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川上人材or川下人材 あなたはどっち?【細谷 功】

細谷 功氏、連載記事第4回。これまでの連載では、「川上」「川下」という考え方についてご紹介しました。それでは「川上型」「川下型」の人材とは、どんな人材でしょうか?そして、あなたは「川上型のキリギリス」「川下型のアリ」、どちらなのでしょうか?

あなたは川上型の「キリギリス」?川下型の「アリ」?

連載の第2、3回で仕事の流れにおける川上と川下の話をしました。ここでのポイントは、仕事は流れの上流と下流で性質が異なる為にそこに求められるスキルや価値観が異なるということでした。

従って、これらを一緒くたにして議論することはほとんど意味がありません。一方の世界で有効なものがもう一方の世界では全く役に立たないということが多々あるからです。

本連載ではその事例を繰り返し解説していきますが、その具体例として、始めに今回お話するのは、川上型と川下型の人材の大きな違いです。皆さんの志向性はどちらなのか、どういった環境で活躍できるのか、参考にしてみてください。

ここでは川上型の人材を「キリギリス」、川下型の人材を「アリ」と名付けます。その理由は、これらの人材の根本に以下の3つの大きな考え方の違いがあるからです。

**1.「使う」キリギリスと「貯める」アリ(フロー志向とストック志向の違い)

2.「巣がない」キリギリスと「巣がある」アリ(開いた系の発想のキリギリスと閉じた系の発想のアリ)

3.「3次元」のキリギリスと「2次元」のアリ(可変次元と固定次元の違い)**

一つずつ見て行く前に、皆さんがキリギリスタイプなのか、あるいはアリタイプなのかを見ていきましょう。以下のチェックリストで確認してみて下さい。

チェックリスト

必ずしも極端にどちらかになるとは限りませんが、概ね自分がどちらのタイプかはわかってもらえたかと思います。

では、どのようなメカニズムでこのように思考回路が分かれるのか、その根本的な3つの要因を解説しましょう。

「使う」か「貯める」か 「アリとキリギリス」と言えば、言わずと知れたイソップ童話です。そこで描かれた両者の違いがこれです。夏の間にしっかり「貯めた」アリと「使ってしまった」キリギリスの違いということです。これはさらに一般化して表現すると「ストック」と「フロー」の違いということになります。

アリは全て蓄積されたものを善とします。お金、名声やブランドといったものに加えて「知識や経験」というのもストックの例です。言い換えれば過去を重視するのです。

対してキリギリスは「使うこと」を善とします。これは知識や経験、あるいはネット上に蓄積された情報についても同様です。「使うことに意義あり」なので、知識に関してもただ暗記して覚えるというよりは、必要な時に調べてそこで自らの頭を使って考えて自分なりの発想をしたら、あとは捨ててしまいます。

つまりキリギリスは、知識よりも自ら考えること=思考力を重視するのです。 蓄積がない川上を得意とするか、蓄積が大きい川下を得意とするかがフロー志向とストック志向で分かれます。

「巣がない」か「巣がある」か これは物事に線を引いて考えるかどうかを意味しています。巣の「内と外」を明確に区別するというのが線を引くのわかりやすいイメージの一つです。このような思考回路は全ての場面で現れます。

「常識と非常識」「正解と不正解」のように、物事を2つに分けて、おまけにそのうちの一つを「正しいもの」他方を「間違ったもの」と判断するのがアリの特徴です。結果として規則やルールへの意識が強く、ルールを決められるとその中で力を発揮できるのがアリです。

これとは逆に物事を「ありのまま」に観察して、状況に応じて「線を引きなおす」ことができるのがキリギリスです。常識やルールにとらわれないのが特徴と言えます。

「3次元」か「2次元」か アリは(羽アリ等を除き)基本的に「前(後)左右」の動きのみですが、キリギリスはこれに「跳(飛)ぶ」という「上下」の動きが加わります。これは象徴的に行動や考え方の「自由度」を表現しています。問題や条件は「与えられるもの」で、その中でベストを尽くすのがアリの信条であるのに対し、キリギリスは常に「それ以外」の選択肢や変数を探しに行こうとします。

キリギリスにとっての問題は、自ら発見し定義するものであって、与えられるものではありません。したがって、外部環境についても常に「うまくいかなければ他を探す」という意識を持っているのです。

川上型がより重要になっていく今後の社会

これまでの教育や社会の仕組みは、主に「優秀なアリ」を育てるためのものでした。「与えられた問題で高得点を挙げる」こと、常識や複雑なルールを鐵的に叩き込まれ、その知識量の多寡が問われました。

これはまさに業務の効率化や組織力といった川下側の強みとなって日本の発展に貢献してきました。ところが社会の変化によって、必要な能力が川下側から川上側にシフトすることによってこの構図が崩れてきたのです。

今後本連載では、このような状況を考慮して、川上側のものの考え方や価値観について述べていきたいと思います。

前回記事:川上→川下への会社の変化

次回記事:「正解病」からの脱却

DoubRingで自分の価値観と多様性を知る

これまでの連載で仕事を見る上での視点としての「川上と川下」という視点を提供してきました。仕事には業界や職種といった見方の他に「そもそものその仕事の特性」を見極め、自分の価値観や強み弱みと併せて考慮するのが重要であるというのがそのポイントでした。

仕事の特性としての川上や川下、他の視点については今後も連載で解説していきますが、ここでは「もう一つの側面」である自らの価値観について考えてみるためのツールを提供します。

それがこのDoubRingです。簡単に表現すると、このDoubRingは2つの基本的な概念に関して自分が考えるそれらの関係性を「2つの円」で9パターンで表現するものです。

まずは百聞は一見に如かずで試してみて下さい(8つの質問に答えるだけで3分程度でできます)。

https://www.surveymonkey.com/r/W2DYR3P

これらからすぐに「あなたは◯◯に向いています」という診断結果が出てくるわけではありませんが、これらの一つひとつの結果、つまりある概念への見方が仕事選びの価値観とどのように関係するのかは連載の中で解説していきます。

まずはこんなシンプルな言葉同士の関係でも人によって大きく違っていることをこれまでの調査結果の例から確認し、自分が多数派なのか少数派なのかを確認してみてはいかがでしょうか。

https://www.surveymonkey.com/results/SM-2TMJ39FN/

※さらに詳細にDoubRingのことを知りたい方はホームページをご覧ください。(https://www.doubring-j.com