありません。
でも、Fringe81という会社は、そういったサービスではなく、オリジナルのサービスをやって未知なる領域にチャレンジをしていきたいという会社です。
未知なる領域にたくさん参入して、たくさん失敗しながらも、前例のない事業を作り出していくと、凄く楽しいと思っています。
なので、前例のない真にイノベーティブな事業を生み出したい方、是非Fringe81に来てください。
皆さんはこれから就職活動をして、就職をして様々なことに挑戦すると思います。そこでは、失敗してもいいから、どんどん挑戦をして欲しいなと思います。
世の中で、面白いことをしている人や成功している人は、どんどん挑戦して失敗しています。お金持ちじゃなくても学歴がなくても、挑戦して失敗して、それを続けることで、成功しています。
でも反対に、他の人と同じことをやっていたら、絶対にそうはなれません。イノベーションを起こしたい人、どんどん挑戦をしてください。
馬鹿にされるようなサービスでいいから、まずは挑戦してみてください。その先に、輝かしい未来が待っていると思います。
それでは、これでお話を終わりにさせていただきます。ありがとうございました。