「他人に認められる会社」か「自分を満たす会社」か【細谷功】

行くべき会社は性格次第？

「川上か川下か？」という就活や仕事選びの視点ですが、今回取り上げるのは何をもって幸せと感じるか？という価値観です。

世の中を変えたいか？動かしたいか？川上か川下か？を考える上での仕事の視点として、川上はいままでにない新しものを創っていくことであり、川下ではある程度できあがった仕組みを回していくという違いが挙げられます。

ここで各々の領域に求められるスキルや適正の違いを考えてみましょう。

川上で「世の中を変える」ためには、これまでの常識を打破するために現状に対する強烈な問題意識を持つことと、それを実現するための変革に対して信念を貫くことが必要になります。

要は世の少数派に回るために、周りの人から理解されず、時には非難までされる覚悟が必要なのです。

これに対して川下の「既にできあがっている世界を動かす」ことに必要なのは周囲の人たちとのチームワークでありコミュニケーションです。「求められる人物像」の中に「コミュニケーション能力」が一番に挙がっているようであれば、それはほぼ川下側の仕事と考えて間違いないでしょう。

大きな組織を効率的に動かしていくのに必要なのは「強烈な個性」ではなくて周囲との協調性です（いくら「個性的な人材求む」などと書いてあったとしても、川下の仕事においてはあくまでも「チームワークとコミュニケーションが十分にできる」という前提の基での話なので、川上でいう個性とは異なります。）

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ですから、川下の大企業では基本的に

・空気が読めて ・「ほうれんそう」（報告・連絡・相談）が得意で ・上司の言うことをよく聞き ・他者に合わせられる

こんな人が求められます。

対する川上は逆で

・時に空気を読まず（自分の意思を貫き）・（創造性のない）会議や報告には手抜きをし・上司よりも顧客や大義・正論を優先し・孤独に耐えられる

そんな「一見組織にはなじまない」人が求められることもあるのです。

本連載でも以前にお話したように、「長所は短所になり、短所は長所になる」ということです。

「有名大企業一直線」の就活では、もしかすると自分の長所を押し殺して就活に取り組むのかも知れません。

ただしこれまでも述べてきたように、世の中で必要な人材は間違いなく「川上側」にシフトしていきます。そんな時代にはこれまで短所だと思っていた、あるいは他人にそう言われてきたことが長所になる可能性もあります。

本連載の底流にあるテーマでもありますが、一律の価値観にとらわれずに改めて自分の価値観と適正を見直してみることをお勧めします。

皆さんは最終的に何と言って人生を終えたいでしょうか？それを考えるのが自分の大事にしている価値観のチェックになります。

「たくさん我慢したけどたくさんの人にほめられたいい人生だった」なのか、「他人にけなされたけど自分で好きなことはやりきった」なのか。

「有名大企業」に就職すればきっと両親や親戚は喜んでくれることは間違いありません（恐らく将来の結婚相手の両親も）。

「優等生」を続けて「有名大学」に入って得た「入った集団の名前で他人にほめられる」満足感をもう一度味わいたいという人にとっては、そのまま川下の有名大企業を目指すのが良いと思います。

ただしそういう生き方に何かの疑問を感じるとか、「他人が名前も知らない会社を名乗るのが快感だ」という天邪鬼の人生を選びたい人はそれ以外の（無名のスタートアップに行くなど）「川上側」の選択肢を考えてみても良いでしょう。

これは就職活動というタイミングで全てを決めなければならないものでもないですし、仕事を経験していく中で自分の考えが変わっていくかも知れません。

就活や仕事選びはむしろ「一生続く」と考えて、自分の価値観がいまどうなのかを常にチェックしながら「次の数年」を考えていってみてはいかがでしょうか？

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